習近平国家主席(シー・チンピン、68歳)は7月1日、中国共産党100周年の記念式典で、台湾統一含めて西側諸国の外圧を一切受け付けずに中国共産党の思いを実現すると高らかに宣言した。そうした中、日米両国は、中国軍による台湾侵攻や東・南シナ海制圧の実力行使を牽制すべく、大規模共同軍事演習を公開している。
7月1日付
『ワシントン・フリー・ビーコン』オンラインニュース(2012年設立の保守系政治専門メディア):「日米両国、中国軍牽制のため共同実戦訓練を展開」
日米両国は現在、中国軍の攻撃的かつ危険度の高い軍事行動を牽制するべく、共同実戦訓練を展開している。
英国『フィナンシャル・タイムズ』紙(1888年創刊)は6月30日、バイデン政権と菅義偉首相(72歳)最高顧問が協同して、中国軍による台湾侵攻や南シナ海制圧のための実力行使を阻止すべく、大規模実戦訓練「オリエント・シールド2021(注後記)」を主導していると報じた。
この背景には、中国軍が国産初の空母を建造したり、最新鋭ミサイルシステムやその他殺傷能力の高い武器の開発に注力していることや、直近でも台湾領空に最多となる戦闘機を派遣して挑発してきていることがある。
トランプ政権下で国防総省前次官(インド太平洋地域安全保障問題担当)だったランドール・シュライバー氏(53歳、2018~2019年在任)は、“中国軍は様々な手段で、日米両国に台湾問題を考えさせるように仕向けている”とした上で、“台湾及び尖閣諸島海域で挑発的行動を同時進行させてきていることから、具体的な武力行使の恐れが間近に迫っている“と警鐘を鳴らした。
米海軍大将だったフィル・デビソン前インド太平洋軍司令官(60歳、2021年5月退役)も今年3月、米議会公聴会において、“中国は今後4~6年以内に台湾に軍事侵攻する恐れがある”と証言している。
そうした中、習近平国家主席は7月1日、中国共産党100周年記念式典において、中国と台湾の“祖国統一”は何が何でも達成するとし、如何なる外圧も“打ち壊す”と高らかに宣言している。
ただ、台湾支援の姿勢は米議会の中で必ずしも普遍的ではない。
例えば、民主党主導の下院外交委員会は、共和党が提案した台湾の外交・防衛支援策を退けてしまった。
共和党タカ派議員は『ワシントン・フリー・ビーコン』のインタビューに答えて、バイデン政権は、膨張する中国の軍事力に対抗するために必要な海軍増強や太平洋地域の防衛策強化に関わる2022年国防予算を減額してしまった、と非難している。
(注)オリエント・シールド2021:「東洋の盾」と呼ばれる日米共同訓練で、陸上自衛隊及び米陸軍の実働訓練として最大規模。1985年を皮切りに毎年実施されていて、今年は6月18日から7月11日の間、鹿児島県奄美市名瀬の陸上自衛隊駐屯地や北海道矢臼別演習場等で実施。前者では、米陸軍の地対空誘導弾(PAC3)と陸自の中距離地対空誘導弾(中SAM)が、また、後者では米陸軍高軌道ロケット砲システム(HIMARS)と陸自多連装ロケットシステムの実弾訓練をそれぞれ実施。米陸軍約1,600人、陸自約1,400人、合計約3,000人が参加する最大規模の訓練となっている。
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米国大統領は過去40年間、就任早々に中東の同盟国イスラエル首脳に就任挨拶の電話をかけるのが慣例になっていた。しかし、ジョー・バイデン新大統領(78歳)は、極端にイスラエル寄り政策を取って反って中東を混乱に陥れた前任者に抗うかのように、就任後23日経っても電話連絡を入れようとしていない。
2月12日付米
『ワシントン・フリー・ビーコン』オンラインニュース(2012年設立の保守系メディア):「バイデン新大統領、40年振りにイスラエルに背を向ける対応」
ジョー・バイデン大統領は、40年振りに中東の雄であるイスラエルに対して背を向ける対応を取ろうとしている。
すなわち、歴代大統領は、就任以来かなり早い段階で、イスラエル首脳に対して就任挨拶の電話をかけてきているが、同大統領は、就任後23日も経つのに一向に電話をかけようとしていないため、今後4年間、米・イスラエル関係が冷え込むことを暗示している。
同大統領は、宿敵とされるウラジーミル・プーチン大統領(68歳)や習近平国家主席(67歳)含めて主要10ヵ国の首脳と既に電話会談を実施しているにも拘らず、今回の対応は直近40年の米大統領史で特筆すべきことになっている。
これまでの歴代大統領の対応は以下であった。
●ロナルド・レーガン(1981~1989年在任の第40代共和党大統領):就任後1週間以内に電話会談を行っただけでなく、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官(1973~1977年在任)を訪問させて、米・イスラエル関係盤石化をアピール。
●ジョージ・H.W.・ブッシュ(1989~1993年在任の第41代共和党大統領):就任後5日目の1月25日、イツハク・シャミル首相(1986~1992年在任の第10代首相)と電話会談。
●ビル・クリントン(1993~2001年在任の第42代民主党大統領):就任後3日目の1月23日にイツハク・ラビン首相(1992~1995年在任の第11代首相)と電話会談。
●ジョージ・W.・ブッシュ(2001~2009年在任の第43代共和党大統領):1月27日にエフード・バラック首相(1999~2001年在任の第14代首相)に電話をかけ、米・イスラエル同盟関係支持を表明。
●バラク・オバマ(2009~2017年在任の第44代民主党大統領):就任当日の1月20日、エフード・オルメルト首相(2006~2009年在任の第16代首相)と同時にパレスチナ自治政府のサラーム・ファイヤード首相(2007~2013年在任の第5代首相)にも電話をかけ、中東和平の道を模索。但し、両政府の直接交渉は2014年に破綻。
●ドナルド・トランプ(2017~2021年在任の第45代共和党大統領):ベンヤミン・ネタニヤフ首相(2009年就任の第17代首相)を就任直後の1月22日、ホワイトハウスに招き入れ、イスラエル偏重の姿勢を顕示。
今回、バイデン大統領がイスラエルに対して頑なな対応に出ている背景には、若い時代に反イスラエル運動を展開していたメイハー・バイター氏を国家安全保障会議諜報担当トップに任命したことや、同じくイスラエル非難派のロバート・マレー氏(57歳)を国務省イラン特命全権公使に据えたことが挙げられる。
また、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官(42歳)は2月12日の記者会見で、同大統領がいつイスラエル首相に電話をかけるのか、あるいは電話もしないのかについて明らかにしなかったばかりか、ホワイトハウスはイスラエルを同盟国の中に入れていないとまで表明している。
同大統領の対応に対して、野党・共和党議員は一斉に反発している。
まず、下院外交委員会(HFAC)委員のマーク・グリーン議員(56歳、テネシー州選出)は2月11日、『ワシントン・フリー・ビーコン』のインタビューに答えて、“10ヵ国余りの主要国首脳に電話をかけているのに、何故イスラエルには電話しないのか理解できない”とした上で、“イスラエルは、米国含めて、世界のどの国からも尊敬される国だ”と強調した。
また、同じくHFAC委員のロニー・ジャクソン議員(53歳、テキサス州選出)も、“米・イスラエル関係は、数えきれない程の理由から、国家安全保障上不可欠なものとなっている”とした上で、“民主党極左グループの意見は無視して、可及的速やかにネタニヤフ首相に電話をするよう強く求める”と主張している。
一方、2月14日付イスラエル『ザ・タイムズ・オブ・イスラエル』紙(2012年創刊の英字紙):「イスラエル大使、バイデン大統領からの電話がなくともネタニヤフ首相は動揺せずと表明」
駐米イスラエル大使のジラード・アーダン氏(50歳)は2月13日、イスラエルの『チャンネル12』(2017年設立)のインタビューに答えて、バイデン新大統領は目下新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題や経済等の国内問題に注力している最中であるので、“大統領から電話での就任挨拶がなくとも、ネタニヤフ首相は全く困惑していない”と語った。
メディア等でバイデン大統領がイスラエル首相に電話をしていないことで、いろいろ噂が立っているが、イスラエル首相も米高官もその一切を否定している。
ホワイトハウスは2月12日、3週間経ってもイスラエル首相に電話しないことで意図的に同首相を嘲っているという話を全面否定した。
事実、同大統領はこれまで、中東のどの首脳とも電話会談をしていない。
2月12日の記者会見で、ホワイトハウスのサキ報道官は、“いつとは言えないが、大統領はネタニヤフ首相に電話をかける意図を持っている”とし、“米・イスラエルは長く大切な関係にある”と明言している。
同首相とバイデン大統領とは、数十年続く長年の知己である。
また、同大統領は、上院また副大統領時代を通して、長い間イスラエルを温かく支持してきている。
実際、昨年11月の大統領選で当選後まもなく、同氏からネタニヤフ首相に電話が入っている。
なお、バイデン新政権のアントニー・ブリンケン国務長官(58歳)、ロイド・オースティン国防長官(67歳)、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当、44歳)は既にイスラエル側高官と会談しており、また、米中央軍(中東全域及び中央アジア一部を管轄)のケネス・マッケンジー・ジュニア司令官はイスラエル訪問済みである。
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