11月10日付米
『AP通信』:「豪州政府、温室効果ガス削減政策のために7億3,800万ドル投資すると宣言」
豪州のスコット・モリソン首相は11月10日、二酸化炭素回収貯留技術開発含めた温室効果ガス削減政策に10億豪州ドル(7億3,800万ドル、約834億円)を投じると高らかに宣言した。
政府が出資するのは5億豪州ドル(3億6,900万ドル、約417億円)で、残りは民間からの支援に期待していると付言した。...
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11月10日付米
『AP通信』:「豪州政府、温室効果ガス削減政策のために7億3,800万ドル投資すると宣言」
豪州のスコット・モリソン首相は11月10日、二酸化炭素回収貯留技術開発含めた温室効果ガス削減政策に10億豪州ドル(7億3,800万ドル、約834億円)を投じると高らかに宣言した。
政府が出資するのは5億豪州ドル(3億6,900万ドル、約417億円)で、残りは民間からの支援に期待していると付言した。
これに先立つ11月初め、グラスゴー(スコットランド)で開催されたCOP26において、モリソン首相が発表した2030年までの温室効果ガス削減目標値が不十分だとして、参加国から厳しい批評を受けていた。
そこで上記声明は多分に、来年5月までに予定されている総選挙で与党・保守連合の信任を得るためと考えられる。
政府側の基金の母体となるのは、国営のグリーンバンク(クリーン・エネルギーに投資を行う金融機関)のクリーン・エネルギー・ファイナンス社(CEFC、2012年設立)であるが、適用法を改定する必要がある。
何故なら、現行法ではCEFCが投資できるのは風力・太陽光発電等短期間で結果のでる技術開発に限られており、二酸化炭素回収貯留等の長期新技術開発への投資は許容されていないからである。
産業・エネルギー・排出削減担当のアンガス・テイラー大臣(55歳)は、2050年までにカーボンニュートラル(注後記)を達成するため、当該法を改定して新規投資に取り組んでいくことが必要だと訴えた。
同大臣は豪州メディア『ABCニュース』のインタビューに答えて、“気候変動問題に関し、多くの人が産業を締め出せばよいと安易に考えがちである”とした上で、“しかし、豪州政府は、(産業を締め出すのではなく)温室効果ガスを削減する新技術を開発することから始める考えである”と言及している。
これに対して、中道左派の野党・労働党は、政府が、新規の投資であって、かつ、クリーン・エネルギー開発以外には支出しないと約束するならば、上院での当該法改定に賛同することも検討すると表明した。
労働党の気候変動・エネルギー問題担当のクリス・ボーウェン下院議員(48歳)は、“当該資金が真に新たに創出されるものだとするなら、与党の改定法案詳細を検討してもよい”とコメントしている。
なお、モリソン首相は前日の11月9日、2030年までに豪州国内で販売される電気自動車やプラグイン・ハイブリッド車を全体の30%までに引き上げるとの目標達成のために2億5千万豪州ドル(1億8,500万ドル、約209億円)を投じるとも宣言していた。
ただ、豪州は、世界最大の石炭・天然ガス輸出国であることもあって、同国内における電気自動車の比率は僅か2%にも満たない。
更に、豪州は、人口1人当りの温室効果ガス排出量が先進国中上位に位置する程環境問題が深刻な国である。
(編注;人口1人当りの温室効果ガス排出量先進国ランキングは、①米国15.1トン、②豪州14.5トン、③韓国11.7トン、④ロシア11.0トン、⑤日本8.5トン、⑥ドイツ8.4トン、⑦中国6.8トン)
一方、二酸化炭素回収貯留技術では豪州が先行していて、ウェスターンオーストラリア州北西部のバロー島にあるシェブロン・ゴーゴン天然ガスプロジェクト施設(2017年完成)は世界最大規模の二酸化炭素回収貯留施設である。
同施設では、2019年の操業開始以来回収された二酸化炭素が500万メトリックトン(米方式で550万ショートトン)に上っている。
しかし、同プロジェクト最大株主兼運営会社のシェブロン(1879年設立の国際石油資本最大手)が今年7月、直近1年間では目標値に対して80%程度の約400万メトリックトン(米方式440万ショートトン)しか、同施設で発生した二酸化炭素を回収・貯留できなかったと発表している。
同日付豪州『SBSニュース』(1975年開業の公共放送局):「専門家、スコット・モリソン首相に対して“未確認の”二酸化炭素回収貯留技術に頼り過ぎないようにと警告」
モリソン首相は11月10日、温室効果ガス削減政策の一環で、民間からの支援金含めて合計10億豪州ドルを二酸化炭素回収貯留技術等の開発に充てると発表した。
しかし、豪州国立大学(1946年設立の唯一の国立大)傘下の気候変動問題研究学院長のマーク・ハウデン教授は、当該二酸化炭素回収貯留の大規模運用はまだ効果が立証されていないことから、“巨額費用がかかり”かつ“長期的な研究開発が必要な”当該技術への投資は慎重になるべきだと主張した。
同教授は『SBSニュース』のインタビューに答えて、“二酸化炭素回収貯留技術開発の歴史はまだ浅いこともあって、豪州における当該プロジェクトが他国での失敗例を如何に改善できているのか等、十分納得がいくものでなければならないので、(そこに巨額投資することが)果たして価値があるのか等厳しくみていく必要がある”と警告している。
(注)カーボンニュートラル:環境化学の用語の一つ。何かを生産したり、一連の人為的活動を行った際に、排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量である、という概念。個人・企業・政府等の社会の構成員が、自らの責任と定めることが一般に合理的と認められる範囲の温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、「排出権クレジット」を購入すること、または他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部を埋め合わせること。
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国際オリンピック委員会(IOC)副会長のジョン・コーツ氏が、豪州オリンピック委員会(AOC)会長に再選された。任期切れ直前に、AOC組織内のパワ・ハラ問題等が大きく取り上げられたことから、再選されるか不安視されていたが、何とか対立候補の元金メダリストを破ったもの。コーツ氏は、2020年東京オリンピック・パラリンピックIOC調整委員会委員長であり、森喜朗東京オリンピック組織委員会会長と親交が深いことから、競技場選定や過剰な総コスト問題で何かとIOCとの要調整事項が引きも切らない東京オリンピック組織委員会にとって、同氏の再選(すなわちIOC委員留任)は朗報であろう。
5月6日付
『AP通信』:「コーツ氏、AOC会長に再選」
IOC副会長のジョン・コーツ氏は5月6日、AOC会長の選挙で再選された。コーツ氏は、これまで1990年に就任以来30年近く、対立候補がいなかったため同会長職に留まっていたが、今回は、フィールド・ホッケーの元金メダリストのダニー・ロシュ女史が立候補したため、コーツ氏にとって初めての選挙戦となったもの。
コーツ氏は、2020年東京オリンピック・パラリンピックIOC調整委員会委員長として、同大会の日程や総経費などを評価・調整する任に当ってきたが、もしAOC会長に再選されなかった場合、この職も解かれることになっていた。
今回の会長選に当っては、AOCの元業務執行責任者だったフィオナ・ドゥ・ジョン女史から、コーツ氏右腕のメディア担当理事のマイク・タンカード氏による組織内のパワ・ハラ問題が訴えられたり、対立候補のロシュ女史からは、コーツ氏の年俸75万豪州ドル(56万5千ドル、約6,330万円)は取り過ぎで、自身は年俸10万豪州ドル(7万5千ドル、約840万円)で十分だとのアピールもあったが、結果は58票:35票の大差であった。但し、AOC委員の全会一致での再選でなかった以上、今後、コーツ氏の組織運営手法のみならず、同氏の年俸についても見直されることになろう。
同日付英
『ザ・ガーディアン』紙:「ジョン・コーツ氏、AOC会長選中の非難で傷ついたAOCの信頼性は“修復可能”と表明」
AOC会長に再選されたコーツ氏は、選挙戦中に対立候補他から浴びせられた非難によって、AOCの信頼性が損なわれたものの、“十分修復可能”だと発言した。
対立候補のロシュ女史からは、AOC組織の改革(指示命令系統の透明性等)の必要性に加えて、会長職の高額年俸の見直しについてもアピールされていた。
5月7日付フランス
『フランス24』オンラインニュース(
『AFP通信』配信):「豪州選手会、コーツ氏にAOC改革を要求」
コーツ氏はAOC会長に再選されたものの、支持基盤となった豪州選手会からは、同会のスティーブ・フッカー会長の声明にあるとおり、AOCの組織改革を断行するとの約束を果たすようにとの条件を付けられた。
なお、コーツ氏は、今回が最後の会長職(任期4年)で、2020年の東京オリンピック後には退任すると公約した。
同日付豪州
『SBSニュース』:「コーツ氏、スポーツ界でのわだかまりを修復したいと発言」
コーツ氏は再選後、会長選挙戦中に対立することになった豪州スポーツ委員会(ASC)のジョン・ワイリィ会長とのわだかまりを修復したいと表明した。ワイリィ氏は、AOC会長選の対立候補だったロシュ女史がASC理事でもあることから、陰で支援していたとみられていた。
なお、コーツ氏とワイリィ氏は、今年初めのスポーツ界関係者の集会で、前者が後者を“嘘つき”と非難して以来、犬猿の仲となっていた。
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