東京オリンピックに参加していた、ベラルーシの陸上選手が亡命するという前代未聞の事態が起きた。同選手の言い分によれば、祖母との国際電話で、帰国するのは危険だと忠告されたためという。これに対して、四半世紀以上も権力の座にあるアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(66歳)は、全て反政権派が仕組んだ謀略だと非難する声明を発表した。
8月9日付
『ロイター通信』:「傲慢なルカシェンコ大統領、亡命したベラルーシ代表選手は“操られている”と非難」
アレクサンドル・ルカシェンコ大統領は8月9日、東京オリンピックに派遣されていたベラルーシ代表陸上短距離選手が亡命したのは、外国に巣くう反政府分子らによって“そそのかされた”ものだと非難した。
同大統領は大統領選勝利1周年を迎え、自身が独裁者だという指摘を全面否定し、また、先週キエフ(ウクライナ)で殺害されているのが発見された反政府活動家、故ビタリィ・シーショフ氏(享年26歳)の事件にも関与していないと強調した。...
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8月9日付
『ロイター通信』:「傲慢なルカシェンコ大統領、亡命したベラルーシ代表選手は“操られている”と非難」
アレクサンドル・ルカシェンコ大統領は8月9日、東京オリンピックに派遣されていたベラルーシ代表陸上短距離選手が亡命したのは、外国に巣くう反政府分子らによって“そそのかされた”ものだと非難した。
同大統領は大統領選勝利1周年を迎え、自身が独裁者だという指摘を全面否定し、また、先週キエフ(ウクライナ)で殺害されているのが発見された反政府活動家、故ビタリィ・シーショフ氏(享年26歳)の事件にも関与していないと強調した。
記者会見に臨んだ同大統領は、“自身が昨年8月9日の大統領選の正規の勝利者であり、暴力を煽り、クーデターを画策した輩からベラルーシを救った”と胸を張った。
1994年から長期政権を築いている同大統領に対しては、2020年の大統領選以降、不正選挙に抗議する数万人の市民のデモが繰り広げられた。
同大統領はかかる抗議に対して、厳しい取り締まりで応え、多くの活動家らを逮捕、もしくは国外追放している。
かかる経緯から、西欧諸国は反民主主義的仕業だとして、一斉に対ベラルーシ制裁を講じた。
そして今回、クリスチナ・チマノウスカヤ選手(24歳)が先週、派遣地の東京からポーランドに亡命する事態が発生して、またしてもベラルーシに非難の目が向けられている。
しかし、同大統領は、“彼女一人ではできない事態であり、空港で警察に助けを求め、ベラルーシ国家保安委員会(KGB、注後記)派遣のスパイに拉致されると叫んだりすることは、不穏分子の策謀で行われたことだ”とし、“日本にはKGB職員など一人もいない”と反論した。
なお、同大統領は、同じく西側諸国と対立する盟友であるウラジーミル・プーチン大統領(68歳)から大きな支援を受けていることで、欧米の制裁等にも強気で対応してきている。
ロシアにとってベラルーシは、北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)と対峙する上での緩衝国の位置付けとして捉えて支援している。
一方、ベラルーシの反政府グループは、未だに600人以上が不当に逮捕されて拘留されていると非難し、目下隣国リトアニアに逃れている同グループ代表のスビャトラーナ・ツィハノウスカヤ氏(38歳)は、西欧諸国に対ベラルーシ追加制裁を強く要請している。
(注)KGB:1990年組成のベラルーシ共和国の諜報機関、秘密警察。ベラルーシにおける旧ソ連国家保安委員会 (KGB)の後継機関。諜報、防諜、犯罪捜査、政府通信の組織を担当する。機構が分割・再編されたロシアやウクライナと違い、ソ連KGBの機構をほぼ完全に維持している。
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