欧州の火星探査計画エクソマーズ(ExoMars)はロシアとの共同事業で、欧州宇宙機関(以下ESA)が主導する。今週初めに打ち上げが成功した。目的は「火星の生命体の存在」を裏付けるメタンの検出。米国航空宇宙局(以下NASA)の探査機キュリオシティ号に出遅れた欧州は巻き返しなるか?加熱する火星探査レースと欧州の探査計画の目玉をフランスメディアが報じる。
「TGO観測機が火星のメタンの謎を解明する」(
『フィガロ紙』)
「フィガロ紙」によると、2004年に欧州の観測機が火星大気中にメタンの痕跡を検出するも、裏付け検出に至らなかった。リードする米国の探査機キュリオシティ号も2012年にメタンの「気配を示す物」を観測したが、当時の検出機器の検出限界では確定出来ないまま今日に至る。火星の極希薄な大気が検出を阻む。目玉となるのが、ESAが開発したトレース・ガス・オービター(略称TGO)と呼ばれる微量ガス観測機である。今までの千~1万倍正確に測定可能なTGOで、世界初のメタン検出を狙う。
生命の存在とメタン
「フィガロ紙」はパリの惑星研究者で火星探査計画に関わるフォルジュ氏を参照する。「メタンが検出される場合その元になる物質が必ず存在する」。また「メタンは主に生物(有機体)により生成され」、「地球外生命体の場合は、バクテリアによると考えるのが妥当」。以上により「メタン検出は火星の原始的な生命の存在を示し得る」の仮説を多くが支持する。
『レゼコー紙』も「バクテリアという形での生命体は火星で存在しうる」と期待する。
メタンの由来判別の問題
フランス国立宇宙センター(CNES)の宇宙生物学者のビゾ氏は「レゼコー紙」でTGOの弱点を指摘する。「地球では大気中メタンの殆どは水場のバクテリアにより生成される。一方火山性物質(鉱物の蛇紋岩)もメタンを生成する。TGOはこの二つを区別できず、検出したメタンが生物学的かどうかは判別できない」。NASAは2015年9月に英科学誌
『ネイチャー・ジオサイエンス』で、今も火星に水が存在する事を示す観測研究を発表した。ビゾ氏の指摘はNASAの最新の発表を意識したESAの意識の表れともとれる。
また「フィガロ紙」は「検出したメタンが生物学由来でなくとも、地球科学的プロセスの結果なら、地下に温泉がある可能性を示唆する」と報じる。
見捨てられたエクソマーズ計画
『ルモンド紙』によると、ESAはNASAに協力を依頼し、今回の1回目でESAが観測機を軌道に乗せ、2018年の2回目で探査機ローバーをNASAが火星に降ろすはずだった。しかし予算問題で2011年に「NASAが放棄し欧州を見捨てた」経緯がある。その後の欧州の失敗続きもあり、「レゼコー紙」の「地球外生命の原形発見レースで米国を打ち破れるか?」の問いは、ESAの主体であるフランス国立宇宙センターの意気込みを象徴する。
「フィガロ紙」によると「炭素を含む全ての有機ガスやアセチレンやエチレン等今まで検出されていないガスなどメタン以外ガス検出」も目標となっている。火星が液体状の水に覆われていた遠い過去の生命の探査は、2018年第2回の中心テーマである。
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