東京オリンピックの短距離選手で、亡命を希望していたベラルーシの選手に人道ビザが発給された。独裁政権主導のベラルーシオリンピック委員会によるチームをSNSで批判したとして、強制的に帰国されそうになり、空港で搭乗を拒否していた。アスリートを含むベラルーシ政権反対派への迫害を、西欧は批判している。
8月4日付
『ロイター通信』は「ベラルーシの短距離選手が外交騒動を経て、日本からポーランドへ発つ」との見出しで以下のように報道している。
1日夜、ベラルーシのクリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手が、祖国ベラルーシ行きの飛行機への搭乗を拒み、チームにより強制的に空港に連れてこられたと語ったことが注目された。翌2日、同選手はポーランド領事館で身柄保護を求め、その後ポーランドの人道ビザ発給が認められた。...
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8月4日付
『ロイター通信』は「ベラルーシの短距離選手が外交騒動を経て、日本からポーランドへ発つ」との見出しで以下のように報道している。
1日夜、ベラルーシのクリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手が、祖国ベラルーシ行きの飛行機への搭乗を拒み、チームにより強制的に空港に連れてこられたと語ったことが注目された。翌2日、同選手はポーランド領事館で身柄保護を求め、その後ポーランドの人道ビザ発給が認められた。
同選手は200M予選に出場予定だったが、前日にヘッドコーチが部屋に来て、彼女がチームを批判したために帰国するよう告げられたという。国際オリンピック委員会(IOC)は3日、この件につき正式な調査を開始、ベラルーシチームからの報告に期待すると発表。米国のアントニー・ブリンケン国務長官は、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の「国境を越えた抑圧を容認できない」と批判した。
この騒動はベラルーシでも注目されている。ベラルーシは、ルカシェンコ大統領再選を目論む不正選挙が起きたとされる昨年を機に、抗議デモのうねりが起き、警察による反対派への弾圧が強化された。当局は、反政府デモ隊を犯罪者、西側の支援を盾にした暴動革命家とみなし、警察の活動は適切で必要な措置だとしている。
3日、ウクライナに亡命していた活動家で、ベラルーシ迫害を逃れた人々の支援団体を運営していたビタリー・シショフ氏が、キエフの自宅近くの公園で首を吊った状態で発見され、ウクライナ警察は殺人事件として捜査を開始している。
8月3日付『AP通信』は「身の危険を訴えるベラルーシの選手にポーランドがビザ発給」との見出しで以下のように報道している。
ベラルーシの東京五輪参加選手で、チームから帰国を強制され、帰国する独裁政権のベラルーシでの身の安全確保を不安視するベラルーシの短距離選手に、ポーランドがビザを発給した。
ツィマノウスカヤ選手はインスタグラムで、未経験の1600Mリレーに出場するようコーチに言われたと告白。その後空港に強制的に連れられたが、イスタンブール行きの飛行機への搭乗を拒否し、警察に助けを求めた。彼女の映像メッセージはSNSで拡散され、IOCにも支援を仰いだ。政府反対派を厳しく弾圧し続けているベラルーシの国営メディアは、同選手がチームの運営体制を批判したと報道。
五輪関係者の解任が相次ぎ、パンデミックの安全確保や開催反対の声をどうコントロールするか等と同じく、この亡命問題への対応に注目が集まった。国連のスポークスマンは、「日本当局は亡命希望者の保護のため出来る限りのことをやっている」と評価。ポーランドとチェコが支援を申し入れ、れ、外務省がIOCや組織委員会と調整中。ポーランドは、人道ビザを発給し、選手のスポーツのキャリアを継続できるよう支援する意向だとしている。
ベラルーシのルカシェンコ政権の弾圧は、昨年の選挙後、少しでも政府批判を行った人物を執拗に標的としている。今年5月、反対派ジャーナリストを逮捕するため、飛行機を強制着陸させ、西の指導者はこれを「ハイジャック行為」だと批判した。飛行機に同乗していた活動家ラマン・プラタセヴィッチ氏は、デモ参加を呼びかけるチャンネルを開設、2019年ポーランドに亡命し、大衆扇動罪により公判まで自宅逮捕が続いている。
IOCはベラルーシオリンピック委員会と対立関係にある。ベラルーシオリンピック委員会は、大統領と息子ヴィクターにより25年以上運営され、IOCの選手側への報復や脅しの苦情調査により、東京五輪からは禁止されている。国際スポーツ大会で選手が亡命を求めることは、冷戦時代を中心に過去にもしばしば見られた。
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