6月15日付
『AP通信』:「バイデン政権、駐イスラエル、駐メキシコ大使候補を指名」
ジョー・バイデン大統領は6月15日、外交経験等豊富な高官を中心に9人の大使候補を指名したと発表した。
同大統領は昨年、大統領に選ばれた場合、大使やその他重要ポストの候補者について、政治的貢献度等に基づいて行う「政治任用制(注1後記)」を全く採用しないとは言わないものの、あくまで“適材適所の人材”を選ぶとし、“決して自身への貢献度で選ぶことはない”と発言していた。...
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6月15日付
『AP通信』:「バイデン政権、駐イスラエル、駐メキシコ大使候補を指名」
ジョー・バイデン大統領は6月15日、外交経験等豊富な高官を中心に9人の大使候補を指名したと発表した。
同大統領は昨年、大統領に選ばれた場合、大使やその他重要ポストの候補者について、政治的貢献度等に基づいて行う「政治任用制(注1後記)」を全く採用しないとは言わないものの、あくまで“適材適所の人材”を選ぶとし、“決して自身への貢献度で選ぶことはない”と発言していた。
今回発表された候補者の多くは、国務省における外交担当等、実務経験者が指名されており、ドナルド・トランプ前大統領(75歳)が頼った「政治任用制」に基づく指名実績との差別化を際立たせたものと言える。
因みに、米外交局協会(1924年設立のNPO法人)によると、トランプ前大統領の「政治任用制」に基づく指名者の割合は43%で、ジョージ・W.・ブッシュ政権(2001~2009年)の31.8%、バラク・オバマ政権(2009~2017年)の30.5%に比べて突出している。
ホワイトハウスは、バイデン政権での「政治的任用制」に基づく指名割合は約30%となろうとコメントしている。
なお、今回発表された候補者は以下であるが、全て議会上院の承認を得る必要がある。
●トマス・ナイズ(59歳):駐イスラエル大使。オバマ政権下で国務省副長官(2011~2013年)、また、モルガン・スタンレー(1924年設立の世界的金融グループ)の元最高執行責任者(2005~2010年)。
●ケン・サラザール(66歳):駐メキシコ大使。オバマ政権下の内務長官(2009~2013年)、元コロラド州司法長官(1999~2005年)、元上院議員(2005~2009年)。
●サリー・サレンバーガー(70歳):国際民間航空機関(ICAO)米国代表理事(1947年設立の国連経済社会理事会の専門機関、本拠はカナダ・モントリオール)。元米空軍パイロット。民間航空パイロット時代、2009年1月に発生したUSエアウェイズ1549便の不時着水事故において、冷静な判断でハドソン川への不時着水を成功させ、なおかつ乗客乗員の命を全員救出した機長として知られ、「ハドソン川の英雄」と呼ばれる。
●ジュリアン・スミス:北大西洋条約機構(NATO、1949年設立)常駐代表。バイデン氏の副大統領時代の国家安全保障担当副顧問(2012~2013年)。現在、アントニー・ブリンケン国務長官(58歳)上級顧問。
●ジュリー・チャン:駐スリランカ大使。元駐カンボジア公使(2014~2018年)。その他、コロンビア、ベトナム、タイ、日本、中国にも駐在。現在、国務省西側諸国外交担当補佐官。韓国語・日本語・スペイン語・クメール語が堪能。
●シャロン・クロマー:駐ガンビア大使(アフリカ西端)。現在、米国際開発庁(1961年設立の非軍事海外援助機関)の駐ガーナ代表。
●トロイ・ダミアン・フィットレル:駐ギニア大使(アフリカ西端)。現在、国務省西アフリカ諸国外交局長。元駐エチオピア・モーリシャス公使。
●マーク・オストフィールド:駐パラグアイ大使(南米中央部)。現在、国務省オンブスマン(注2後記)。国務省で外交関係担当三十有余年のキャリア。
●シンシア・アン・テルズ:駐コスタリカ大使(中米南部)。現在、カリフォルニア州立大学デビッド・ゲフィン医学校(1951年設立)精神医学科臨床教授。ヒスパニック系精神医療に三十有余年従事。スペイン語が堪能。
(注1)政治任用制:大統領や首相が自分の判断で、行政府の要職に官僚や民間人を任命すること。専門的な政策能力や政治的忠誠心などに基づき任免する制度であるが、情実人事の色合いが濃い。
(注2)オンブスマン:行政機関を外部から監視し、行政機関による国民の権利・利益の侵害に対する調査及び救済の勧告を図る公職。1809年、スウェーデンで成立した議会オンブスマン制度が起源。スウェーデン語で“代理人”の意味。
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