日本政府は2月7日、懸案となっていた福島原発処理水の海洋放出策について、国際原子力委員会(IAEA、注後記)の調査団が来週来日すると発表した。海外メディアも、関心を持って報道している。
2月8日付米
『AP通信』:「専門家調査団、福島原発処理水の海洋放出策調査のため訪日」
IAEAの科学者で編成された調査団が来週訪日して、福島原発で保管された100万トン余りの処理水(AP通信の表現)を海洋放出する政策について調査する。
約15人から成る調査団は、日本政府及び東京電力関係者と面談する他、福島原発も実際訪問して、日本政府が表明している海洋放出策の安全性について厳密な調査を行う。...
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2月8日付米
『AP通信』:「専門家調査団、福島原発処理水の海洋放出策調査のため訪日」
IAEAの科学者で編成された調査団が来週訪日して、福島原発で保管された100万トン余りの処理水(AP通信の表現)を海洋放出する政策について調査する。
約15人から成る調査団は、日本政府及び東京電力関係者と面談する他、福島原発も実際訪問して、日本政府が表明している海洋放出策の安全性について厳密な調査を行う。
日本政府と東京電力は昨年、福島原発に保管された処理水を、希釈した上で海洋放出するとする計画を発表していた。
原発内の降水等をタンクに入れて保管してきたが、今年末には保管限度の137万トンに達するとされていて、同原発の数十年にわたる廃炉処理を促進するためにも、同処理水の措置が懸案となっていた。
当該計画は、地元漁協や住民のみならず、近隣の中国・韓国も激しく反対していた。
これに対して日本政府は、IAEAの調査によって、当該放出が国際安全基準を満たしていることを証明してもらい、他国の理解を得ようとしている。
関係省庁高官によれば、処理水に含まれる全ての元素について、基準を下回る安全レベルまで希釈した上で放出するとしていて、ただ、取り切れないトリチウムが残ってしまうが、少量であれば安全性に問題はないことが分かっていると強調している。
IAEAは当初、昨年12月に調査団を派遣する予定であったが、折からのオミクロン株蔓延再発で延期し、この程今回の派遣について日本側と合意したものである。
なお、6人の住民が、子供時代に原発事故に遭って、それが原因で甲状腺ガンを発症したとして、東京電力に対して損害賠償請求を行い提訴している。
また、日本の首相経験者5人が1月27日、共同で欧州委員会(EC、1967年設立、欧州連合の政策執行機関)に対して、原発事故によって甲状腺ガン発症が促進されていること等を理由として、ECが採択した「原発が環境問題のない持続性のある経済的発電源」とする決議を撤回するよう嘆願書を提出した。
これらに対して、政府関係者は、原発事故と甲状腺ガン発症の因果関係は認められていないとした上で、首相経験者が「誤った情報と偏見に満ちた考え」を広めようとしているとして非難している。
2月7日付韓国『聯合ニュース』:「韓国人科学者、IAEA調査団による福島原発調査に参加」
韓国政府は2月7日、IAEAが福島原発の汚染水(聯合ニュース表現)の海洋放出策の安全性を調査する調査団には、韓国人科学者も同行すると発表した。
日本外務省の発表では、同調査団はIAEA原子力安全・核セキュリティ局のグスタボ・カルーソ調整官が率い、2月14~18日の間、現地調査を行って当該策の安全性等について調査するという。
2月8日付中国『CGTN(国際ニュース放送チャンネル)』:「IAEA、日本が計画する汚染水の海洋放出策について安全性調査のため訪日」
IAEAのラファエル・グロッシ事務局長(60歳、2019年就任、前アルゼンチン国際機関大使)は2月7日、日本による福島原発保管の汚染水(CGTN表現)の海洋放出策について、安全性等を詳細調査するため、2月14~18日の間に調査団を訪日させると発表した。
同事務局長は、信用でき、かつ科学的根拠の基づいた調査を行い、透明性のある調査報告書をまとめ上げて日本及び多くの関係国に報告する、と付言した。
(注)IAEA:国連の保護下にある自治機関で1957年設立。原子力の平和的利用の促進、及び原子力の軍事利用(核兵器開発)の防止が目的。本部はウィーン(オーストリア)。
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