仏マクロン大統領、エリート養成学校ENAを2022年に廃止
仏マクロン大統領は今月8日、フランス随一のエリート養成学校ENAを廃止し、その代わりに、様々な社会的背景の若者に対象を広げた新しい官僚養成学校「公共サービス機関」を設立することを発表した。しかし、未来のリーダー達を要請するフランスを代表する学校が廃止されることに対し、疑問を投げかける声も上がっている。
仏ニュースサイト
『20ミニュッツ』によると、国立行政学院(ENA)は、40年もの間、フランスの官僚を輩出してきた名門校である。しかし、裕福層に限定された学校であり、現場を知らないエリートを養成しているとしばしば批判されてきた。同ニュースサイトは、2022年の閉校は、フランスの一つの象徴的存在が消えることだと伝えている。
政府は、新設される官僚育成学校の目的は、「上級公務員の道を幅広い社会階層に開放する」だけでなく、「上級公務員の魅力を強化する」ことにあると説明している。...
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『20ミニュッツ』によると、国立行政学院(ENA)は、40年もの間、フランスの官僚を輩出してきた名門校である。しかし、裕福層に限定された学校であり、現場を知らないエリートを養成しているとしばしば批判されてきた。同ニュースサイトは、2022年の閉校は、フランスの一つの象徴的存在が消えることだと伝えている。
政府は、新設される官僚育成学校の目的は、「上級公務員の道を幅広い社会階層に開放する」だけでなく、「上級公務員の魅力を強化する」ことにあると説明している。また、学生たちに「より明確なキャリアの展望」を提供しながら、「研究の世界と国際的に開かれた教育」になる予定だという。そして、卒業後に官庁の管理職ポストにすぐに配置されるのではなく、「5、6年の現場経験」を経てから初めて主要な官庁で働く方針に切り替わる。
ENA卒業生でジャーナリストのジャック・ジュリアール氏は、マクロン大統領の決断に関して『ル・ポワン』誌に次のように語っている。「どんな国も国を動かすエリートがいないと成り立たない。平等主義や平準化という考え方はばかげている。エリートたちの能力開発を本人たちに任せるよりも、管理する方が良いからだ。」と説明している。
そして、大統領の今回の決断については、理解できないと述べている。特に、「卒業試験を残すという点だ。私がENAの役員を辞めたのは、まさにこの理由だった。卒業試験で1位になったために、自分がほとんどかかわりの持たない社会を生涯にわたって支配することになる。」と指摘している。
しかし『フランス3』は、卒業生は全員、卒業試験の順位に関係なく、数年間地方の現場で働き、その後に主要な政府機関に所属することになると伝えている。入試も多様化し、様々な背景を持つ若者たちに対象を広げる。
エリート養成校の行政系グランゼコールの一つで、リールにある政治学院のピエール・マティオ院長は、「ENAの競争試験は、社会的に枠が固まっている。親が上級公務員出身で、非常に古典的な、特定の社会規範を持っている子供たちが入学している。社会的再生産の一形態になっている。これは特に男子に当てはまる。」と説明している。
フランス北部にあるジャカール高校の校長は、こうした背景から、裕福層に属さない優秀な高校生たちは、官僚養成学校に入るのは最初から無理だと諦めて、あえて挑戦しない傾向があると指摘している。その結果、ENAでは、上級管理職の親を持つ生徒が、会社員やブルーカラー家庭出身の生徒の12倍を占めているという。
ENAに関するドキュメンタリーを製作したエミリー・ランソン氏は、『ヨーロッパ1』に対して、新設される学校は、入試だけでなく、入学後の評価方法も新しくなると説明している。学生は、学業の成績だけでなく、行動や、エコロジーなどの現代の問題への関心の高さなど、実技面でも評価されるという。しかし、例えENAが廃止され、新しい学校が新設されたとしても、エリート養成学校のパッケージ化が変わるだけであり、根本的な変化は起こらないだろうとコメントしている。
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イケア・フランス、従業員に対するスパイ活動に対する裁判始まる
フランス・パリで、家具製造・販売大手イケアのフランス子会社が、従業員や顧客の個人情報を不正な方法で収集したとされる問題を巡る公判が今週行われている。同社は、民間の警備会社と警察官の協力を得て組織的に行っていたという疑いが持たれている。初公判が29日から2日まで行われる。
仏日刊紙
『20ミニュッツ』によると、今週パリ郊外にあるベルサイユの裁判所で、イケア・フランス、同社の元幹部2人、そして警察官4人が、「違法な個人情報収集と情報開示」、「職業上の秘密の侵害」、「隠ぺい」などの罪で裁かれる。
この問題は、2012年、ヴァルドワーズ県にあるイケアの店舗の従業員が、社員や採用候補者、顧客の個人情報に関する数十ものファイルを社内のパソコンで発見したことから始まる。...
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仏日刊紙
『20ミニュッツ』によると、今週パリ郊外にあるベルサイユの裁判所で、イケア・フランス、同社の元幹部2人、そして警察官4人が、「違法な個人情報収集と情報開示」、「職業上の秘密の侵害」、「隠ぺい」などの罪で裁かれる。
この問題は、2012年、ヴァルドワーズ県にあるイケアの店舗の従業員が、社員や採用候補者、顧客の個人情報に関する数十ものファイルを社内のパソコンで発見したことから始まる。犯罪歴、家族状況、経済的または健康上の問題などについて細かい記録が保存されていた。
この店舗は、2010年の労働組合によるストライキ運動以降、会社に目をつけられていた従業員の一人で当時組合役員だったアデル・アマラ氏について、民間の警備会社に「秘密裏にかつ包括的」な調査を依頼していた。しかし警備会社は、「人物像」をまとめただけでは満足せず、偽の同僚を雇って組合の会合に潜入させるなど、アマル氏を操るためのアイデアを提案していた。さらには、同氏の伴侶を寝返らせ、影響を与える存在として用いる計画も練られたが、成功する可能性は低いと見なされた。アマラ氏はその後、3人の幹部を含む5人の従業員によって起訴され、「モラル・ハラスメント」の罪で有罪となった。
捜査が進むにつれ、イケアの店舗で行われていたこうした不正行為は、この1店舗に限ったことではないことが明らかになっていった。会社に対して批判的な態度を取るようになった社員に関する情報収集。高級車で出社した新しい社員の車の支払い方法に関する情報収集。労働組合役員のユーザー名やメールアドレスについてグーグルやフェイスブックに問い合わせるなど、さらには、会社と係争関係にある複数の顧客に関する個人情報の収集も行われていた。
今回の裁判で、約15の市民団体の弁護士であるヤシーヌ・ヤクティ氏は、「今日、私たちがこの裁判で何よりも期待しているのは、このような規模の組織的なスパイ活動をどのようにして作ることができたのかを理解することです。」と述べ「しかし責任者たちは一切説明をしてくれません。」と非難している。
起訴されたイケアの幹部らは、この件について容疑を一貫して否定している。唯一、情報収集の依頼を担当していたリスクマネジメント・ディレクターのみ「経営陣はこれらの依頼を認識し、支持していた。これは自分が個人的に行っていたものではなく、イケアの経営陣の要請で導入されたシステムである。」と容疑を認めている。
仏日刊紙『リベラシオン』によると、2009年から2012年の間に、少なくとも400人の人々が、会社の調査対象となり、仕事の機会を奪われてしまうなど、調査は個人の生活に実際的な影響を及ぼしたとされている。
検察は、イケア・フランスの元CEOであるジャン・ルイ・バイヨ容疑者と、1998年から2012年までリスクマネジメントのディレクターを務め、この監視システムの中核を担っていたジャン・フランソワ・パリ容疑者に対して、懲役3年・執行猶予2年を要求している。また、イケアのフランス子会社に対しては200万ユーロ(約2億6千万円)の罰金を要求している。
検察は、「集団監視の脅威から私生活を守る」という問題に対し、「すべての商業企業」に向けた「強いメッセージ」となる「模範的な裁き」が必要であると主張している。
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