金正恩総書記(キム・ジョンウン、37歳)の実妹である金与正宣伝扇動部副部長(キム・ヨジョン、32歳)は、肩書きよろしく、米国や韓国を激しく罵倒するコメントを発表して勢いが凄まじい。一方、同総書記は余り表舞台に出ていないが、久し振りに登場したのは、新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題で経済不況に喘いでほとんどの目玉開発事業が停滞する中、唯一進捗している大規模住宅建設事業現場を視察した場面である。経済失政が指摘される中、それを糊塗するためのパフォーマンスとみられる。
4月1日付
『ロイター通信』:「北朝鮮の金総書記、大規模住宅建設事業の促進の必要性をアピール」
北朝鮮国営メディア『朝鮮中央通信』は4月1日、金正恩総書記が先週に続いて、平壌(ピョンヤン)で自身が進める計5万戸の大規模住宅建設現場を再訪し、住宅開発の促進の必要性を訴えたと報じた。
今回の報道の1週間前には、1年振りに弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射し、核兵器開発の促進及び米新政権に対する圧力を強化しようとしたとみられている。
同メディアによれば、同総書記は、“建設工程は必ず工程毎に厳しく管理し、建設資材もあらゆる方法で倹約し、また、事故発生をゼロに抑え、その上で卓越した建設ノウハウを蓄積していく必要がある”と強調したという。
同総書記は今年1月、新たな国家経済発展5ヵ年計画を発表したが、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発に伴う国連制裁に遭っていて、同計画の進展は困難に直面している。
国連の報告では、北朝鮮がCOVID-19感染抑え込みのため徹底的な政策を講じているが、反って人権侵害や職権乱用を更に悪化させ、結果として市民の困窮や餓死まで誘発しているという。
北朝鮮当局は、依然国内にCOVID-19感染者は皆無だと主張している。
しかし、専門家は、中国やロシアと国境を接している北朝鮮にCOVID-19感染者がいないというのは全く信用できないとしている。
同日付『聯合(ヨナプ)ニュース』:「北朝鮮指導者、住宅建設事業現場を1週間で2度訪問」
北朝鮮国営『朝鮮中央通信』報道によると、金正恩総書記は4月1日、平壌市内で建設中の大規模住宅事業現場を再度視察したという。
これは、3月25日に続く1週間で2度目の視察で、最初の訪問時には、約1年振りに行われた弾道ミサイル発射実験に立ち会うことを止めてのものであった。
同報道では、同総書記が“800戸の集合住宅”建設現場を訪れて、関係者に大規模住宅建設事業の促進の必要性を訴えたという。
同総書記は、今年初めに発表した新5ヵ年計画の中で、平壌市内に2025年までに5万戸の集合住宅を建設することに加えて、国内全土にわたって住宅建設を急ぎ、市民生活の向上につなげる必要があると強調している。
国営メディアによると、これら集合住宅は、発明家、科学者、教育家、作家等優秀な市民への“贈り物”として進呈されるという。
なお、専門家は、同総書記が弾道ミサイル発射実験に立ち会わず、住宅建設現場を視察したことは、自身が示した新5ヵ年計画の進捗に困難が見え始めていることから、何としてでも経済回復に重点的に取り組んでいくことを強調したいがためのパフォーマンスとみている。
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アジア主要国は、欧米諸国に比して、新型コロナウィルス(COVID-19)感染者も死者も人口当たりで非常に低い。そこで個人投資家も機関投資家もアジアの景気回復は早いと期待していた。しかし、直近では日本、韓国等の感染者が再び急増し、一方、COVID-19ワクチン接種が依然始まっていないこともあって、来年のアジア市場に懸念を抱き始めている。
12月24日付
『CNBCニュース』:「日本、韓国でのCOVID-19感染者急増でアジアの景気回復に影響」
米ジョンズ・ホプキンズ大(1876年設立のメリーランド州私立大学)の集計データによれば、アジアの主要国のCOVID-19の感染者数は欧米諸国に比べて遥かに低い。
しかし、直近では、日本、韓国等の新規感染者が、世界的流行となった今春当時より遥かに多く発生しているため、来年のアジアにおける景気回復見通しに暗雲が立ち始めている。
英国の経済リサーチ会社パンテオン・マクロエコノミクス(PM、2012年設立)は、“アジアの主要国にとって、今年深刻だったCOVID-19問題が、1月1日を迎えても改善する見込みが立たないだろう”と分析している。
主要国の現状は下記どおり;
<日本>
・12月23日現在、感染者20万7,007人、死者2,941人(致死率1.4%)。
・今年11月頃から再び感染者が増え始め、先週にはついに一日当たり3千人超の最多記録更新。
・『ロイター通信』報道によると、日本医師会等が挙って、このままいけば医療崩壊につながると非常事態宣言。
・しかし、菅義偉首相(72歳)は、主導していたGo-to-travelキャンペーンを一時中止としたものの、再び全国に非常事態宣言を発出することには消極的。
・PMのエコノミストは12月23日、日本政府が進めている“比較的生ぬるい”ソーシャルディスタンシング・ルールでは感染防止という効果は期待薄とコメント。
・また、来年の1~3月期の日本の景気動向は、“新年早々にも二度目で、かつもっと効果的な非常事態宣言が発出されるか否か”にかかっているとも付言。
<韓国>
・12月23日現在、感染者5万3,533人、死者756人(致死率1.4%)。
・日本と同様、今月になっての一日当たり感染者は1千人超と、これまでの記録を更新。
・ただ、ソーシャルディスタンシング・ルールは日本よりも厳しい対応。
・『聯合(ヨナプ)ニュース』報道によると、政府が12月22日、全国で5人以上の集会・会食等を禁止し、また、スキー場等の冬季施設の閉鎖を命令。
・PMは、かかる措置によって韓国の景気への悪影響は今年10~12月期内で留められるかもしれないとコメント。
<マレーシア>
・12月23日現在、感染者9万8,737人、死者444人(致死率0.4%)。
・米ジョンズ・ホプキンズ大データによれば、9月まででは感染がほぼ沈静化していたが、10月以降に急増。
・そこで、政府は部分的都市封鎖等、新たな厳しい措置を講ずる見込み。
・英国の経済リサーチ会社キャピタル・エコノミクス(CE、1999年設立)は12月22日、10~12月期の同国経済は、特に個人消費の落ち込みで“弱含み”となろうと分析。
・CEは更に、“今後導入されるであろう行動制限措置によって、(COVID-19沈静化していた)7~9月期の個人消費の伸びは大きく落ち込むとみる”とし、“グーグル・モビリティ・データ(注後記)が頻繁に使われることで、ソーシャルディスタンシング・ルール堅持のため個人の行動が著しく制限される”と解説。
(注)グーグル・モビリティ・データ:今年3月末からグーグルが公開したもので、外出自粛などの政策で人々の行動がどのように変わったかをデータ化し公開。娯楽施設や店舗・公共交通機関などの大分類を用いこれらの場所の傾向を時系列のグラフで表示。日本等131ヵ国が対象。
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