5月12日付
『シバー・タイムズ』オンラインニュース(NY本拠、ドイツ・フランス・イタリア・中国に支局)は、「中国の大学、世界ランキング評価対象から抜けたい意向」と題して、今年4月下旬に大学を訪問した習近平国家主席が、他国を模倣せず独自の探求に努めよ、との檄を飛ばしたことから、その意向を忖度して、世界大学ランキングから抜ける旨表明したと報じている。
世界の経済の分断が進んだように、大学の分野でも同様の事態が起きようとしている。...
全部読む
5月12日付
『シバー・タイムズ』オンラインニュース(NY本拠、ドイツ・フランス・イタリア・中国に支局)は、「中国の大学、世界ランキング評価対象から抜けたい意向」と題して、今年4月下旬に大学を訪問した習近平国家主席が、他国を模倣せず独自の探求に努めよ、との檄を飛ばしたことから、その意向を忖度して、世界大学ランキングから抜ける旨表明したと報じている。
世界の経済の分断が進んだように、大学の分野でも同様の事態が起きようとしている。
中国の『ナショナル・ラジオ』の報道によると、中国の南京大学(中国東部江蘇省、1921年設立)、蘭州大学(北西部甘粛省、1925年設立)、中国人民大学(北京、1950年設立)は、THEが行う世界大学ランキング評価対象から抜けることを決めたという。
これらの大学の決定は、4月25日に習近平国家主席が中国人民大学を訪問して間もなく発表されたものである。
同国家主席はその際、“中国は特異な歴史を持ち、独特の文化及び特別な国家状況を有する国である”とし、“従って、世界に冠たる大学を築き上げた以上、盲目的に他を追随したり、外国の基準やモデルを模倣する必要はない”と表明している。
その上で、“世界に誇る大学網を更に築き上げていく上で、中国の特性を生かし、中国共産党の主導及びマルクス主義の原点に忠実となり、かつ、党そして人民に尽くしていくことが求められる”とも強調した。
かかる動きに対して西側諸国は懸念していて、北京駐在のある外交官は、“単なるプロパガンダなのか、あるいは世界の大学の関係性に重大な影響を与える動きとなるのか、現段階では不明だ”とコメントしている。
ただ、習氏はこのような見解を何年もの間表明してきていて、例えば2014年5月に北京大学を訪問した際、“ハーバード大・イェール大・スタンフォード大・マサチューセッツ工科大・ケンブリッジ大の二番煎じなどあってはならず、常に唯一無二の北京大学・清華大学(北京、1911年設立)・浙江大学(東部浙江省、1897年設立)・復旦大学(上海、1905年設立)・南京大学であるべきである”と発言していた。
そして習氏は2020年9月、教育・文化分野の主導者らとの会合において、“新時代に相応しい教育の評価ができるようマスタープランを創り上げる”よう求めていて、その詳細があと二、三日内に明らかにされようとしている。
(注)世界大学ランキング:英国『タイムズ』紙が付録冊子として毎秋に発行しているTHEによる世界著名大学の評価ランキング。2004年から実施。教育・学習環境、研究、論文の引用数、国際性、業界からの収入、の5分野で評価。2022年版では、世界99ヵ国・1,600以上の大学を対象にしてランキングを発表。主要大学の順位は、(1)英オックスフォード大、(2)米カリフォルニア工科大・ハーバード大、(4)米スタンフォード大、(5)英ケンブリッジ大・米マサチューセッツ工科大、(7)米プリンストン大、(8)米カリフォルニア大バークレー校、(9)米イェール大、(10)米シカゴ大、・・、(16)中国北京大・清華大、・・、(21)シンガポール国立大、・・、(30)香港大、・・、(35)東京大、・・、(60)復旦大、(61)京都大。
閉じる