オーストラリア(豪州)は、数年に及ぶ中国系豪州人のスパイ活動や、今年に入ってからの新型コロナウィルス(COVID-19)初期段階での隠蔽工作について中国を厳しく糾弾している。そしてこの報復措置であるかのように、中国は豪州産牛肉の輸入停止等で豪州側をいたぶってきている。かかる背景から、既報どおり、豪州政府は、日米印3ヵ国の共同海上演習への参加等によって中国包囲網強化に打って出ている。そしてこの程、自国の富国強兵も必須として、今後10年間で国防費を40%増加させて軍事力を増強していくと発表した。
7月22日付
『SOFREP(特殊任務レポート)』軍事専門オンラインニュース(2012年創刊):「豪州、中国の脅威に対抗するため国防費40%増額」
豪州政府は、インド太平洋地域において中国との緊張が高まっていることから、これに対抗すべく今後10年間で国防費として1,860億ドル(約19兆9千億円)、従来より40%増額して拠出すると発表した。
スコット・モリソン首相が先週、豪州国防士官学校(ADFA、注後記)での演説の中で明らかにしたもので、中国と名指しはしなかったものの、豪州が現在、第二次大戦勃発時以来深刻な状況に置かれていると強調した。...
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7月22日付
『SOFREP(特殊任務レポート)』軍事専門オンラインニュース(2012年創刊):「豪州、中国の脅威に対抗するため国防費40%増額」
豪州政府は、インド太平洋地域において中国との緊張が高まっていることから、これに対抗すべく今後10年間で国防費として1,860億ドル(約19兆9千億円)、従来より40%増額して拠出すると発表した。
スコット・モリソン首相が先週、豪州国防士官学校(ADFA、注後記)での演説の中で明らかにしたもので、中国と名指しはしなかったものの、豪州が現在、第二次大戦勃発時以来深刻な状況に置かれていると強調した。
同首相は、“COVID-19後の社会は、不況に襲われるだけでなく、より危険で無秩序な事態となることから、それに十分対応できるよう準備する必要がある”と言及している。
また、同首相は、第二次大戦以来組してきた米国に対して、有事の際に援軍等余り頼ることはしない意向を示した。
ただ、武器の調達で米国に頼ることは変わらずで、この程米海軍から、射程距離370キロメートル(230マイル)の長距離対艦ミサイルAGM-158Cを約8億ドル(約856億円)で購入する。
同ミサイルは現有ミサイルより射程距離が倍になるとするが、中国の中距離弾道ミサイル東風-26(トンフェン)の射程距離4,000キロメートルに遠く及ばない。
なお、豪州国立大学(1946年設立の豪州唯一の国立大)国家安全保障学部長のローリィ・メドカフ教授は、中国拡大戦略を推進する同国政府に対抗していくため、独自戦略を以て安全保障を確立していこうとするものだと評価している。
同教授は、“何故なら中国は、COVID-19感染流行問題をも利用して、自国の影響力を拡大していこうとしているから”だと言及した。
そして同教授は、“中国が南太平洋から豪州東海岸まで勢力を広げようと画策しているので、これに備えるため豪州は、高性能レーダー設備、更には独自の衛星システムを構築することも検討している”と解説している。
かかる動きに対して中国海軍評論家の李潔(リー・チエ)氏は先週、中国国営メディア『環球時報』に寄稿して、“中国は豪州を挑発する意向は更々ないが、中国としては豪州の挑発を全く恐れることはない”とした上で、“もし豪州軍が中国を挑発するならば、中国軍は
いつでも対応する準備は整っている“と強調している。
一方、直近でヒマラヤ山脈において中国と国境問題で戦闘を繰り広げたばかりのインドは、同じく中国から圧力をかけられている豪州と連携することが必要と判断し、二国間軍事協力協定を締結している。
(注)ADFA:豪州の陸軍・海軍・空軍の士官候補生を訓練し大学レベルの高等教育を施すために1986年に設立された士官学校。豪州国防軍、更に豪州国防大学の傘下。キャンパスは連邦首都キャンベラにある。本校の設立目的は、豪州国防軍の将校に必要とされる基礎的な属性、知性および技能をもった高等教育修了者を供給することにより、豪州に奉仕すること。
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