国連貿易開発会議(UNCTAD)は4日、米中貿易戦争により両国は利益を得られない一方、他の国や地域、特に欧州連合(EU)が大きな恩恵を受けると予想する報告書を公表した。日本も輸出額が200億ドル(約2兆2,000億円)超増え、漁夫の利を得るという。
『AFP通信』『RTE』『ロイター通信』などが報じた。UNCTADの同報告書「貿易戦争:痛みと利益(The Trade Wars: The Pain and the Gain)」は、既に米中両国が互いに課した報復関税に加え、米国が3月1日に中国からの輸入品に対して発動を予定している大幅な追加関税についての影響について考察している。
報告書は「2国間の関税は世界の競争のあり方を変え、関税の影響を直接受けない国々で事業を行う企業に利益をもたらすようになる。...
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『AFP通信』『RTE』『ロイター通信』などが報じた。UNCTADの同報告書「貿易戦争:痛みと利益(The Trade Wars: The Pain and the Gain)」は、既に米中両国が互いに課した報復関税に加え、米国が3月1日に中国からの輸入品に対して発動を予定している大幅な追加関税についての影響について考察している。
報告書は「2国間の関税は世界の競争のあり方を変え、関税の影響を直接受けない国々で事業を行う企業に利益をもたらすようになる。」と分析している。その上でEUが貿易戦争の最大の勝者となり、輸出額が約700億ドル(約7兆7,000億円)増えると予測した。
昨年、トランプ米大統領が米中間の貿易不均衡について不満を示し、貿易戦争に発展する事態になって以降、両国は3,600億ドル超の製品に対し報復関税を課している。両国は対立の激化を避けるため、先週米ワシントンで通商協定に関する協議を行い、交渉は進展していると評価したが、3月1日までに最終合意に至らなければ、米国はさらに2,000億ドル相当の中国製品に対し、現在10%の関税を25%に引き上げるとしている。
UNCTADの国際貿易部門の責任者であるパメラ・コーク・ハミルトン氏は声明で、「2国間の関税は国内企業の保護には余り有効でない。」と指摘し、さらに「米中の報復関税の応酬によって両国の貿易が縮小し、他国の貿易量がこれに取って代わる。」と説明した。
報告書は、「米中の緊張関係から最も利益を受けると思われるのは、競争力があり、米中企業に取って代わるほどの経済力がある国々だ。」として、EUは中国の対米輸出額の内の約500億ドル、米国の対中輸出額の約200億ドルを得ると見積もっている。さらに日本、メキシコ、カナダも貿易戦争により、それぞれ200億ドル超輸出額が増えるとした。
UNCTADは、貿易戦争は結局、世界規模では多くの負の影響をもたらし、一部の製品の市場ではこれが顕著に表れるとしている。報告書は大豆市場を例に挙げ、米中の報復関税の応酬で、ブラジルが中国への大豆の主要輸出国になったことを説明した。しかし、貿易戦争の成り行きが不透明なことから、ブラジルの大豆生産者は、増産するなどの投資判断を下せないでいる他、国内での価格が値上がりする事態になっているという。
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