昨年5月のミネアポリスで起きたジョージ・フロイド事件の後、全米で人種差別や警察による残虐行為に対する抗議運動が起こり、警察の「廃止」や「予算打ち切り」を求める声が高まった影響で、数カ月の間に退職者が続出した。警察署では経験豊富な警官が大量に退職している一方で新たな志願者が少なく、治安の悪化を招き始めている。
米紙
『ワシントン・タイムズ』によると、全国の警察官が、予算削減、政策変更、反残虐行為への抗議の中で、記録的な速さでバッジを返却しているという。昨年、ニューヨーク警察では推定5,300人の警官が早期または定年退職し、シアトルでは200人以上の警官が離職し、首都のワシントンD.C.では、昨年夏にワシントンD.C.議会が大幅な警察改革を実施して以来、3,700人強の警察官の内300人が早期退職した。
D.C.警察組合の会長グレッグ・ペンバートンは、ワシントン・タイムズ紙に対し、「警察官は驚くべき速さで辞めており、様々な地域で犯罪が急増している」と語った。...
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米紙
『ワシントン・タイムズ』によると、全国の警察官が、予算削減、政策変更、反残虐行為への抗議の中で、記録的な速さでバッジを返却しているという。昨年、ニューヨーク警察では推定5,300人の警官が早期または定年退職し、シアトルでは200人以上の警官が離職し、首都のワシントンD.C.では、昨年夏にワシントンD.C.議会が大幅な警察改革を実施して以来、3,700人強の警察官の内300人が早期退職した。
D.C.警察組合の会長グレッグ・ペンバートンは、ワシントン・タイムズ紙に対し、「警察官は驚くべき速さで辞めており、様々な地域で犯罪が急増している」と語った。メリーランド州ボルチモアの警察友愛会の会長マイク・マンキューソは、昨年から300人近くの警官が減り、「刑事も人手不足で事件処理に追われている」と述べている。また、「凶悪犯罪者の捜索はおろか、911番通報に対応する時間もほとんどないため、犯罪撲滅に直接的な影響を与えている」と語った。
警察友愛会「ウエスタン・ニューヨーク・ロッジ103」の元会長ポール・ビークマン・ジュニア氏は、警察の予算打ち切りを求める動きを「これまでで最も誤った考えの一つ」と述べた。ビークマン氏は6月に『タイムズ』紙に対し、この運動により35年間の警察官としてのキャリアを打ち切ったと語っている。同氏は、警察官が少なくなることによって「残業が余儀なくされ、疲れた警察官がパトロールを行うことになる。」と指摘。「通常であれば落とされるような候補者を採用せざるをなくなる。こうしたことが、より大きな問題を引き起こすことになるだろう。」と懸念を述べた。
警察の予算打ち切りを求める声が大きくなるにつれ、警察予算の大幅な削減に応じる地方議員も出てきた。しかし、タイムズ紙が分析したデータによると、昨年、警察予算を大幅に削減した少なくとも9つの都市では、殺人件数が68%近く増加している。比較的小規模で象徴的な範囲でのみ警察予算の削減を行ったワシントンD.C.のような都市でも、凶悪犯罪が大幅に増加した。
米『ワシントン・ニュースポスト』によると、バウザーD.C.市長の2020年予算案には、メトロポリタン警察への約1800万ドル(約20億円)の増額が含まれていたが、議会で承認された最終予算は、前年の予算と比較して減額されたものとなった。70万人以上の人口を抱える同市では、2020年末までに198件の殺人事件を記録し、過去16年間で最高となった。
また、ペンバートンD.C.警察組合会長によると、警察官の数は3,300人以下で、これは過去数十年で最も少ない数だという。同会長は、警察官の減少は、「壊滅的な状況に向かっている」とし、「警官は、疲れて、消耗して、ヘトヘトになっている」と述べた。5月5日時点でのワシントンDCの犯罪統計によると、市内の殺人事件は昨年の同時期に49件だったのが66件と35%増加している。
なお、昨年以降に退職した警官のほとんどは、夏に可決されたD.C.議会の緊急警察改革法案を理由にしていたという。ペンバートン会長は、議会がいくつかの条項を変更しない限り、「警察から人が離れていき、犯罪は急増し続けるだろう」と述べ、「これは正しい事ではない。なぜなら、最も被害を受けているのは、最も脆弱な地域であり、それは通常、少数民族の地域だからだ」と指摘している。「殺人、銃撃、レイプ、強盗などの被害が毎日のように発生しており、こうした地域や人々は安全だと感じていない。」と述べた。
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