<ハイライト>(9月10日午後11時半現在の総感染者数順の報告)
●世界保健機関(WHO):アフリカ諸国向けワクチン供給量が当初計画より▼25%減少。主たる要因は、西欧諸国でのブースター接種促進でアフリカ向け供給不足となっていること。
●米国:(1)ジョー・バイデン大統領(78歳)が9月9日、デルタ株蔓延の脅威に対抗すべく、ワクチン接種率向上のために更なる規制を発表。
(2)連邦政府の感染者・死者数が、昨年半ばまで養護老人ホームの実績未算入で過少報告であったことが判明。
(3)ユナイテッド航空(1926年設立)が、米国内感染率再急上昇を理由に原則全従業員のワクチン接種義務化措置。理由もなく接種拒否する従業員は解雇。
●フランス(仏):感染流行の際の度重なる都市封鎖措置期間に、医療・スーパーマーケット・清掃・ゴミ収集・保育等必要不可欠な業務に従事した外国人ワーカー約1万2千人に市民権授与。
●トルコ(土耳古):国産ワクチン「Turkovac」の緊急使用許可が早晩取れ次第、10月より本格生産開始予定。他国向け輸出も検討。
●イタリア(伊):北アフリカから近いシチリア島諸群南端の小島に、ワクチン接種業務遂行チームを派遣。同島に入ってきた4万人余りのアフリカ難民全員にワクチン接種を行うことが任務。
●フィリピン(比):マニラ市内の孤児院で子供100人が感染。陽性(無症状)の1人の大人が、感染対策をせずに訪問したことが原因。
●ベルギー(白耳義):ワクチン接種後に免疫低下が覗える12歳以上の市民を対象に、来週からブースター接種を開始。
●スリランカ(斯里蘭):学校の早期再開を目指し、12~18歳の約200万人の生徒を対象にワクチン接種促進方針を発表。同国の20歳以上のワクチン接種率は62%。
●ニュージーランド:首都オークランドでの感染者増に対応するため、スペインから追加25万回分の米ファイザー製ワクチンの買い付けを決定。感染者がゼロになるまで、都市封鎖措置を継続する意向。ワクチン接種率(1回)は約55%。
<WHO>
・WHOアフリカ地域事務所のマシディソ・モエティ地域ダイレクター(70代、ボツワナ出身の医師・公衆衛生専門家)は、年末までにアフリカ諸国が入手できるワクチン供給量が当初計画より▼25%減少する見通しと発表。
・同氏は、COVAXファシリティ(注後記)に基づき、先週500万回分が届いたとしながらも、今年3月以降“実にこの3倍ものワクチンが米国で廃棄(浪費)されている”と糾弾。
・更に同氏は、COVAXが9月8日、年末までのアフリカ諸国向けワクチン供給量を18憶回分から14億回分に下方修正するとの発表に愕然としたが、この主たる要因は、西欧諸国でのブースター接種促進でアフリカ向けが供給不足となっていると非難。
・なお、アフリカ疾病予防管理センター(2016年設立)によれば、アフリカ諸国のワクチン接種率は依然3%。
<米国>(感染者4,125万5,867人、死者66万7,528人、致死率1.6%)
(1)・バイデン大統領は9月9日、デルタ株蔓延の脅威に対抗すべく、ワクチン接種率向上のために更なる規制を発表。ワクチン接種義務化対象を更に拡大するもので、対象者は1億人に上る。
・100人以上の従業員を抱える会社に対しては、ワクチン接種義務化か、あるいは毎週の検疫実施を要求(対象者は約8千万人)。また、医療施設の全従業員にワクチン接種義務化(同約1,700万人)。
・更に、連邦政府関係省庁に出入りする取引企業・下請け業者の全従業員をワクチン義務化とする大統領令も近々発令(対象者は数百万人)。
(2)・米医師会(1847年設立)リリースの9月9日付ジャーナルによると、ハーバード大(1636年設立の私立大学)研究チームの調査によって、米疾病予防管理センター(CDC、1946年設立)が発表している感染者・死者数には、一時期養護老人ホーム実績(感染者数で約12%相当分、死者数で約14%相当分)が算入されておらず、過少報告であったことが判明。
・連邦医療保険扶助事業センター(1965年設立)が、昨年5月20日までの感染者・死者について、養護老人ホームに対して報告を課していなかったためで、死者数では11万8,300人余りが漏れていた可能性。
(3)・ユナイテッド航空が、米国内における感染率再急上昇を理由に、ワクチン未接種となっている全社のうち約半分の従業員に対して9月中のワクチン接種を命令。
・疾病や宗教上等の理由でワクチン接種できない人はその旨申告書提出を義務化、但し、対象者は10月初めに無休の休暇命令。申告書未提出、あるいは理由もなく接種を拒否する従業員は解雇措置。
<フランス>(感染者687万7,825人、死者11万5,362人、致死率1.7%)
・市民権担当のマルレーヌ・シアパ大臣(38歳)は9月9日、感染流行の際の度重なる都市封鎖措置期間に、医療・スーパーマーケット・清掃・ゴミ収集・育児等必要不可欠な業務に従事した外国人ワーカー約1万2千人に市民権を授与したと発表。
・政府は1年前、滞在外国人に対して、緊急事態時に必要不可欠な業務に従事してくれれば市民権を与えると提案。
・同大臣は、1万6,381人の申請者のうち、1万2,012人が“フランス人になった”と言及。
<トルコ>(感染者656万6,568人、死者5万8,913人、致死率0.9%)
・保健省のファレッティン・コジャ大臣(56歳)は、国産ワクチン「Turkovac」の緊急使用許可が早晩取れ次第、10月より本格生産開始する意向であると発表。
・同ワクチンはエルジェス大(1978年設立の公立大学)が開発したもので、今年6月に最終臨床試験を開始。他国向け輸出も検討。
<イタリア>(感染者459万941人、死者12万9,766人、致死率2.8%)
・内務省のルチアナ・ラムジュ大臣(67歳)は、入国してくる移民にワクチン接種を義務付けることを発令。
・これに伴い、ワクチン対策担当責任者のフランチェスコ・フィグリューオロ陸軍大将(60歳)が9月9日、シチリア島諸群南端のランペドゥーザ島に2つのワクチン接種業務遂行チームを派遣したと発表。
・同チームは、地元の医療部隊及びイタリア赤十字と協力して、同島に入ってきた4万人余りのアフリカ難民全員にワクチン接種を行うことが任務。
・同島は北アフリカから至近であり、アフリカ難民がリビアやチュニジアの密輸業者の手引きで頻繁に無許可入国。その数は、2019年約4千人、2020年約2万人で、今年は既に4万人がボートに乗って到着。
<フィリピン>(感染者217万9,770人、死者3万4,899人、致死率1.6%)
・マニラ首都圏ケソン市のジェントルハンズ孤児院の子供100人が感染。陽性(無症状)の1人の大人が、感染対策をせずに訪問したことが原因で、スタッフ33人も同様感染。
・同市のジョイ・ベルモンテ市長(51歳)は、感染防止ルールがきちんと守られていれば防げた話だとして糾弾。
<ベルギー>(感染者120万3,326人、死者2万5,447人、致死率2.1%)
・ワクチン接種後に免疫低下が覗える12歳以上の市民を対象に、来週から米ファイザー製か米モデルナ製ワクチンのブースター接種を開始。
・対象となるのは、先天性免疫不全者、ガン治療患者、人工透析治療者等で、全人口1,150万人のうち40万人弱。
<スリランカ>(感染者47万9,664人、死者1万864人、致死率2.3%)
・保健省のケヒリア・ランブクウェラ大臣(66歳)は、既に6ヵ月以上閉鎖となっている学校の早期再開を目指し、12~18歳の生徒約200万人を対象にワクチン接種を促進すると発表。なお、同省によると、同国の20歳以上のワクチン接種率は62%。
・同国では8月20日から9月13日までの間、都市封鎖措置を実施。
<ニュージーランド>(感染者3,866人、死者27人、致死率0.7%)
・首都オークランドでの感染者増に対応するため、スペインから追加25万回分の米ファイザー製ワクチンの買い付けを決定。
・同国のジャシンダ・アーダーン首相(41歳)は、当該ワクチンは9月10日に到着予定で、更に他国から追加のワクチンを手配すべく交渉中と発表。
・水際対策が奏功したこともあって、当初ワクチン手配そのものが遅れていたが、漸く他先進国並みとなっていて、現在の同国のワクチン接種率(1回)は約55%。
・1日当たりの感染者は減少してきていて、9月9日には13人。ただ、当局は感染者がゼロになるまで、都市封鎖措置を継続する意向。
(注)COVAXファシリティ:COVID-19ワクチンへの公平なアクセスを目的としたグローバルな取り組みで、GAVIアライアンス(子供の予防接種プログラム拡大を目的とする国際センター、2000年設立)、WHO、感染症流行対策イノベーション連合(世界連携でワクチン開発を促進するための官民連携パートナーシップ、2017年設立)などが主導。
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