日米両国は1月22日、フィリピン海で今年初となる共同海上訓練を実施した。そこで、両国から目の敵とされている中国が早速反応し、翌日に昨年10月以来となる39機も戦闘機を大挙して台湾空域に派遣し、ひとつの中国原則をアピールした。
1月23日付
『ワシントン・イグザミナー』:「中国軍、日米共同海上訓練実施に対抗して戦闘機を大挙して台湾空域に派遣」
台湾国防部(省に相当)は1月23日、今年初めてとなる39機もの中国軍機の大編成が台湾の防空識別圏(ADIZ、注後記)に侵入してきたと発表した。
中国人民解放軍(PLA)戦闘機が飛来した前日、日米両国がフィリピン海で共同海上訓練を実施していた。
同訓練には、米軍の空母2隻、強襲揚陸艦2隻、ミサイル巡洋艦2隻、及び駆逐艦5隻、そして海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦(本質的には小型空母)が参加していた。...
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1月23日付
『ワシントン・イグザミナー』:「中国軍、日米共同海上訓練実施に対抗して戦闘機を大挙して台湾空域に派遣」
台湾国防部(省に相当)は1月23日、今年初めてとなる39機もの中国軍機の大編成が台湾の防空識別圏(ADIZ、注後記)に侵入してきたと発表した。
中国人民解放軍(PLA)戦闘機が飛来した前日、日米両国がフィリピン海で共同海上訓練を実施していた。
同訓練には、米軍の空母2隻、強襲揚陸艦2隻、ミサイル巡洋艦2隻、及び駆逐艦5隻、そして海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦(本質的には小型空母)が参加していた。
同訓練の実施海域は、中国が領土の一部と主張する台湾と米軍基地があるグアム島の間に広がるフィリピン海である。
横須賀基地をベースとする米海軍第7艦隊司令官のカール・トーマス中将(58歳)は、“米海軍の誇る艦隊と同盟国日本の海上自衛隊と共同して、自由で開かれたインド太平洋を擁護する目的で実施された共同訓練は素晴らしい成果を収めた”とツイートした。
一方、中国政府はかねてより、台湾を統一するために武力行使も辞さないと宣言しており、5年余り前からしばしばPLA戦闘機を台湾のADIZに派遣してきている。
そして今回も1月23日、J-16戦闘機24機、J-10戦闘機10機、Y-9輸送機2機、Y-8対潜戦闘機2機、H-6大型爆撃機1機の合計39機を台湾ADIZに侵入させた。
これは、昨年10月4日に56機もの大群を侵入させてきて以来で、今年に入って最多の派遣となっている。
シンガポールのラジャラトナム国際学院(2007年設立)のコリン・コー研究員は、“今回の戦闘機派遣は、日米共同訓練に対抗したものと考えられるが、同時に台湾側に中国軍の度重なる軍事的圧力に疲弊させる目的もある”と分析した。
すなわち、1月半ばに発生した台湾軍のF-16V戦闘機の墜落に言及して、“台湾の政治家や元軍人からは、PLAの軍事的挑発を迎え撃つための戦闘機の熟練操縦士の不足を問題とする声が挙がっている”とする。
同研究員は、“かかる背景もあって、PLA側が台湾独立機運を一挙に雲散霧消させるため、大軍を派遣してきたものと考えられる”と付言した。
また、米太平洋軍統合情報センターの元作戦部長のカール・シャスター氏も、中国側の狙いは、度重なる台湾空域への戦闘機派遣で、台湾を疲れさせる目的、“例えば、テニス選手が試合中に相手選手を疲れさせるためにあえて逆コーナーを狙ってストロークするようなもの”だとする。
ただ、同氏は、日米共同訓練の目的が台湾問題のみならず、日本が抱える尖閣諸島の領有権問題も絡んだものとするが、今回の訓練海域が、中国本土からかなり離れたフィリピン海であるため、中国側は然程脅威を抱いてはいないと分析している。
同日付『AP通信』:「中国、台湾空域に向けて戦闘機39機を派遣」
台湾国防部発表によると、1月23日晩にPLA戦闘機39機が大挙して台湾のADIZに侵入してきたため、警告を発するとともにスクランブル発進を実施したという。
PLA戦闘機は、直近1年半ほど毎日のように台湾空域に侵入してきているが、今回の39機は、昨年10月の56機に次いで最多となっている。
台湾と中国の関係は、2016年の総統選挙で、台湾独立が党是に入っている民主進歩党の蔡英文(ツァイ・インウェン、当時60歳)党首が勝利して以来、対立した関係になっている。
すなわち、中国国民党の馬英久(マー・インチウ、当時65歳)党首が総統だった2015年、初の中国・台湾首脳会談が開催される程関係が密になっていたが、2016年以降はコミュニケーションチャネルが一切断ち切られたままとなっている。
(注)ADIZ:各国が防空上の必要性から領空とは別に設定した空域のこと。同圏では、常時防空監視が行われ、通常は強制力はないが、予め飛行計画を提出せず、ここに進入する航空機には識別と証明を求める。更に、領空侵犯の危険がある航空機に対しては、スクランブル発進等軍事的予防措置などを行使することもある。
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