米CNNテレビが14日、中国広東省台山市の台山原子力発電所で、原子炉の冷却系で放射能が異常に高くなっていると報じた。原発の設計と建設に関わったフランス原子炉メーカーのフラマトーム社と中国当局は、「認められた安全性の範囲内で稼働している」と報告している。一方フラマトームの親会社EDFは、プラント運営会社の緊急取締役会を招集した。
仏金融紙
『レゼコー』によると、米CNNテレビの報道を受けて、フランス最大の電力会社EDFは、「中国の台山原子力発電所の1号機の一次回路で、特定の希ガスの濃度が上昇しているとの情報を得た」ことを認めた。現段階ではその原因や影響は不明だが、EDFが開発・販売しているフランスの原子力技術「EPR」に打撃を与える可能性がある。台山原子炉1号機は、2号機とともに、世界で2基しか稼働していないEPR技術の原子炉の1つである。
想定される原因としては、原子炉を冷却するための1次回路で燃料棒に「漏れ」が発生している可能性があることだ。燃料を冷却するための水に放射能が含まれているということは、水漏れしないはずのウランを含む金属製の被覆材が、放射性元素を通してしまっていることが推測される。
このような現象は、フランスの原発でも過去に発生しており、安全対策面で予想されているものだが、中国では数ヶ月前からこの問題が継続している。台山原発は、EDFと中国広核集団(CGN)による合弁事業で合弁会社TNPJVCが運営している。EDFは、2020年10月の時点で燃料被覆材の「欠陥の疑い」について知らされていたという。
EDFは、「12月に事業者と中国当局との間で、一次回路における漏れが確認された希ガスの最大許容値についての対話が行われた」と報告している。複数の関係者によると、観測されたガスのレベルはフランスの安全基準を超えており、フランスであれば原子炉の予防的稼働停止措置が取られる場合があるという。
しかし、中国では基準が緩いため、稼働停止は予定されていない。EDFとCGNは、発電所はガス漏れの問題は「環境汚染」にはつながっていないという見解を示しており、フランスの放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)も14日、「台山原発は事故が発生している状態ではない」と発表した。
しかし、仏日刊紙『ル・パリジャン』によると、EDFの子会社であり、台山原発に燃料を供給しているフラマトームは、米国エネルギー省に宛てに「原子炉を正常な状態に戻すために必要な技術データや支援を移転する許可」を緊急に求める書簡を送り、「中国の政府機関は、たとえ漏れがあっても工場の操業を続けることができるよう、基準を緩和している。」と訴えている。同紙は、フラマトームがアメリカに通報したのは、介入を要請するほどの危機的状況にあると判断したからではないかと報じている。
CNNによると、米国はフラマトームから連絡を受けた後にフランス当局と連絡を取ったが、フランス原子力委員会(CEA)とフランス原子力安全局(ASN)はまだコメントを出していないという。ウィーンに本部を置く国際原子力機関(IAEA)は、「現段階では放射性物質の事故が発生したという兆候はない」と発表している。
一方EDFは、原子力発電所を運営するTNPJVCに連絡を取り、「専門知識を提供する」としている。また、「データと決定事項をすべて提示するよう、TPNJVCに臨時取締役会を開催することを要請した」としている。
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