<ハイライト>(6月21日午後11時現在の感染者総数順)
●インド(印):ワクチン接種率促進のため、無償でのワクチン提供政策に転換。
●英国:夏至の日(6月21日)、ストーンヘンジ(注1後記)にCOVID-19感染防止ルールを無視した観光客が押し寄せたことから、当局が、同遺跡での日の出のライブ映像放映を中止すると発表。
●ポーランド:新規感染者数が急減し、直近16ヵ月での最低値を記録。
●インドネシア:COVID-19デルタ株(インドで発見された変異株)蔓延でついに感染者が200万人突破。
●フィリピン(比):米ファイザー製ワクチン4千万回分を手当て。ただ、超低温(-60~-80℃)での保管が必要な同ワクチンの地方への移送・保管設備に問題があり、綿密な対応が必要。
●オーストラリア(豪):英国アストラゼネカ製ワクチン接種後2人が死亡。今年のCOVID-19感染死亡者より多いが、保健当局は同社製ワクチン接種促進方針を堅持。
●香港:行政長官、ワクチン接種済みの旅行者(特に中国本土)の入国制限緩和。
●ニュージーランド(NZ):同国で唯一認可している米ファイザー製ワクチンについて、米国・欧州に続いて、12歳以上の子供へのワクチン投与を承認。
<インド>(感染者2,994万4,783人、死者38万8,335人、致死率1.3%)
・インドではこれまで、州政府や私企業が提供ワクチンを有償手配する必要があったが、この程、中央政府が方針転換をして、州政府宛には無償で提供する政策に変更。ただ、これは全体の75%で、残りの25%となる私企業宛は自己手配で変わらず。
・政策変更の背景は、直近の新規感染者が5万3,256人、死者が1,422人と直近3ヵ月で最低となり減少傾向が続いていて余裕が出てきたこと、及びワクチン手配の大幅遅延等中央政府に対する非難の声が強まっていたこと。
・インドにおけるワクチン接種率は、全人口14億人に対して僅か5%程度。専門家は、今回の政策変更で、接種率の大幅向上に期待。
・なお、首都ニューデリー含めた多くの都市や州で、6月21日以降の都市封鎖緩和措置を実施。
<英国>(感染者463万40人、死者12万7,976人、致死率2.8%)
・イングリッシュ・ヘリテージ(EH、注2後記)は、COVID-19感染問題が継続していることから、昨年に続いて今年も夏至の日(6月21日)のストーンヘンジ(注2後記)での日の出のライブ映像を放映する予定であったが、これを急遽中止すると発表。
・何故なら、テレビ報道等によって、“EHから出されていた、日の出時に遺跡を訪問しないようにとの要請に反して十数人の観光客が遺跡内に侵入していたこと”が判明したため。
・EHは、COVID-19感染防止ルールを無視した行動を取ったこれらの観光客に“大いに失望”したとし、彼らの無謀な行動が多くの人々を危険にさらす、と糾弾。
・COVID-19問題発生前までは、夏至の日に数万人の人々がストーンヘンジを訪れて、一年で昼が一番長い日を祝福(編注;日本より日照時間の短い英国や北欧では、夏至の祭りが旺盛)。
<ポーランド>(感染者287万8,840人、死者7万4,829人、致死率2.6%)
・当局発表では、6月21日の新規感染者数73人、死者が僅か1人と急減。
・これは、2020年3月初め以来16ヵ月振りの最低値。
・同国は、米ファイザー、モデルナ、ジョンソン&ジョンソン、英国アストラゼネカ製のワクチンを確保していて、ワクチン接種率は、全人口3,800万人のうち1,120万人(29%)と高レベル。
<インドネシア>(感染者200万4,445人、死者5万4,956人、致死率2.7%)
・保健省は6月21日、一日の感染者が最多となる1万4,536人を記録し、感染者総数が200万人突破と発表。これは、東南アジア諸国では死者数とともに最多記録。
・当局は、先月のイド・アル=フィトル(ラマダン終了を祝う大祭)時の旅行、及びCOVID-19デルタ株の蔓延が主要因と説明。
・直近数週間での感染者急増で、ジャカルタ等大都市の病院の80%が満床状態。
・そこで当局は、ワクチン接種者が全人口2億7千万人(世界第4位)に対して僅か1,230万人(接種率4.6%)であることから、来月までに一日当たりの接種数を100万人に引き上げるべく尽力。
<フィリピン>(感染者136万4,239人、死者2万3,749人、致死率1.7%)
・政府はこの程、米ファイザーから同国で最大となる4千万回分のワクチン提供を受けることで合意。
・ワクチン手当てに奔走したカリート・ガルベス氏(58歳、元陸軍大将)は、資金はアジア開発銀行(ADB、注3後記)他金融機関からの融資で賄ったとし、8月には入荷が始まると表明。
・ただ、同社ワクチンは超低温(-60~-80℃)での保管が必要であるため、特に特別な保管庫・移送設備・移送車両等を有しない地方では取り扱いに問題。
・なお、フィリピンはこれまで、海外5製薬会社から1億1,300万回分のワクチンを買い付けることで合意していて、更に、国連主導のCOVAXファシリティ(注4後記)の下で年内に4,400万回分のワクチン入手予定。
<豪州>(感染者3万356人、死者910人、致死率3.0%)
・政府は6月21日、英国アストラゼネカ製ワクチン接種後2人が死亡し、今年のCOVID-19感染死亡者より多い結果となっているが、同社製ワクチン接種を継続するよう通達。
・同国のポール・ケリー主席医務官(2020年6月就任の公衆衛生医・疫学者)は6月21日、世界では依然2回目に1回目と異なるワクチン接種した場合の安全性・有効性の治験がないことから、2回目もアストラゼネカ製ワクチンを接種するよう各州知事に要請。
・同国では4月、旅先で感染した80歳の旅行者が帰国後に死亡したが、4月に48歳の女性、また、先週52歳の女性の合計2人がワクチン接種後の血栓症で死亡。
・なお、アストラゼネカ製以外で認可されているのは米ファイザー製のみで、米モデルナ製が目下認可申請中。
<香港>(感染者1万1,890人、死者210人、致死率1.8%)
・林鄭月娥行政長官(キャリー・ラム、64歳)は6月21日、ワクチン接種済みの旅行者(中国本土含めた低感染率国)の入国制限を6月30日から緩和すると発表。
・目下、入国者に7~21日間の隔離を義務付けているが、隔離場所のホテル等の確保が困難となってきたことからの対応。
・但し、入国14日前にワクチン接種を受けていること、抗体を持っていることを証明する血清試験を受けていること、かつ、入国時の検査で陰性であることが付帯条件。
<NZ>(感染者2,720人、死者26人、致死率1.0%)
・メドセイフ(1981年設立のNZ保健省配下の医療規制機関)は6月21日、同国で唯一認可している米ファイザー製ワクチンについて、米国・欧州に続いて、12歳以上の子供へのワクチン投与を承認。
・同国はこれまで、16歳以上の子供へのワクチン投与を認可・実施済み。
・同国のジャシンダ・アーダーン首相(40歳、2017年10月就任)は、これで更に26万5千人の子供たちへのワクチン投与が可能となると歓迎し、更に、年内に全国民にワクチン投与を完了させる計画に変更はないと表明。
(注1)ストーンヘンジ:英国南部ソールズベリー平野のほぼ中央にある巨石記念物。世界各地にあるストーン・サークルのうち最も著名な遺跡で、20世紀に入ってからの数次にわたる調査で年代や構築状況を解明。1986年に巨石記念物であるエーブベリー、関連する遺跡群とともに世界文化遺産として登録。夏至の日に、ヒール・ストーンと呼ばれる高さ6mの玄武岩と、中心にある祭壇石を結ぶ直線上に太陽が昇ることから、設計者には天文学の高い知識があったのではないかと考えられている。
(注2)EH:歴史的建造物を保護する目的で英国政府により、1983年に設立された組織。ストーンヘンジのような考古学遺跡から、アイアンブリッジなどの産業遺産に至る広範囲にわたる建造物を扱っている。対象の保護、助言、登録などが目的。
(注3)ADB:アジア・太平洋における経済成長及び経済協力を助長し、開発途上加盟国の経済発展に貢献することを目的に設立された国際開発金融機関。1966年設立で本部はマニラ。歴代総裁は全て日本人が務めていて、現在は元財務官の浅川雅嗣氏(63歳、2020年1月就任)。
(注4)COVAXファシリティ:COVID-19ワクチンへの公平なアクセスを目的としたグローバルな取り組み。2020年に発足。
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