2日夕刻、羽田空港で、新千歳発羽田行き日本航空(JAL)516便(エアバス350型)が、地震の被災地に物資を運搬する予定だった海上保安庁の機体(DHC8型)と滑走路上で衝突した。この事故で、海保機の乗員のうち機長を除く5人が死亡したが、JAL機の乗客が負傷者を出しながらも、全員脱出避難できたことが奇跡的だと報じられている。
1月2日付英
『Guardian』:「羽田空港で滑走路での衝突事故後、乗客の奇跡的救出」:
羽田空港の滑走路で海上保安庁の機体と衝突した日本航空の全乗客乗員が「奇跡的」な脱出に成功した。
海保機は元日の地震の救助物資を新潟へ運ぶ準備をしていた。通称「ダッシュ8」、デ・ハビランド・カナダ DHC-8に乗っていた海上保安庁の6人のうち5人は死亡。
元旅客機パイロットのロジャー・ホイットフィールド氏は、「まずはミラクルが起きたと言える。...
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1月2日付英
『Guardian』:「羽田空港で滑走路での衝突事故後、乗客の奇跡的救出」:
羽田空港の滑走路で海上保安庁の機体と衝突した日本航空の全乗客乗員が「奇跡的」な脱出に成功した。
海保機は元日の地震の救助物資を新潟へ運ぶ準備をしていた。通称「ダッシュ8」、デ・ハビランド・カナダ DHC-8に乗っていた海上保安庁の6人のうち5人は死亡。
元旅客機パイロットのロジャー・ホイットフィールド氏は、「まずはミラクルが起きたと言える。乗客全員を脱出させた方法が信じられない」とする。
機内の様子を写したソーシャルメディアの映像からは、衝突後、滑走路を走行中に、客席の窓から機体後方に煙が見えている。
生存者の話によると、避難準備をする乗員は、乗客に落ち着くよう促すが、荷物を手に取ろうとした人々に持ち物を置いていくように言った。その後、電気が消え、機内の温度が上がり始めたという。乗客は暗闇と濃い煙の中、懐中電灯を持った乗員に誘導された。
搭乗していた17歳のスウェーデン人でアントン・デイベ氏は、スウェーデン紙「アフトンブラデット」に、「機内全体に数分で煙が充満した。皆が下の階に降り、非常ドアが開かれそこから脱出した」と述べている。また、「キャビン内の煙は酷く、どこに向かっているかも分からないまま外に出た。混乱状態だった」とも述べている。
オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は、オーストラリア国籍の12人が搭乗していたが、全員怪我なく避難したと発表している。
1月3日付米『Business Insider』:「日本航空機の死者ゼロ、最新安全性能と秀逸な訓練」:
羽田空港で着陸前に炎上しているJAL機の恐ろしい映像は世界を震撼させた。
着陸の際、海上保安庁の機体と衝突したが、驚くべきことに379人全ての乗客がエアバス350から救出された。
英国クランフィールド大学の航空安全の専門家グラハム・ブレイスウェイ教授は、航空機のデザインや、ハイレベルなスタッフの訓練が災難を回避するのに役立ったと分析する。
機内で撮影された映像をみると、乗客が避難する間に煙が充満するのが確認できる。エンジンを炎が包み込む中、緊急脱出スライドを滑り降り、飛行機の下を乗客が走っている。
安全ルールに従うと、緊急時に非常出口の50%のみが使える場合、90秒で脱出する必要があるという。だがこれは、今回の様な事故で発生するパニック状態を勘案していない。子どもや高齢者などを含めると、安全な避難に必要な時間は更に必要だと推定される。
今回の状況で、死者を出さずに軽症の負傷者が僅か17人とは、クルーの避難誘導の素晴らしさを物語る。一方の海上保安庁の機体の5人は死亡し、1人は重傷となっている。
メトロポリタン州立大学の航空安全学のジェフリー・プライス教授は、全員が安全に避難できたのは「奇跡だ」とする。クルーの素晴らしい行動のみならず、乗客自身も、機内に煙が充満してしまう前に、多くの人が飛行機から脱出できるよう迅速に行動した」と分析する。
乗客が混乱と人命喪失につながるパニックを起こさず、冷静さを保ったことが更に奇跡的だ。飛行場でレスキュー隊や消防隊員が現場に到達するにも、3分以上は要する。飛行機の機内に炎が入るまでが約90秒。これらの数字から、乗客、乗員クルーは、救助が来る前の最初の1,2分は自分たちの判断で行動したこととなる。
また、航空機の最新設備設計の耐久性も重要な要素だったと指摘する。機内の炎上は航空安全上の最大の脅威だと長く考えられてきた。飛行機には非常に可燃性の高い燃料と物質が積載されている。
エアバス350には火の急速な広がりと、毒性のある煙の発生を抑える特別な素材が使用されているという。また、現在は、どこに座っていても、煙が充満した場合など、見えにくい状況下でも見えるようライトが点灯しており、非常口に容易にたどりつけるよう設計されている。
運も作用した。2002年の研究によると、機内の炎を感知した場合にパイロットが安全に着陸させるまでには17分を要するという。今回旅客機が既に着陸していたことは、乗客の救出に重要な要素であったといえる。
JALの乗客安全へのアプローチも素晴らしく、「安全性向上への取り組みが組織全体に根付き、標準操作手順に従う厳格な文化が守られている」と称賛する。
520人の死者を出し、航空機史上最悪の事故となった1985年の日航機墜落事故をきっかけに、同社は乗客の安全を非常に重視するようになった。全スタッフが本社の航空安全センターを訪れ、間違えが起きる可能性と、乗客安全に必要な仕事がどれだけ必要かを教え込まれるという。JALの文化が今回の惨事を見事に回避したとしている。
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ブラジルではルラ大統領就任後1週間となる今月8日、首都ブラジリアで議会や大統領府、最高裁判所がボルソナロ前大統領の支持者らにより襲撃された。治安部隊が鎮圧に成功したが、米国で2年前に起きたトランプ前大統領の支持者らによる連邦議会襲撃との類似点が指摘されている。
1月10日付米
『Insider』:「1月6日米議会襲撃に似たブラジルの首都襲撃はボルソナロ氏がトランプ氏の選挙作戦に習った結果」:
米連邦議会議襲撃からちょうど2年となる今、ブラジルのボルソナロ前大統領の支持者らは、選挙の敗北を認めず、首都ブラジリアの議会、大統領府、最高裁を襲撃した。
治安部隊が鎮圧したものの、1月8日は40年越しとなるブラジルの民主主義にとり最悪の日として記憶されることとなった。
ボルソナロ氏は米国のトランプ前大統領の政治戦略に習い、選挙前に選挙制度に疑問を呈し、根拠のない選挙不正を主張した。そして、敗北後にそれを認めず、後継者の就任式を欠席した点も同じだった。同氏の支持者らは、選挙日からデモを繰り返し、軍事介入を求める声さえあった。
両者には相違点もある。ボルソナロ氏は襲撃時にブラジリアに滞在しておらず、すでに退任後となっており、現在はフロリダ州オーランドに滞在している。トランプ氏は、1月6日の議会議事堂襲撃時に、襲撃を行った支持者らの前で選挙不正を訴えた演説をしていた。
だが、この両事件には、明確な接点がある。世界的に拡大している極右ムーブメントや、反民主主義活動に対して高まる懸念である。専門家は、もう一つの「失敗に終わった極右の民主主義転覆への挑戦」として、西欧はブラジルで起きたことをしっかり分析すべきだと指摘する。
ブラジルのシンクタンク「イガラペ研究所」のロバート・ムガ氏は、ここから得られる教訓は、「民主主義は絶対不可侵なものではない。国民の大多数が新政権への不満を抱えているとされる状況で、民主主義はしばしば崩壊し始める。政治指導者ではなく、偽情報も民主主義への脅威となる」と指摘する。
9日付米『CNN』:「米国への偉大な警告となったブラジル版議会襲撃事件」:
選挙結果をめぐりブラジルで起きた政府庁舎への襲撃事件は、米議会議事堂襲撃事件とそっくりのようでもあるが、実際はトランプ前大統領が扇動した暴動と、「熱帯のトランプ」と称されたボルソナロ氏の支持者による暴動の比較は難しい。
ブラジルの襲撃事件は10月30日の決選投票を経て12年ぶりに政権復帰したルカ大統領の就任1週間後に起きた。ボルソナロ氏はトランプ氏のように直接支持者を扇動してはいないが、選挙の正当性を疑い敗北を認めず、ソーシャルメディアで誤情報を拡散したりと、トランプ氏の戦略を採っていたのは確かである。
不正に触発されたボルソナロ氏の支持者らは、トランプ氏が2020年の選挙後の行動と重なる部分がある。現在、バノン氏などのトランプの側近がブラジルの暴動を煽る結果となったのではとの疑惑が広がりつつある。
ブラジルは1985年まで軍事政権下にあり、民主主義を排除し軍事力を政治ツールするやり方は、西欧でも長く行われてきた。国内の反民主主義ムーブメントの襲撃をうけた米国は、政情不安の国に近づきつつあるかもしれない。世界の民衆主義を外交方針の中心としてきたバイデン大統領は襲撃を批判し、同国の民主主義を全面的に支援すると表している。
米国がブラジルや政治不安のある国々へ発せられる最も説得力のある教訓は、2021年米国では民主主義は挫かれたが崩壊してはおらず、また扇動した人々は今なお説明を求められているということである。米国の1月6日とブラジルの1月8日による警告は、自由な選挙の実施と継続は、世界中で決して保証されてはいないということである。
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