フランスのパリ首都圏では、新型コロナウイルスによる経済不安定化により、ホームレスの避難所が飽和状態となっている。寒い冬の間、宿泊場所を必要とする人に対して、ホテルの活用が広がっている。費用を負担している国にとっては重たい負担となっている。
仏ニュース誌
『Valeurs Actuelles』によると、2015年には3万5000人のホームレスがパリ地域のホテルに宿泊していたのに対し、昨年10月には1日あたりの宿泊者数が5万3000人を超えていた。
パリ首都圏で、困窮している人を受け入れている施設は、現在13万人ほどを受け入れているという。しかしそのうちの40%近くの受け入れ施設がホテルとなっている。公営住宅や緊急宿泊施設が飽和状態にあるために、ホテルの部屋を活用しているのだ。...
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仏ニュース誌
『Valeurs Actuelles』によると、2015年には3万5000人のホームレスがパリ地域のホテルに宿泊していたのに対し、昨年10月には1日あたりの宿泊者数が5万3000人を超えていた。
パリ首都圏で、困窮している人を受け入れている施設は、現在13万人ほどを受け入れているという。しかしそのうちの40%近くの受け入れ施設がホテルとなっている。公営住宅や緊急宿泊施設が飽和状態にあるために、ホテルの部屋を活用しているのだ。人道的緊急サービスを提供しているNPO「Samu Social de Paris 」によると、ホテルの夜の予約の需要が非常に高く、利用可能な宿泊場所の確保に追われているという。そのため、例えば家族用など、ニーズに適した宿泊施設を用意することが難しい状況となっている。
宿泊の平均費用は、ホテルの場所に応じて1日18ユーロ(約2300円)から21ユーロ(約2700円)の間で変動するという。この費用は国が負担しているため、年間で約3億ユーロ(約380億円)の費用が国に請求されていることになる。
仏政治ニュース誌『ルポワン』によると、新型コロナウイルスの影響で観光客数と出張者数が減少したことで、NPOのSamu Socialは、ホテルを通してより多くの宿泊先を確保できるようになったという。ホテルの経営者も、ホームレスを受け入れることで宿泊客の激減による収入の損失を抑えることが出来るため、双方にとって有益をもたらす解決策となっている。
さらに政府は多くの人にメリットをもたらす解決策を模索しているという。家主の中には、困っている人を受け入れる団体にマンションの一室などを貸し出している。国が支払いを保証する代わりに家賃の上限を求めることができる。しかし、このタイプの「賃貸」は依然として限定的となっている。このような賃貸は、イル・ド・フランス地域圏では5,846戸にとどまっている。
仏ラジオ放送局『ヨーロッパ1』によると、受け入れ施設の不足の背景として、パリ首都圏では公営住宅の新築数が毎年減少していることが挙げられる。2020年は2016年に比べて4割減っている。1年近く続いているコロナウイルスのパンデミックにより、状況は悪化の一途をたどっているという。2020年には21,000戸の公営住宅が建設されたが、地域当局が設定した目標を達成するためには37,000戸が必要とされる。専門家らは、住宅に関する本格的な社会政策が必要であると警鐘を鳴らしている。
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