7月27日付
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「東京オリンピックは成功か失敗か、またそれをどう判断するか?」
新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題で開催が1年延期された東京オリンピックについて、依然感染の最中での強行開催の結果、果たして成功なのか失敗なのか、あと2週間後の閉会式を待たないと評価はできないであろう。
また、多岐にわたる利害関係が絡むことから、それぞれのグループで損・得の評価が分かれることにもなろう。
しかし、現段階で評価すれば以下となろう;
<得したグループ>
●国際オリンピック委員会(IOC):
・収入の75%が放映権契約(うち40%が米メディア『NBC』)、18%がスポンサーによるものであり、開催によってこれが確保できる。
・中止の場合、放映権契約による違約金として30億~40億ドル(約3,300~4,400億円)の支払い義務が生じる。
・山口香日本オリンピック委員会理事(56歳、1988年ソウル大会の柔道52kg級銅メダリスト)が数ヵ月前、IOCがオリンピックを“エンターテインメント”ビジネスと捉えていると非難していたが、IOC競技担当のキット・マコーネル理事(48歳、元国際ラグビー連盟理事)は7月25日の公式会見で、“競技場での最高の競技、また、躍動するアスリートのことを最優先に考えている”と優等生の発言をしている。
●菅義偉首相(72歳):
・COVID-19ワクチン手配の遅延等の批判にさらされて、支持率は30%台と発足時の半分以下まで減少し、今秋の総選挙を迎える与党・自民党としては、東京大会を無事に終え、日本国民に感動を与えることで支持率回復を切望している。
・東京大学の鈴木一人教授(50歳、国際政治学者)は『AP通信』のインタビューに答えて、“菅首相は、東京大会を踏み台にして今秋の総選挙を有利に進めようと目論んでいる”とし、“獲得した金メダルの数や、日本選手の活躍を目の当たりにすることで、世論の反対を押し切って開催したことも帳消しにされると考えている”とコメントしている。
・更に同教授は、“日本のライバルである中国が来年2月に冬季大会を開催するが、COVID-19に打ち勝った大会として中国に喧伝されてしまうことを最も恐れている”とも分析している。
●日本の新聞・テレビ等のマスコミ:
・開催強行に異を唱える報道もあったが、実際に競技が始まれば、日本選手の活躍を中心に連日報道して、紙面及び視聴率を稼いでいる。
<損したグループ>
●日本のスポンサー企業:
・日本の60社余りの企業が大会スポンサーとして合計30億ドル(約3,300億円)余りも注ぎ込んでいるが、これは従来の大会のスポンサー支出額の倍以上になる。
・しかし、最大のスポンサーであるトヨタは、世論の多くが開催に反対していたこともあって、大会期間中のオリンピック関連広告を自粛する決定をしている。
・その他多くの企業も、オリンピック関連商品に直接関わっていることを知られたくないと表明している。
●日本国民:
・ドイツ日本研究所のバーバラ・ホルトス副所長(ドイツ人社会学者)は、“(予算大幅超過やCOVID-19蔓延の脅威等より)日本経済と日本国民が最大の損失者だ”とコメントした。
・同副所長は、“オリンピック開催によって、持続性・多様性・違いも含めた全ての受け入れ等、日本にとって貴重な変化をもたらすかも知れないが、これら得とされる価値観は大会が終わった段階では評価できないことだ”と付言している。
・同副所長によると、ひとつの進歩は、ハイチ人と日本人のハーフの大坂なおみ選手(23歳)が、開会式の目玉である聖火台に聖火を灯す最終ランナーに選ばれたことだとする。何故なら、日本語が覚束ず、拠点が米国で、風貌も日本人らしくないにも拘らず、彼女がその大役を任されたからであるという。
<どちらとも言えないグループ>
●大会参加国:
・オリンピックの歴史にも詳しいデビッド・ワレチンスキー氏(73歳、米国人歴史学者・テレビコメンテイター)は、“ほとんどの参加国が、他のオリンピックのときと同様、獲得したメダルの数で東京大会を評価する”と辛らつなコメントをしている。
・同氏は、“例えば米国は、金メダルを50個も獲得すれば、誰もCOVID-19感染問題最中の大会開催のことを非難することはないだろう”とし、“何故なら、それが究極的な大会参加目的であるからだ”と付言した。
・なお、同氏はIOCについてもコメントしていて、“IOCは、何はともあれ東京大会が開催されてホッと一安心であろう”とした上で、“但し、直ぐ次にもっと大きな問題、すなわち(人権問題等を理由とした)ボイコット運動発生のリスクを抱えている北京冬季大会を控えていることから、IOCは息つく暇もないかも知れない”と言及している。
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