1月13日付
『CBCニュース』(1941年設立のカナダ最大のニュース放送局)、
『CTVニュース』(1961年設立、カナダ最大の民放TV放送局)、1月14日付
『ロイター通信』は、カナダ政府が、労働力確保のために移民受け入れを倍増させる一方で、近年の家賃高騰問題に対処するため、留学生の受け入れは絞る意向だと報じている。
カナダ政府は、高齢化による労働人口減少に対応するばかりか、コロナ禍後の経済活動再活性化のため、移民労働者の受け入れに注力してきた。...
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1月13日付
『CBCニュース』(1941年設立のカナダ最大のニュース放送局)、
『CTVニュース』(1961年設立、カナダ最大の民放TV放送局)、1月14日付
『ロイター通信』は、カナダ政府が、労働力確保のために移民受け入れを倍増させる一方で、近年の家賃高騰問題に対処するため、留学生の受け入れは絞る意向だと報じている。
カナダ政府は、高齢化による労働人口減少に対応するばかりか、コロナ禍後の経済活動再活性化のため、移民労働者の受け入れに注力してきた。
特に、医療関係を含む社会福祉分野での労働力不足を補うため、2025年までの移民労働者受け入れ数を年50万人と、2015年比倍増させる方針を決定している。
一方で、2022年の留学生受け入れ数が80万人と、2012年時の27万5千人からほぼ3倍増となっていることもあって、大都市を中心に家賃高騰問題を引き起こす結果を招いている。
かかる背景から、ショーン・フレーザー住宅問題・インフラ・コミュニティ担当相(39歳、2023年就任)及びマーク・ミラー移民・難民・気候変動担当相(50歳、2023年就任)は1月12日、連名での声明を発表し、“移民労働者を増加させねば、コロナ禍後の経済活動立て直しに支障を来す”とし、“医療関係従事者を含めて、カナダ国民が望む社会福祉事業を取り進めるためには、移民労働者の助けが必要で、さもなくば大変な事態を招くことになる”と訴えた。
両相は同時に、“移民増に伴う家賃高騰問題は承知しているため、移民労働者は2025年・2026年とも50万人受け入れるが、代わって留学生については受け入れを大幅に制限することになろう”と言及した。
その上で、“今後は、留学生ビザ発行条件として、学生寮が確保できているか、あるいはキャンパスの外の住居手当ての目処がついているかが求められることになる”と付言している。
更に、ミラー移民相は1月13日、『CTVニュース』の番組に出演して、“目下、カナダが受け入れている留学生数は途方もないレベルとなっており、留学生受け入れシステムは制御できない状態になってしまっている”とした上で、“早速、今年第一(1~3月)及び第二四半期(4~6月期)それぞれにおいて、受け入れ留学生数に上限を設けることになる”とコメントしている。
ただ同相は、具体的な制限数に言及していない。
なお、家賃高騰問題はジャスティン・トルドー首相(52歳、2015年就任)率いる自由党政権にとって、非常に頭の痛い問題となっている。
特に、同政権が8年余りも続いていることもあって支持率が急落している一方、代わって支持率を大きく伸ばしている野党・保守党のピエール・パウリーブ党首(44歳、2022年就任)が、住宅問題に適切に対応していないとして自由党政権を猛批判しているからである。
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カナダとグリーンランド(デンマーク自治領)の間にあり、カナダとデンマークが長年領有権をめぐり紛争中だった小さな無人島に、国境がひかれる合意に至ったという。この島の領有権は、領海の資源などの国益にかかわるため、両国の軍隊が上陸し、国旗を立てたり、自国のリカーを置いていたことから「ウィスキー戦争」と呼ばれていたという。
6月14日付米
『ポリティコ』:「カナダとデンマークがボトルを交換し”ウィスキー戦争”終結」:
カナダとデンマークが14日、ロシアによるウクライナ侵攻に直面したことで、半世紀にわたる国境紛争に終止符を打った。
両国は、ヌナブト準州とグリーンランドの間に位置する1.2平方キロメートルの無人の岩礁「ハンス島」の領有権分割で合意。島の南北に伸びる自然の峡谷に沿って、島をおおよそ2等分するよう新たに国境が引かれる。...
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6月14日付米
『ポリティコ』:「カナダとデンマークがボトルを交換し”ウィスキー戦争”終結」:
カナダとデンマークが14日、ロシアによるウクライナ侵攻に直面したことで、半世紀にわたる国境紛争に終止符を打った。
両国は、ヌナブト準州とグリーンランドの間に位置する1.2平方キロメートルの無人の岩礁「ハンス島」の領有権分割で合意。島の南北に伸びる自然の峡谷に沿って、島をおおよそ2等分するよう新たに国境が引かれる。
ハンス島(イヌイット語でタルトゥパルク)は、1973年からカナダとデンマークにより国境が引かれたが、合意に至らなかった。その後、両国の軍艦が島を訪問し、領有権を示そうと、国旗やカナダ産ウィスキーのボトルまたはデンマーク産「シュナップス」を置いてきたことから、この領土紛争は「ウィスキー戦争」と呼ばれる様になった。
オタワで開かれた調印式後、カナダのメラニー・ジョリー外相は、「領土紛争が平和的に解決できるという前例を我々が世界に示した」、「対立を解決することは可能、常に両国が納得する方法で行うのがベスト」だとした。
デンマークのジェッペ・コフォド外相は、和平に向けた式典でリカーボトルを交換し粋な演出をみせた一方、ロシアによる戦争を念頭に、この合意は「紛争は、武力によらず法の力によって、国際法に基づき解決されなればならないという、プーチンを含む世界へのメッセージなのである」と強調した。
グリーンランドのムテ・エゲーテ首相は、この合意は二カ国をつなぐ足ががりとなる一方、ヌナブト準州やグリーンランドでのイヌイット族の自由は保たれるべきだとした。今回の合意では、イヌイットの族の島内での移動や狩猟、漁業などの権利は保たれるという。
政治学の専門家は、「西欧諸国で、ウクライナや台湾、南シナ海の領土紛争の解決の必要性が強調される中、この合意は領土権の平和的解決の代表例となる」とし、北極圏地域の緊張緩和を維持する必要性を強調している。
同日付カナダ『CTVニュース』:「大西洋の小島をめぐるデンマークとの”ウィスキー戦争”に和平合意」:
ハンス島は両国の領海問題にかかわるため、50年間にわたり外交紛争の火種となっていた。
カナダのジョリー外相は、この日を「歴史的な日」とし、26人の外相がこの紛争に関わってきたが、平和的解決により、国が領土問題を平和的方法で解決できることを示したと強調した。また、プーチンのウクライナ侵攻を念頭に、「デンマークの合意は、圧政君主が軍事的方法で国境をひこうとする歴史的に非常に重要なタイミングで行われた」と指摘した。
一方、この領土権合意を受け、ヌナブト準州とグリーンランドに住むイヌイット族との協議も行われているという。この地は数世紀に渡りイヌイットの狩猟地となっており、国境合意後も、彼らの狩猟権、島移動の自由は引き続き保障されることとなる。
カナダは史上初めてデンマークと国境を接することとなる。これを機に、カナダがユーロビジョン・ソング・コンテスト(ヨーロッパの歌の祭典)に出場するか聞かれ、ジョリー外相は、EUとの国境を接しているため申請するかもしれないとジョークで答えたという。
同島の領有権をめぐっては、1980年代から、和やかな紛争が続いていた。1984年カナダが島に国旗とウィスキーを置いた。同年、デンマークのグリーンランド担当相がヘリで島を訪問、基地にデンマークの国旗と国産スピリッツを置き「デンマークの島へようこそ」と書いたメモを残したと報じられた。
1988年、デンマークの北極海巡視艇が、島に国旗と石塚を立てた。2001年、カナダのエルズミア島の地図制作者がヘリで訪問。2005年、デンマークでのカナダ大使館前デモを受け、カナダ軍が島に国旗と盾を置き、防衛相が島を散策。デンマークのラスムッセン前首相が「国旗戦争をやめるときだ」と述べ、両国は島をめぐる交渉再開。今回の合意により、大陸棚の海洋境界紛争も解決している。
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