原油価格の上昇を受けて、車社会の米国ではガソリン価格が急騰し、ジョー・バイデン大統領(79歳)の支持率低下に繋がっている。しかし、米国からOPEC+(注1後記)に対する原油増産要求が断られたことから、同政権としては止むに止まれず、同盟国に対して備蓄原油の市場放出を要請し原油市場の安定化を図ろうとしている。そしてこの程、日本及びインドがかなりの備蓄原油の市場放出で以て同政権に同調しようとしている。
11月23日付
『ロイター通信』:「日本とインド、米国の要請で備蓄原油の市場放出を検討するも依然時期は未定」
政府関係者7人が『ロイター通信』のインタビューに答えて、米国の要請に応えるべく、日本とインドが備蓄原油の市場放出を検討しているとコメントした。
ただ、具体的な放出時期は、米国及び他主要国の放出次第としていることから、未だ確たることは決まっていないという。
同情報によると、早ければ11月23日にも公式発表があるのではないかと期待されているが、米ホワイトハウス及びエネルギー省とも、備蓄原油の市場放出に関して何ら公式決定はなされていないとしている。...
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11月23日付
『ロイター通信』:「日本とインド、米国の要請で備蓄原油の市場放出を検討するも依然時期は未定」
政府関係者7人が『ロイター通信』のインタビューに答えて、米国の要請に応えるべく、日本とインドが備蓄原油の市場放出を検討しているとコメントした。
ただ、具体的な放出時期は、米国及び他主要国の放出次第としていることから、未だ確たることは決まっていないという。
同情報によると、早ければ11月23日にも公式発表があるのではないかと期待されているが、米ホワイトハウス及びエネルギー省とも、備蓄原油の市場放出に関して何ら公式決定はなされていないとしている。
米政権はかつて、OPEC+に対して原油増産を要求したが、世界的な原油不足状況になっていないとして断られている。
OPEC+としては、既に日産40万バレル(約6万3,600キロリットル)の増産をしていることから、先行きの原油市場軟化を懸念してバイデン大統領の要請を受け入れなかったとする。
この結果、米国内のガソリン価格上昇を受けて支持率低下という苦境に立っているバイデン政権は、何が何でも事態改善の必要に迫られており、この程、同盟国である日本、インド、韓国はもとより中国までにも備蓄原油の市場放出を要請することになった。
かかる動きに加えて、新型コロナウィルス感染問題再燃に伴う都市封鎖措置による原油需要落ち込みの懸念から、ブレント原油価格(注2後記)が10月下旬の最高値から▼7ドル(約800円)余り下落の1バレル当り79.30ドル(約9,040円)となっている。
なお、シティグループ(1812年創立の世界四大銀行のひとつ)アナリストの推測では、米国は4,500万~6,000万バレル(約716万~954万キロリットル)を市場放出すると見込まれている。
一方、日本は、岸田文雄首相(64歳)が先週末、米国政府の要請に応えるべく検討中とコメントしている。
日本は世界第4位の原油輸入国(1位中国、2位米国、3位インド)であるが、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC、注3後記)によると、石油備蓄法(注4後記)による最低90日分の備蓄義務量に対して、現在は145日分の国家備蓄量があるという。
更に、石油精製会社等民間企業が備蓄している原油や石油精製品量が1億7,500万バレル(約2,783万キロリットル)あることから、この民間備蓄量だけで上記最低備蓄義務量の90日分が十分カバーされているとする。
また、インドは石油備蓄量が2,650万バレル(約421万キロリットル)あって、3人の政府関係者が11月22日に『ロイター通信』に語ったところによると、備蓄原油の市場放出について目下米国政府と具体的協議を進めているところだという。
なお、先のシティグループのアナリストの推定では、米国及び同盟国による備蓄原油の市場放出は“1億~1億2千万バレル(約1,590万~1,910万キロリットル)、もしくはもっと多くなるかも知れない”としている。
(注1)OPEC+:石油輸出国機構(OPEC、1960年設立、中東産油国等加盟14ヵ国のうちの11ヵ国)及び非OPEC主要産油国(露・メキシコ等10ヵ国。米・加・中国等9ヵ国は不参加)で構成。2016年11月の協力宣言、2019年7月の協力憲章採択を経て、枠組み会合開催。
(注2)ブレント原油価格:英国の北海にあるブレント油田から採掘される硫黄分の少ない軽質油を中心とした市場価格。米国のWTI先物価格とともに世界の原油価格指標となっている。
(注3)JOGMEC:資源エネルギー庁所管の独立行政法人で2004年設立。目的は、石油・天然ガスの探鉱及び金属鉱物の探鉱に必要な資金の供給、石油・天然ガス資源・金属鉱物資源の開発を促進するために必要な業務、石油・金属鉱産物の備蓄に必要な業務を行い、石油・天然ガス・金属鉱産物の安定的かつ低廉な供給を資すること。また、金属鉱業等による鉱害の防止に必要な資金の貸し付けその他業務を行い、国民の健康の保護及び生活環境の保全並びに金属鉱業等の健全な発展に寄与すること。
(注4)石油備蓄法:石油の備蓄を確保するとともに、備蓄に係る石油の適切な供給を図るための措置を講ずることにより、日本への石油の供給が不足する事態が生じた場合において石油の安定的な供給を確保し、以て国民生活の安定と国民経済の円滑な運営に資することを目的として、1975年に制定された法律。
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