6月20日は「父の日」である。世間では、「母の日」と比べて存在そのものが危ういとの風潮もあるが、中国国営メディアは、このときとばかり、習近平国家主席(シー・チンピン、68歳)が如何に父から授かった3つの徳に従って治世に心血を注いでいることか、と改めて称賛している。
6月19日付
『CGTN(1979年設立の中国中央テレビ国際ニュースチャンネル)』:「習近平国家主席が父から授かった“3つの徳”」
世の父親たちは、子供たちに大きな影響力を与えている。
習近平国家主席も同様で、父親の習仲勲(シー・チョンシュン、1913~2002年)から少なくとも3つの大切な教え(徳)を授かっている。
習仲勲は八大元老(注後記)の一人で、党中央政治局委員等を歴任した人物であった。
その父親から習国家主席が引き継いだ3つの徳は以下であるが、同主席はしっかり体現してきている。
1. 民衆志向の哲学
中央幹部の多くは、民衆に根差した活動から学び、成長していく。これを通して、民衆の苦難や欲するものを理解することができ、将来の国家政策を営むために必要な民衆志向の基礎が固められるからである、とする。
父親はかつて子供時代の同主席に、“どんな肩書きを得ようとも、常に民衆に尽くすこと、民衆の利益は何かに思いを巡らすこと、民衆と密接な関係を継続させること、そして民衆の傍に寄り添うことが肝要”だと説いた。
この教えの下、同主席は、政府高官も民衆も平等であり、政治家は常に民衆と共に生きる必要があると表明し、それを実行してきている。
例えば、2012年11月に中国共産党中央委員会総書記に就任して以来、“民衆に尽くす”との心構えの下、国内の極貧地域14ヵ所を連続して訪問している。
そして、出会った民衆と親しく会話し、日常の問題等を聞き、彼らに対して“民衆のために働く公僕”だと語りかけ、その上で地方の役人に対しても、民衆に尽くす責任を自覚するよう説いている。
更に、同主席はしばしば、中国共産党が民衆からの支持を勝ち得ているのは、常に民衆のために誠心誠意尽くし、かつ多くの民族の福祉向上のために奮闘してきたからだ、と力説している。
2. 現実的対応
父親の現実的対応路線(現場主義)を継承し、習主席は1980年代に中国東部河北省(フーペイ)の正定県(ヂェンディン)地方官吏だったとき、同県内の全ての村々を訪問している。
1990年代に南東部福建省(フーチェン)寧徳市(ニンドー)の党委員会書記だったときには、就任後3ヵ月間で9つの行政区を訪問し、後にはその他の郡区も回っている。
そして、2002年に東部浙江省(チェーチャン)の党委員会書記に就任した際には、僅か1年で全90の行政区を訪れ、また、2007年に上海市党委員会書記となったときは、7ヵ月で全19の行政区を訪問している。
このような対応を経てきたことから、習主席が今年3月に採択した経済・社会発展のための第14次五カ年計画及び2035年までの長期目標綱要は、同主席の現場主義に立脚した究明並びに研究に因るところが大きく、かつ多くの人の意見や提案・助言を取り入れて策定していると言える。
3. 質素な生活
父親はまた、他の人に規律を尊ばせようとしたなら、まず自身や家族が率先する必要があると説いた。
この教えの下習主席は、自身の子供たちを厳しく躾け、かつ質素な生活を送ることを信条としている。
同主席も弟も、小さい頃から姉たちの古着を着たりお下がりの靴を履くのが当然のことのように育ってきた。
そして母親は同主席が地方官吏に就任した際には、家族全員に対して、同主席が関係するような仕事は一切しないよう釘を刺している。
そこで、同主席は、この教えを実践して、自らも家族に対して、自身に関係するような仕事はもとより、自身の名前を使っての商売等も一切許さないという“無慈悲な対応”を取ってきた。
更に、福建省、浙江省、上海市等の幹部を歴任した際も、部下たちに対して、自身の名前を使って私欲を満たすことがないようきつく申し渡し、かつ、かかる事態が発生しないようしっかり監督するようにも厳命してきている。
(注)八大元老:1980年代から1990年代にかけて強い権力をふるった中国共産党の長老集団。非公式集団でありながら、党の最高指導部である中央政治局常務委員会を凌ぐ権威を持っており、重要な決定は八大元老に委ねられることもあった。
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3月16日付
『CNBCニュース』:「アリババのブラウザが中国のアプリケーションストアから削除」
英経済紙『フィナンシャル・タイムズ』(1888年創刊)報道によると、中国IT大手アリババのウェブブラウザ(注後記)が、中国のアプリケーションストア(ITアプリのダウンロードサービスを提供する場)から削除されていることが判明した。
この背景には、アリババと中国共産党政府との確執があると考えられる。
『CNBC』が中国のユーザーにインタビューしたところ、ファーウェイ(1987年創業の通信機器大手メーカー)及びシャオミ(2010年創業の総合家電メーカー)が運営しているアンドロイド・アプリケーションストアにおいて、アリババのウェブブラウザのダウンロードがブロックされているという。
ただ、韓国サムソン(1969年創業の総合家電・電子製品メーカー)や米アップルのアプリケーションストアではまだアリババのウェブブラウザが使用できるという。
この事態が判明する直前、中国国営『中国中央テレビ(CCTV)』(1958年設立)が、アリババのウェブブラウザが医療広告で間違った情報を提供しているとの非難報道をしていた。
同報道によると、同ブラウザが提供するリサーチツールが、中国国内最良の病院として私立病院を提言するように仕向けていて、公立病院に行こうとしていた患者を当該病院に誘い込むような手段となっていたという。
アリババのウェブブラウザ・チームの広報担当は『CNBC』のインタビューに答えて、“同テレビ番組報道にある問題については、今後とも最大級の優先課題としてチェック・是正を試みていく”とした上で、“同番組で「違法な広告事項」と指摘されたリサーチツールは、すぐさま削除している”とコメントしている。
一方、『CCTV』報道によると、習近平国家主席(シー・チンピン、67歳)が3月15日、中国経済諮問委員会の会合において、“IT企業大手に対する取り締まりに着手した”と語り、“いくつかのITプラットフォームは基準を満たしておらず、リスクが存在しているからだ”と付言している。
なお、中国当局は昨年11月、アリババグループ傘下のアントグループ(2014年創業の、世界最大のモバイル・オンライン決済プラットフォーム運営会社)による370億ドル(約4兆330億円)と見込まれる新規上場を差し止めている。
(注)ウェブブラウザ(インターネットブラウザ):パソコンやスマートフォン等を利用してウェブサーバに接続するためのソフトウェアであり、ウェブページを表示したり、ハイパーリンクをたどったりするなどの機能がある。主なウェブブラウザとして、グーグルクローム、マイクロソフトエッジ、インターネットエクスプローラー等がある。
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