フランスエリート養成校、卒業生らが学校の左派化とイスラム化を警告(2021/12/28)
フランス屈指のエリート養成校であるグルノーブル政治学院で、何人かの学生から「イスラモフォビ(イスラム嫌悪)」とのレッテルを張られた教師が4カ月間の停職処分を受けたことで、フランス国内で波紋が広がっている。地元当局は学校への資金提供を打ち切ることを発表し、政府からも学校に対する糾弾の声が上がっている。
仏メディア
『フランスアンフォ』によると、今年の3月4日、グルノーブル政治学院の複数の学生たちが、大学の入り口に「講義室にファシストがいる。イスラム嫌悪は人を殺す」という見出しのもと2名の教授の名前を載せたポスターを貼った。このポスターは学生組合によってすぐにソーシャルネットワーク上で拡散された。
ポスターに名前が載せられた2名の教授のうちの1人、クラウス・キンザー教授は25年間同大学でドイツ語を教えてきた。...
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仏メディア
『フランスアンフォ』によると、今年の3月4日、グルノーブル政治学院の複数の学生たちが、大学の入り口に「講義室にファシストがいる。イスラム嫌悪は人を殺す」という見出しのもと2名の教授の名前を載せたポスターを貼った。このポスターは学生組合によってすぐにソーシャルネットワーク上で拡散された。
ポスターに名前が載せられた2名の教授のうちの1人、クラウス・キンザー教授は25年間同大学でドイツ語を教えてきた。2020年11月末に、「男女共同参画・反差別週間」の準備のための教員と学生の非公式の共同作業の後、教授をめぐる論争が起こったという。キンザー教授は、「私は、人種差別、反ユダヤ主義、イスラム恐怖症に特化したイベントが、ひとくくりにしたタイトルで企画されていることが気に入らないとはっきりと言いました。これにはショックを受けました。私から見ればナンセンスです。しかし、このタイトルに疑問を持ったことに対して、学生たちは傷ついてしまったようです。」と説明している。そして、「1年か2年前は話ができた。私はリベラルな方です。意見が合わなくても、そこまでだった。今は、表現の自由はもはや政治学院には存在しない。相手が気に入らない言葉を口にすると、威圧されたり、集団的攻撃を受けたりする。イスラム教について議論することは不可能になり、学内の雰囲気は有害になっている。(イスラム原理主義者に殺害された)サミュエル・パティに起きたことを考えてしまう」と述べている。
仏紙『ルフィガロ』によると、キンザー教授はこの事件の後、4カ月の停職処分を受けた一方で、2人の教授を人種差別とファシズムだとポスターで告発し、彼らを危険にさらした学生たちは懲戒委員会によって無罪となった。同紙は、被害者を処罰し、罪を犯した学生たちを無罪にした大学の対応は、衝撃的であると伝えている。
こうした動きに対し、政治学院卒業生40人ほどが高等教育大臣に、イスラム左派が大学を支配していること、検閲の試みだとも言える停学処分という措置について対応するよう訴えた。
12月26日付の仏紙『JDD』に掲載された記事で、卒業生たちは、グルノーブル政治学院が置かれている「危険な流れ」を糾弾した。「特定の教員・研究者や学生によって煽られ、大学にはふさわしくない内部イデオロギー戦の道具と化している」と指摘している。そして、「特定のテーマについて討論する意志があったという理由で教師が脅迫され、今では停職処分になることは容認できない」と断言している。表現の自由、議論の必要性、様々な感性の間でバランスを取ることの重要性などは、「政治学院のような機関において尊重され求められる」べき「原則」であるとし、「もし集団組織がこのような漂流を許すなら、それは徹底的に改革される必要がある」として包括的な検討を呼びかけた。卒業生たちは「高等教育大臣をはじめ、教育機関の管理・意思決定機関には、この不可欠なバランスを保証するためにあらゆる手段を講じてほしい」と要請している。
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欧州委員会で「クリスマス」論争(2021/12/17)
クリスマスシーズンのヨーロッパで、現在、欧州委員会内で語義に関する議論が展開されている。欧州委員会のヘレナ・ダッリ平等担当委員は、クリスマスを表現することは「十分に包括的ではない」として、10月末、包括的コミュニケーションに関する内部ガイドを発表し、その中で、クリスマスへの言及を削除するよう呼びかけた。しかし、非難の声が上がったため、その後ガイドは撤回された。
仏誌
『ルポワン』によると、欧州委員会のヘレナ・ダッリ平等担当委員は10月末に、包括的コミュニケーションに関するガイドの中で、12月25日をクリスマスの日と呼ばないことを推奨した。ガイドは、キリスト教の祝日に言及することは「全員がキリスト教信者であることを前提にしている」と主張していた。
仏誌『ヴァルール・アクチュエル』によると、ダッリ委員の提出したガイドは、すべてのコミュニティが参加できるように、クリスマスへの言及を禁止し、代わりに「休日」という表現を使用するよう勧告していた。...
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仏誌
『ルポワン』によると、欧州委員会のヘレナ・ダッリ平等担当委員は10月末に、包括的コミュニケーションに関するガイドの中で、12月25日をクリスマスの日と呼ばないことを推奨した。ガイドは、キリスト教の祝日に言及することは「全員がキリスト教信者であることを前提にしている」と主張していた。
仏誌『ヴァルール・アクチュエル』によると、ダッリ委員の提出したガイドは、すべてのコミュニティが参加できるように、クリスマスへの言及を禁止し、代わりに「休日」という表現を使用するよう勧告していた。「マリー」や「ジョン」といったキリスト教の名前も、欧州委員会の資料では、例題として使用することを禁止していた。
米メディア『ニューズマックス』は、こうした動きに真っ先に反論したのがバチカンだと伝えている。バチカン国務省長官のピエトロ・パロリン枢機卿は、「ヨーロッパは、その存在とアイデンティティは、様々な影響力によって成り立っている。しかし、主要な影響力の1つはキリスト教であったことを忘れるわけにはいかない。違いを破壊し、ルーツを破壊することは、まさに人間を破壊することを意味する」とガイドを糾弾した。
仏紙『ルフィガロ』などのフランスメディアは、フランスの欧州議員であるフランソワ=グザビエ・ベラミも12月15日に欧州議会で反論の意を唱えたことを報じている。ベラミ委員は、「信じられないが、このような日が本当に来た。欧州委員会がキャンセルするつもりでいたクリスマスを、今、救おうとしなければならない。ダッリ委員は、この言葉には十分な包容力がないと考えている。ヨーロッパを作ったルーツに手を伸ばすのは狂気の沙汰だ」と糾弾した。さらに、「クリスマスは単なるお祭りの口実ではない」と指摘し、「私たちが受け継いでいる世界が誕生した日であり、我々の時代の幕開け、年を数える基準」であり、イエス・キリストが誕生したことを祝う日であることを述べた。そして、「我々をつなぐものを否定することは、共通の文化に所属し同化していく可能性を破壊し、社会の崩壊への道を開き、対立を起こす共同体主義の要求につながる」と指摘した。ベラミ委員はさらに、11月には欧州評議会が「私たちは包括的でなければならないので、喜びはヒジャブの中にあると宣言する」というヒジャブ推進キャンペーンを行っていたことを指摘した。
なお、問題視されているガイドは、まだ欧州委員会の承認を受けていないものの、すでに一部の委員会部門に配布されており、スタッフへのトレーニングも現在行われているという。しかし、内部関係者は、「委員会では、共感できる人が少ないと思う」と述べている。
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