フィリピンのドゥテルテ大統領は、昨年の6月末に就任以来、超法規的な殺人をも許容する麻薬犯罪撲滅政策を強行している。爾来、1万2千人以上の被疑者が犠牲になっているが、国際人権団体からは、根拠が疑わしい殺人を含めて、人権蹂躙と非難されている。そして更に先週、一部警察官のでっち上げとみられる17歳の高校生殺害事件が発生したことから、市民の間にも警察官はやり過ぎとの非難の声が上がり始めた。そこでさすがの同大統領も、容疑者殺害は“自身の身を守る等止むを得ない場合”に限るよう警察官に訓辞せざるを得ない事態となっている。
8月23日付米
『ロイター通信米国版』:「フィリピンの大統領、警察官に対して麻薬犯罪取り締まりに当って容疑者殺害は止むを得ない場合に限ると訓示」
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は8月24日(マニラ時間)、麻薬犯罪取り締まりに当っている警察官を前にして、麻薬撲滅キャンペーンは続行するが、容疑者殺害は警察官自身の生命が危険に曝された場合に限ると訓示を垂れた。
マニラでは先週、同大統領が就任以来、最大規模の麻薬犯罪取り締まり捜査が行われ、90人以上の容疑者が殺害された。...
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8月23日付米
『ロイター通信米国版』:「フィリピンの大統領、警察官に対して麻薬犯罪取り締まりに当って容疑者殺害は止むを得ない場合に限ると訓示」
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は8月24日(マニラ時間)、麻薬犯罪取り締まりに当っている警察官を前にして、麻薬撲滅キャンペーンは続行するが、容疑者殺害は警察官自身の生命が危険に曝された場合に限ると訓示を垂れた。
マニラでは先週、同大統領が就任以来、最大規模の麻薬犯罪取り締まり捜査が行われ、90人以上の容疑者が殺害された。しかし、その中に17歳の高校生キアン・ロイド・デロス・サントス君が含まれていて、防犯カメラの映像から、一部警察官によって容疑者に仕立て上げられて殺害されたと疑われている。
多くの一般市民は、麻薬撲滅キャンペーンのお蔭で、麻薬関連犯罪が減り、市内は安全になりつつあるとするも、今回の警察官の取り締まりについてはやり過ぎとの声がある。
また、国際人権団体含めて、同キャンペーンに反対している活動家らは、同大統領がこれまで、超法規的な殺人を擁護していることを強く非難している。
8月24日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「フィリピン警察、“恐るべき”戸別訪問しての薬物検査を実施」
フィリピンの市民人権活動家グループは8月23日、警察官がスラム街を戸別訪問して薬物検査を始めたことに強い非難の声を上げた。
かかる捜査を受けたケソン市(マニラ首都圏内の都市)北東のパヤタス地区(ゴミ処理場のあるスラム街)では、同地区内の麻薬犯罪に手を焼いているものの、戸別訪問しての薬物検査はおぞましいこととの意見がある。
なお、パヤタス地区の13万人余りの住民のうち、300人以上が麻薬犯罪に関わる要注意人物としてリストアップされている。
一方、人権擁護団体や反ドゥテルテグループは、先週起こった17歳の高校生殺害事件を受けて、同大統領の麻薬撲滅キャンペーン対象が、当局に対抗する術を持たない貧民や下層階級に向けられていると糾弾している。
同日付中国『上海日報』:「フィリピン警察、薬物検査を実施」
フィリピン警察が戸別訪問しての薬物検査を実施したパヤタス地区は、マニラ首都圏内では最も貧しい地区であり、犯罪の巣窟とも呼ばれている。
ドゥテルテ大統領が就任して14ヵ月間に、麻薬撲滅キャンペーンの一環で同地区の十数名が犠牲になっている。なお、全国では犠牲者数は1万2千人以上に及ぶ。
ただ、パヤタス地区のマーリーン・オカンポ区長は、麻薬犯罪撲滅のためには止むを得ないことで、また、同地区から犯罪をなくすため様々な支援をしていく考えであると語った。
また、ケソン市警のグゥイラーモ・エレザール署長は、薬物検査はパヤタス地区に限っており、また、警察は同地区行政を手助けしているだけだと述べている。
一方、同日付フィリピン『マニラ・ブルティン』紙:「ドゥテルテ大統領:証拠の捏造は止めるよう警察官に訓示」
ドゥテルテ大統領は8月23日、フィリピン国家警察の警察官を前にして、自身は職務に忠実な警察官を支持するが、検挙率を上げるため証拠を捏造したりする警察官は一切擁護しないと訓示した。
これは、先週行われた最大規模の麻薬犯罪取り締まり捜査において、容疑者としては疑わしい17歳の高校生が殺害された事件が契機となっている。
なお、同大統領は、高校生殺害に加わった警察官を特定し、きちんとした調査を行った上、必要に応じて法の裁きを受けさせると言明している。
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中国人民銀行の2月7日の発表によると、中国の1月末の外貨準備高が節目の3兆ドルを割り込んだ。2014年6月末のピーク時には4兆ドル弱まで積みあがった外貨準備はその後の中国経済の減速を受けて資本流出が進み遂に3兆ドルを割った。最近は外貨準備の減少速度も低下して来てはいるが、中国通貨元の安定化も道半ばと言わざるを得ない。
2月7日付香港
『サウスチャイナモーニングポスト』は、「中国の外貨準備高6年ぶりに3兆ドルを切る」という見出しで、中国の外貨準備が2011年2月以来初めて心理的な水準である3兆ドルを下回ったと報じた。準備は先月123億ドル減少し12月よりは減少幅が縮まったが、昨年末に導入した資本流出規制や最近のドル安を勘案すると予想以上の減少であった。一方で3兆ドルは心理的なものに過ぎず、先月元は強含んでおり、厳しい資本規制が効果を上げて資本流出は概ね縮小しているとみるアナリストもいる。中国の外貨規制当局も平然を装っており、国家外国為替管理局の声明は、海外旅行のための外貨購入と外債償還という季節要因を予想以上の減少の理由とし、中国の資本流出は緩和しており解消に向かうので現在の外貨準備高で十分であると述べている。
米国トランプ候補の大統領選勝利とFRBの利上げを受けて米ドルは昨年第4四半期に7.1%切り上がったため、中国当局は外国投資と外貨購入を強力に規制した。しかしながら最近のトランプ大統領の保護主義的発言でドルは先月2.7%切り下がっている。ドル高の継続が止んだため中国当局は資本規制が容易になったと見ている。あるアナリストは中国の債券市場開放もあり、2017年資本流出は縮小し、外貨準備の減少ペースも減速すると語っていると報じている。
2月8日付英文版
『上海日報』は、「減少するも十分な外貨準備」という見出しで、中国の外貨準備が1月7ヶ月連続で減少し2011年2月以来の3兆ドル割れとなったが、未だ十分な水準であるという国家外国為替管理局の声明を報じた。当局は減少理由を中国の旧正月に伴う海外旅行の増加で外貨購入が増加したためとした。1ヶ月の減少額としては12月の411億ドルや、昨年1月の995億ドルに比べて大きく減少している。当局者は3兆ドルが安全水準であるという考えを退け、現在の残高で十分であるとしていると伝えている。
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