欧州連合(EU)のフォン・デア・ライエン欧州委員長は15日、欧州議会で一般教書演説を行い、将来の危機においてEUがより自由に行動できるようにするために、独自の防衛能力を開発する新たな計画を発表した。アフガニスタン軍の急速な崩壊と、先月のカブール空港における米国主導の混沌とした撤退を背景に、今回の方針が発表された。
米国のバイデン大統領がアフガニスタンからの米軍の撤退を表明した後、単独でタリバンに立ち向かうことができないEU諸国は、半ば強制的に混乱の中ですすめられた人々の国外退避活動に協力させられた。北アイルランドの
『ベルファースト・テレグラフ』によると、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は演説の中で、アフガニスタンの政府と軍が降伏し、数日のうちにタリバンが首都を制圧したことは、欧州連合の27カ国だけでなく、北大西洋条約機構(NATO)との関係にも疑問を起こすものだと述べた。...
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米国のバイデン大統領がアフガニスタンからの米軍の撤退を表明した後、単独でタリバンに立ち向かうことができないEU諸国は、半ば強制的に混乱の中ですすめられた人々の国外退避活動に協力させられた。北アイルランドの
『ベルファースト・テレグラフ』によると、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は演説の中で、アフガニスタンの政府と軍が降伏し、数日のうちにタリバンが首都を制圧したことは、欧州連合の27カ国だけでなく、北大西洋条約機構(NATO)との関係にも疑問を起こすものだと述べた。
EUは、紛争地域に展開するための戦闘部隊の仕組みを持っているが、これまで一度も使用したことがない。フォン・デア・ライエン委員長は、「これまで私たちの足を引っ張ってきたのは、単に能力の不足ではなく、政治的意思の欠如である。この政治的意志を育てれば、EUレベルでできることはたくさんある」と述べた。
フォン・デア・ライエン委員長は、EUはより良い集団的意思決定と情報共有のための基礎を築き、27の加盟国の軍備の相互運用性を向上させ、戦闘機、ドローン、サイバー能力などの共通プロジェクトに投資しなければならないと述べた。
仏『BFMTV』によると、同委員長は演説で、「サイバー攻撃から身を守り、NATOや国連が存在しない場所で行動し、危機に間に合うように管理する」ために、「欧州は次のレベルにステップアップする時が来た」と述べた。
5千人規模の欧州即応部隊の創設が数カ月前から議論されていたが、米国のアフガニスタン撤退により欧州連合の軍事的欠点が浮き彫りになり、議論が再燃している。ジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は、この軍隊によって、「アメリカが関与したくないときに、EUの利益を守るために」介入することができるようになると考えている。この部隊の創設については、昨年5月にフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オーストリア、ベルギー、ルクセンブルグ、オランダ、ギリシャ、キプロス、チェコ、ポルトガル、アイルランド、スロベニアのEU14カ国で議論されていた。
フォン・デア・ライエン委員長は、本格的な軍事力を構築する上で、克服すべき3つの障害があることを述べた。情報面での協力不足、欧州の軍用機器の相互運用性の問題、そしてサイバー防衛能力の不足である。
委員長は、ヨーロッパの情報や分析を集めて統合するためのセンターの設立を呼びかけた。また、「欧州で開発・生産された防衛装備品の購入にかかる付加価値税を免除する」ことも提案した。さらに、「共通規格の法制化を伴う欧州のサイバー防衛政策」の採用を提唱した。
英『ガーディアン』は、EU加盟国による防衛への投資不足と、特にEUの東側の加盟国が抱いているNATOを弱体化させるリスクへの懸念が、欧州軍を確立する上での主な障害となっていると伝えている。EU加盟27カ国の各政府の防衛費は、2019年にはGDPの1.2%だったのに対し、米国では3.4%だった。
欧州議会左派グループ代表のマルティン・シュヴィルデマン議長は、委員会が最も貧しい人々の苦しみを和らげるために資金を提供することよりも、「さらなる武装と軍事的解決を求めている」と批判した。また、一部の加盟国も今回の発表に疑問を呈している。ある外交官は、「欧州は、宣言、首脳会議、センター設立、付加価値税の免除によって、防衛上の弱点に対処しようとしている。そのビジョンは、テクノクラシーの具現化だ」と不満を述べた。
『ガーディアン』は、今回の演説では、ドイツの選挙戦に巻き込まれたくないという欧州委員会委員長の意向を反映しているためか、目玉となるような取り組みはほとんど見られなかったと伝えている。なお、デンマークのマルグレーテ・ベスタガーとスウェーデンのイルヴァ・ヨハンソンの2人の欧州委員は、編み物をしながら演説を聞いていたという。
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