現在は砂糖以外にも様々な甘味料が存在する。購入する食品の原材料をくまなくチェックすることは少ないかもしれない。しかし、甘味料業界の中では熾烈な争いが繰り広げられており、アメリカでは砂糖業界とトウモロコシを使った甘味料(ブドウ糖加糖液糖)を製造する業者の間でも、互いに訴訟が提起されていた。この険悪な状況を打開すべく、この度両者間で法廷外での和解が結ばれたことが明らかになった。各メディアは以下のように報じている。
11月22日付
『OTC アウトルック』(米経済紙)は砂糖製造業者とトウモロコシを用いた甘味料(ブドウ糖加糖液糖)を製造する業者らの間で、法廷外での和解が成立し、争いに終止符が打たれることになったと報じている。
今回の和解は、ロサンゼルス連邦裁判所に提起された裁判の審理過程で合意に達したものであり、同記事はどちらの業界にとってもプラスとなるであろうとしている。法律の専門家らは今回のように法廷外での和解により訴訟が終了することにより、双方の業界への影響が抑えられるであろうと予測しているという。...
全部読む
11月22日付
『OTC アウトルック』(米経済紙)は砂糖製造業者とトウモロコシを用いた甘味料(ブドウ糖加糖液糖)を製造する業者らの間で、法廷外での和解が成立し、争いに終止符が打たれることになったと報じている。
今回の和解は、ロサンゼルス連邦裁判所に提起された裁判の審理過程で合意に達したものであり、同記事はどちらの業界にとってもプラスとなるであろうとしている。法律の専門家らは今回のように法廷外での和解により訴訟が終了することにより、双方の業界への影響が抑えられるであろうと予測しているという。今やどちらの甘味料も広く食品に使われており、どちらかに軍配が上がると、片方に大打撃を及ぼす恐れがあるためである。
今回の訴訟に関して、砂糖製造業者らはミネソタ州に拠点を置くアーチャー・ダニエルズ・ミッドランドや、同じくミネソタ州のカーギルといった「穀物メジャー」(穀物の国際的な流通に大きな影響をもつ商社群)に対し、15億ドル(約1840億円)の支払いを求めて裁判を起こしていたという。その内容としては、「穀物メジャー」が前出のブドウ糖加糖液糖を「コーンシュガー」と名称を変更すべくキャンペーンを繰り広げた際に「砂糖は砂糖。お腹に入ってしまえばどちらも一緒」と謳ったことで、売り上げが激減したためだという。これに対して「穀物メジャー」も砂糖製造業者に対して、ブドウ糖加糖液糖が「コカインと同様中毒性がある」との間違った情報を流したとして5億3000万ドル(約650億円)の賠償を求めて訴訟を提起していたという。
両業界では1970年代にブドウ糖加糖液糖が砂糖に代わる、より安価な甘味料として売り出されて以来、熾烈なシェア争いが繰り広げられてきたという。今回の和解の内容面や金銭の授受に関しては一切明らかにされないという。
11月21日付
『ザ・エポック・タイムズ』(米に拠点を置く在外中国人向け新聞)は砂糖とブドウ糖加糖液糖の歴史と両者の実際の成分の違い、訴訟の傾向について分析を加えている。
当初の売り上げに比べて2000年代半ばあたりからブドウ糖加糖液糖は肥満といった健康問題に関連付けられ、売り上げが落ちてきていたという。そんな折、ブドウ糖加糖液糖のイメージ向上のため「穀物メジャー」がアメリカの食品医薬品局に対して呼び名を「コーンシュガー」と変えるべく働きかけたのだという。しかしながら当局はこの要請を却下し、砂糖こそが「個体で、乾質で結晶化により作られる食品であり、ブドウ糖加糖液糖のようなシロップ状のものはこれに含まれない」との決定を下したのだという。
もっとも、同記事は両者はほぼ成分は一緒である上に、両者とも人体で同じように代謝するという南カリフォルニア大学で薬理学および薬学の研究を行うクレメンツ氏のコメントを載せている。砂糖は蔗糖(しょとう)とも呼ばれ、成分の半分が果糖であり、もう半分がブドウ糖であるという。他方、ブドウ糖加糖液糖は55%が果糖であり、45%がブドウ糖なのだという。
今回の裁判の過程では陪審員がそれぞれどちらかの甘味料を支持するか意見表明することも提案されており、このまま議論がすすんでどちらか一方が勝者と決まることにより商品業界に大きな影響が出ることが懸念されていた。
食品の表示問題や広告問題に詳しい弁護士のハーリング氏はこの先、遺伝子組み換え食品やオーガニック食品などをめぐって同様の問題が起こりうるとしている。そして同氏は「これから販売活動を行おうとする会社は、宣伝文句が市場にどう受け取られるかだけでなく、訴訟問題に発展しないかまで気にかけて行動すべきだ」と語ったという。
今回の訴訟で砂糖製造業者側を担当した弁護士のラニエール氏は「今回の訴訟で、両者とも良きにつけ悪しきにつけ、大きなPRの機会を得た。両者ともが勝者、敗者になることなく持ちこたえたのだ」と語ったという。
同記事は7年前に起きた砂糖と「スプレンダ」と呼ばれる甘味料の訴訟を引き合いに出し、こちらも今回の訴訟と同様の結論が出ているとしている。「スプレンダ」との訴訟では同商品が「砂糖からつくられた砂糖と同じ味がする」と謳って売られている点をめぐり訴訟が提起され、和解の内容も公表されていないという。
白黒つけないことが対立する両者の共存のためであることは理解できるが、この先同様の問題が起こった時に、消費者の利益という大切な視点がないがしろにされることがあってはならない。
閉じる