既報どおり、昨年1月6日の議事堂乱入事件を調査する米下院特別委員会(1/6 HSC、2021年6月設立)が、1年の調査を経ての経過報告及び重要参考人の公開聴聞をテレビ中継している。そして、4回目となる今回の公聴会において、州の選挙管理委員会に従事していた職員らが、トランプ前大統領による選挙結果の反覆圧力に抵抗したところ、様々な嫌がらせや脅迫に曝されたと証言している。
6月21日付
『AP通信』は、「1/6 HSCの公開聴聞:州の選挙関係者ら、トランプの要求を拒否して脅迫に遭遇と証言」と題して、1/6 HSCが実施している公開聴聞において、州の選挙管理委員会に従事していた職員らが、トランプによる選挙結果反覆要求を拒否したところ、様々な脅迫に遭遇したと証言していると報じている。
1/6 HSCが6月21日に実施した公開聴聞において、州の選挙管理委員会従事者や地方自治体の役人らが証人喚問を受け、ドナルド・トランプによる選挙結果反覆という不合理な要求を撥ねつけたところ、様々な嫌がらせや脅迫に曝されたと、苦しい気持ちを涙ながらに証言した。
同特別委は、開票に当たった人たちの証言を得て、前大統領による選挙に不正があったとの虚偽の主張によって、事態が更に混乱し、議事堂乱入事件発生に繋がっていると判断している。
同特別委のベニー・トンプソン委員長(74歳、ミシシッピー州選出民主党議員、1993年初当選)は、“選挙結果が拮抗しているいくつかの州において、ほんの一握りの選挙管理委員会職員らが、違法な要求をするトランプの圧力にめげずに米国の民主主義擁護のために尽力した”とし、彼らこそ真のヒーローであり、“民主主義の根幹を担う人たちだ”と称賛した。
まず証言台に立ったアリゾナ州のラスティ・バワーズ下院議長(69歳、2019年就任の共和党議員)は、(トランプの要求に抵抗したことから)トランプ支持者らによって自宅に何度も押し掛けられたり、時には銃を携帯した輩によって家族や近隣住民まで脅されたりしたと証言した。
また、ミシガン州、ペンシルベニア州やその他いくつかの州の選挙管理委員会職員らも、トランプの要求を拒否したところ、自身の携帯電話番号や自宅住所を公にされて、同様の脅しを受けたと証言している。
更に、最も興味を引かれたのは、ジョージア州の選挙管理委員会職員だった母娘の証言で、同州の開票に不正があったとトランプが根拠のない非難声明を出して以来、様々な場面で実名を大声で呼ばれて嫌がらせを受けたと述べたことである。
彼らは、“私たちの死を望むような罵声を何度も浴びせられた”と証言した。
今回の公聴会は6月に入って4度目で、1年にわたる同特別委の調査の結果、トランプが権力に止まろうと過去に例のない暴挙に出たことが明らかになりつつある。
トンプソン委員長は、“クーデター計画”だとなぞらえている。
また、同特別委は、州の選挙管理委員会職員らが脅迫を受けて職を奪われようとしたことからも、トランプの選挙に関わる虚偽発言が民主主義を貶めていると主張している。
更に、リズ・チェイニー副委員長(55歳、ワイオミング州選出共和党議員、2017年初当選)は、“ドナルド・トランプは、暴徒を諫めもしなければ止めようともしなかったことから、暴動発生などお構いなしだったことは明らかだ”と強調した上で、米国民に対して、今回提示した証拠の数々に注目して欲しいと訴えた。
一方、今回の公聴会でもう一人際立ったのは、ジョージア州のブラッド・ラフェンスベルガー司法長官(67歳、2019年就任、共和党員)の証言である。
同長官は、トランプからの電話で、同州におけるバイデン勝利を覆すのに必要な“1万1,780票を探し出せ”と要求されたと証言した。
また、彼の部下であるゲイブ・スターリング司法長官室責任者(選挙管理担当、51歳、2018年就任、共和党員)も、トランプからの無理な要求に対して、冷静に行動するよう訴えたと証言している。
両氏は、事実を明らかにするため、機械によらないで改めて人の手によって同州の500万票を数え直したが、バイデン勝利に変わりはなかったとも言及している。
なお、1/6 HSCは、今回少なくとも20人の州選挙管理委員会関係者を召還しているが、これまでのべ1千人の証言及び1万ページに及ぶ証拠文書によって、トランプが不当に選挙結果を覆そうとしたことが証明できるとしている。
同日付『CNNニュース』も、「1/6 HSC、4度目の公開聴聞を実施」として、詳報している。
1/6 HSCは6月21日、今月4度目となる公開聴聞を実施した。
今回の聴聞では、トランプ前大統領及びその支持者らが、選挙結果を覆すべく、州の選挙管理委員会関係者らにどのように圧力をかけたかが明らかにされようとしている。
アリゾナ州及びジョージア州の共和党員で両州の選挙管理委員会に関わる重鎮が、トランプの選挙結果の反覆要求に抗ったために、トランプ支持者らから脅迫を受けたと証言している。
なお、同特別委はトランプを起訴する権限を有していないが、彼らの目的とするところは、トランプが大統領職移譲を食い止めるために行った数々の不正行為全容を明らかにし、かつ、選挙不正と主張する虚偽発言が繰り返されたことによって、議事堂乱入事件に繋がったとの因果関係を白日の下に曝すことである。
これを踏まえて、唯一の起訴執行機関である司法省が、前大統領を起訴するという、前代未聞の決断をするかどうかが注目される。
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