仏メディア:Brexitなんて恐くない-勝組独走のGoogle(2016/11/18)
ブレグジット(Brexit/英国離脱)の影響がじわじわ浸透し、勝ち組と負け組の明暗が明確に分かれた。その中でぶっちぎりの独走状態はグーグル社だ。仏メディアの報道から米IT企業の強さが改めてわかる。
『ルモンド紙』は「ブレグジットは怖くない」と題して、グーグル社が巨大オフィスビルをロンドン中心地北部に建設する事を報じる。ブレグジット後も「ロンドンは魅力的な都市である証拠」と伝える。
「ルモンド紙」によると、ロンドンのカーン市長とハモンド英財相はこの知らせを熱狂的に歓迎したが、誘致した訳ではない。グーグルは法人税が安いアイルランドへの利益移転でEU加盟国と争ってきた。フランスも当事国だが、納税の基準となる「永続的な事業所」を保有しない事を論拠として各国と争う。...
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『ルモンド紙』は「ブレグジットは怖くない」と題して、グーグル社が巨大オフィスビルをロンドン中心地北部に建設する事を報じる。ブレグジット後も「ロンドンは魅力的な都市である証拠」と伝える。
「ルモンド紙」によると、ロンドンのカーン市長とハモンド英財相はこの知らせを熱狂的に歓迎したが、誘致した訳ではない。グーグルは法人税が安いアイルランドへの利益移転でEU加盟国と争ってきた。フランスも当事国だが、納税の基準となる「永続的な事業所」を保有しない事を論拠として各国と争う。しかし「英国は、英税務当局が狙った訴追を、租税協定を締結して終結」させ、大事業所を建設する。
「ルモンド紙」は、対決姿勢のEUに対し「起業家と投資家に合致する税制優遇措置」を一早く締結した英国の方針は、ブレグジットで加速したと示唆する。EUの試算では、ロンドンへの起業投資は2016年増加し続け、第一四半期で既に13億ユーロに達した。ストックホルム10億、パリ7億弱と比べて遥かに多い。ピンチをチャンスに変えたグーグルの手腕も際立つが「ITはブレグジット後の英国を狙う」とお報じる通り、IT業界全体の動きのようだ。一方フランスが「グーグルから追徴課税徴収に失敗」し、「投資を呼ぶ税制優遇措置へと進まない」事と対比させ揶揄する。
「ルモンド紙」は「グーグル社はブレグジットもその影響も殆ど意に介さない」と言い切る。グーグルトップが懸念するのは「外国人労働者の就労」のみと言い切る。「メイ英首相もこの議論には敏感」と評し、この部分は難航するとみる。
『トリビューン紙』も「ブレグジットはグーグルを後退させなかった」とグーグルの勝ちぶりを報じる。「トリビューン紙」によると、キングスクロス駅そばの好立地の10階建て巨大オフィスビルの収容人数7000人は現在の従業員数より3000人多く、雇用創出に貢献する。交渉材料になったと考えられる。10億ポンド以上投資である。グーグル欧州CEOは「IT技術が英国の原動力となる」、「様々な分野からくる研究で人々を結集させる」と自信をみせる。同時にこの点でCEOはシェンゲンを失うブレグジットの影響を懸念する。また、「トリビューン紙」は、協定で帳消しになった1億3千万ポンドの追徴課税自体も既に「特別扱い」の金額だったと指摘する。
また
『レゼコー紙』は「ブレグジットの勝者と敗者」と見出しを付けて、勝ち組と負け組を分けた。ポンド安で英国外に生産拠点をもつ企業は、販売価格引上げに踏切り、直接打撃を受けた。またスーパー等小売り大手で、メーカーからの価格引き上げ要望拒否の力比べを余儀なくされた。EDFなど大手は卸売価格を引上げた。上場企業トップ100では、英国外での売上げが全体の72%を占めており業績が良い。しかし輸出企業でも自動車業界等では、コストの殆どが外貨建で契約が作成され、今後コスト高に見舞われる。外国人観光客の伸びはこの夏歴史的な伸びを記録したが、英国人の海外旅行は激減した。
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COP22:米投資家トランプ氏へ圧力(2016/11/17)
昨年議長国フランスのメディアは、パリ協定合意を求めて特に米国の投資家や大企業が中心となって意見書を出していた事に注目し、気候変動枠組み条約に加盟する全196か国採択という快挙を成し遂げた影の立役者の一つと見た。今回もトランプ次期大統領に対する米国企業や投資家など資本主義の圧力に注目する。
『ルモンド紙』は、「パリ協定から離脱しないよう多国籍企業がトランプ氏に求める」と題して、16日マラケシュで始まった気候変動会議(COP22)早々に、米国を中心に企業、投資家、事業家の意見書が発表された事を報じる。意見書の中で昨年COP21で採択されたパリ協定の取組みと温室効果ガス削減のための政策継続を改めて求めた事を「企業や投資家の警告」と評する。
意見書には名だたる大企業(インテル、ヒューレット・パッカード、イーベイ、ナイキ、デュポン等)に加え、中小企業も名を連ねる。...
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『ルモンド紙』は、「パリ協定から離脱しないよう多国籍企業がトランプ氏に求める」と題して、16日マラケシュで始まった気候変動会議(COP22)早々に、米国を中心に企業、投資家、事業家の意見書が発表された事を報じる。意見書の中で昨年COP21で採択されたパリ協定の取組みと温室効果ガス削減のための政策継続を改めて求めた事を「企業や投資家の警告」と評する。
意見書には名だたる大企業(インテル、ヒューレット・パッカード、イーベイ、ナイキ、デュポン等)に加え、中小企業も名を連ねる。「気温上昇を2度未満に抑制するために、自分達の分担分を達成するよう努力」、「企業と国家両方が結集する事が必須で、環境とビジネス両方を維持する最良の手段」と並々ならぬ決意で圧力をかけた。これら企業には持続可能な発展に関連する部署があり、今回の意見書の署名者(社)の殆どはCOP21から参加しており、トランプ氏当選の翌日に直ぐに再結集した。世界自然保護基金(WWF)もパリ協定の目標達成に民間分野の声が必須と考える事に触れ、民間の力に期待を寄せる。
『レゼコー紙』も民間力に注目するが、パリ協定に関する米国を次の見出しで総括する。「企業のトランプ次期大統領への警告」、「ケリー長官は米国の目標維持を主張」、「化石異燃料の終焉は明日には来ない」。「レゼコー紙」も資本による警告の有効性を認め、「トランプ氏の気候変動懐疑主義によって、米国が気候への取組みを放棄する事になならない」との見方を示し、「企業や投資家が意見書で打ち出した要求は、低炭素経済の米国が将来繁栄するための条件の一つ」と意義付ける。また、負担を強いられるはずの民間企業の中でも米国ビジネスのアイコンともいうべき企業がパリ協定の目標達成のために、自分の分担分を果たす準備が出来ていると、進んで言ってきている」と、驚きをもって確実性を見出す。
また、
『フィガロ紙』によると、COP22での演説で、「再生可能エネルギーが徐々に競争力をつけて、気候とエネルギー需給両方の観点から選択できるよう方向づけるのは“市場”」と、ケリー米国務長官も述べており、民間力に期待をよせる。
とはいえ、直ぐに状況が改善する訳ではない。
『AFP通信』によると、「米国は現在設定された国際目標を達成するべくあるべき道筋にいる」とケリー長官が述べたものの、「化石燃料は使用料が増え続け、国際エネルギー機関(IEA)は、「石油ガス石炭は、以前2040年のエネルギー消費の74%に相当する」と予測を出し危機感を示す。トランプ政権がパリ協定に留まったとしても、道のりは長い。
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