世界遺産の氷河3分の1が2050年までに消滅
気候変動に関する国際会議「COP27」にあわせて発表された最新の国連報告書によると、温暖化の影響で、世界遺産の氷河の3分の1が2050年までに消滅すると予測されている。
11月3日付米
『ワシントン・ポスト』:「ヨセミテ国立公園やアフリカの氷河が2050年までに消滅 国連報告書」:
国連ユネスコの最新報告書によると、ヨセミテ国立公園を含む、世界遺産の氷河のうち少なくとも3分の1が、今世紀半ばまでに消滅するとみられている。
これはたとえ温暖化が1.5度に収まったとしても起き、残り3分の2は、温室効果ガスの排出が劇的に減り、世界の気温上昇が(産業革命前比で)1.5度に抑えられる場合にのみ留まる、と報告書は結論つけている。...
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11月3日付米
『ワシントン・ポスト』:「ヨセミテ国立公園やアフリカの氷河が2050年までに消滅 国連報告書」:
国連ユネスコの最新報告書によると、ヨセミテ国立公園を含む、世界遺産の氷河のうち少なくとも3分の1が、今世紀半ばまでに消滅するとみられている。
これはたとえ温暖化が1.5度に収まったとしても起き、残り3分の2は、温室効果ガスの排出が劇的に減り、世界の気温上昇が(産業革命前比で)1.5度に抑えられる場合にのみ留まる、と報告書は結論つけている。
世界遺産に指定されている1150ヶ所のうち約50ヶ所に氷河が存在しており、これは、世界の氷河の約10分の1に相当する。世界遺産内の約19000の氷河は、1年あたり600億トン消失しているといい、これはスペインとフランスで1年間に使用される水の量に相当する。
融解速度を遅らせるため、氷河をブランケットで覆うなどの対策も行われているが、コスト面や氷河へのアクセスが困難なことからそのような対策は難しい。
氷河は氷河期に形成され、その後縮小する。10万年以上前の「氷河期」、そして19世紀の最後の「小氷期」の後、ヨーロッパでは自然融解がおきている。スイスでは今年だけで実に6%の氷河が融解。氷河融解は、熱波によって川が干上がるのを防ぐなど、気候変動の影響を和らげる効果がある一方、今は急速に限界に達しつつある。氷河湖の氾濫による洪水など、自然災害への早めの警報システムも求められる。
世界各地で、考古学者が探すよりも早く、古代遺物が自然に出現する現象がみられるという。一部の氷河は、先住民やその土地の重要な史跡となっている。ペルーの山中の氷河では、数世紀続く先住民の「スノースターフェスティバル」が行われていたが、氷河消滅の影響を受けている。
低中高度の比較的小さな氷河が最初に消滅する。2000年~2010年の小型氷河の消滅率は2倍以上。同時に、氷河が形成される程の寒冷な地域がより減少しており、現在新たな氷河が形成される限界高度が3000メートルと、ここ数十年で数百メートル上昇しているという。
同日付英『BBC』:「気候変動:キリマンジャロなどのアフリカの氷河が2050年までに消滅」:
国連ユネスコの報告書によれば、気候変動のため、アフリカ最後の氷河を含む世界遺産の氷河の3分の1が、30年以内に消滅するという。これは温暖化対策が取られたとしても、防ぎようがないのだという。残り3分の2の氷河は、温暖化が1.5度以内に留まった場合には保存されるが、報告書によると、現時点でこの目標が達成される見込みはないとされている。
世界遺産に登録された場所には、約18600の氷河があり、これは世界の氷河の10%に相当。人気の観光スポットや民族的固有の伝統ある場所も含まれる。キリマンジャロ山やアルプス、米ヨセミテ国立公園など、イラン、中国、ケニヤ、フランス、イタリア、ロシア、スイス、カナダ、インドネシアなどの山や公園に分布している。
今回の報告書は、衛生データの予測に基づくもので、来週エジプトで開催される気候変動に関する国際会議「COP27」に向けて発表された。
家庭や農業用水として氷河を利用している人々もおり、氷河が失われると、干ばつ期の魚にも影響するため、食料危機にも発展しかねない。事前に警告することで先住民への洪水被害などは減らせるが、最も効果のあるのは、温暖化を遅らせることである。
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抗議デモが続くイランで刑務所火災
イランの首都テヘランで、政治犯や外国人ジャーナリストも収容されている刑務所が火災に見舞われ、死傷者がでているという。イランでは、先月、女性が頭髪を覆う法律をめぐり逮捕された女性が警察の拘束後に亡くなったことをきっかけに、各地で政府への抗議デモが続いている。抗議者も同じ刑務所に送られているが、デモと火災の関連性は分かっていない。
10月17日付
『ロイター通信』:「抗議デモが続く中、イランの刑務所火災で死者4人負傷者61人」:
15日夜イランのエヴィン刑務所で火災が起き、服役中の4人が死亡、負傷者は61人だと国営メディアが報じた。イランでは、警察の拘束中に女性が死亡したことをきっかけに反政府デモが続いており、16日も複数の大学などでデモが行われた。
イラン当局は15日、「多くの受刑者の間で窃盗を機に暴動が起きた後」刑務所の作業所が放火されたと発表。...
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10月17日付
『ロイター通信』:「抗議デモが続く中、イランの刑務所火災で死者4人負傷者61人」:
15日夜イランのエヴィン刑務所で火災が起き、服役中の4人が死亡、負傷者は61人だと国営メディアが報じた。イランでは、警察の拘束中に女性が死亡したことをきっかけに反政府デモが続いており、16日も複数の大学などでデモが行われた。
イラン当局は15日、「多くの受刑者の間で窃盗を機に暴動が起きた後」刑務所の作業所が放火されたと発表。国営メディアによると、死亡者の死因は煙を吸ったことによる中毒死だとしている。
エヴィン刑務所には、治安部隊に逮捕されたイラン人や外国人も多く服役しているという。外国人の多くはスパイ罪など治安関連の罪で服役している。フランスの外相は16日、フランス人も複数も服役している刑務所の状況を注視しているとしている。
イラン国内の抗議デモは、9月16日、革命以来続く宗教規律への意義を唱えた22歳のマーサ・アミニさんの死をきっかけとして起きた。今月16日も大学などでデモが行われ、警察が配備された。SNSでは、テヘラン大学で学生が「イランは刑務所になってしまった」などと抗議する姿や、路上の炎、警察による催涙ガスの映像もみられた。
バイデン米大統領は15日、「イラン人抗議者の勇気に驚いている。(イランは)自国民への暴力をやめ、基本的権利を認めるべき」だとコメント。一方イランのエブラヒム・ライシ大統領は、バイデン米大統領が「無秩序、恐怖、破壊を扇動した。米国は偉大なサタンだと言った建国者(革命指導者ホメイニ氏)の言葉を思い出すべき」だと述べている。
イランでは抗議者への取締が続いており、人権団体によると32人の年少者を含む少なくとも240人が殺害されたとされる。イラン活動家報道機関「HRANA」によると、11の市や町での逮捕者は8000以上だという。一方、当局は死者数を公表しておらず、治安部隊によるデモ参加者の殺害も否定。国営メディアは、治安部隊の少なくとも26人が「暴動者」により殺害されたとしている。
同日付英『BBC』:「エヴィン刑務所火災:イランの悪名高き拘置所で死者数人」:
政治犯を収容しているとされる刑務所で、死者がでており、発表より多い模様とされている。テヘラン市内での現場で、火災や爆発が確認できる映像がネット上で公開されている。
イラン各地ではここ数週間、反政府デモが続いている。デモの参加者数百人が、このエヴィン刑務所に送られているが、この火災がデモと関係するかは明らかではない。
デモは先月、イラン人のマーサ・アミニさんが警察に拘束されたことを機に起こった。当局は彼女が心臓発作で死亡したと主張しているが、家族は警察に殴打されたことで死亡したと反論している。
SNS上では15日夜、火災や噴煙の映像が投稿された。射撃音や爆発音が聞かれる映像もあった。イスラム革命防衛隊系のニュースは当初、刑務所逃亡による地雷爆発だとしていた。火災中に逃げようとした服役者が地雷を踏んだとしていたが、そのような事態は起きていないと訂正。
15日夜、イラン国営テレビは、刑務所の一部が安全で落ち着いている様子の映像を報道したが、火災現場とは違う場所だとの証言もある。
かつて服役していた者は、シラミ、ゴキブリ、ネズミにまみれ、医療ケアはほぼないこの地を地獄の谷と呼ぶ。刑務所は西欧の人権団体から常に批判され、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、長時間の尋問や服役者への医療不備に加え、虐待や無釈放もあることを批判してきた。
服役者のいる国では懸念が続いている。米国務省は、危機感を持って事態を見守っているとし、英国安全保障担当相は、「非常に憂慮すべき事態」だとしている。
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