ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)の側近情報によると、同大統領は近々、米統合参謀本部議長に史上2人目となる黒人空軍大将を指名する見込みであるという。同大将の指名が米上院で承認されれば、米史上初めて背広組トップ(国防長官)及び制服組トップ(同議長)を黒人が占めることになる。
5月5日付
『AP通信』は、ジョー・バイデン大統領が近々、今年10月に任期満了を迎える統合参謀本部議長の後任として、現空軍参謀総長を指名する見込みだと報じた。
『AP通信』が5月5日、大統領側近2人から聴取した匿名情報によると、ジョー・バイデン大統領は近々、今年10月に任期満了を迎えるマーク・ミリー現統合参謀本部議長(64歳、2019年就任、階級は陸軍大将)の後任として、チャールズ・ブラウンJr.現空軍参謀総長(61歳、階級は空軍大将)を指名する考えだという。
もし同参謀総長の指名が上院で承認されれば、故コリン・パウェル元同議長(1937~2021年、1989~1993年在任、2001~2005年国務長官)に次いで2人目のアフリカ系米国人となる。
更に、ロイド・オースティン国防長官(69歳、2021年就任)とともに、米史上初めて背広組トップと制服組トップを黒人が占めることになる。
ブラウンJr.空軍参謀総長は、飛行時間3千時間超を誇る熟練パイロットであるばかりか、次世代ステルス爆撃機の開発促進等、空軍において様々な部門を歴任していることから、軍事力の台頭著しい中国と戦うことを想定した場合、最も適任と言われていた。
すなわち、中国との衝突の可能性を考えた場合、サイバー戦争、宇宙及び核戦争、超高周波攻撃(可聴域を超える周波数成分を持つ音による人体攻撃)と幅広く対応する必要があるが、同参謀総長はかかる21世紀の戦争に対応できるリーダーシップを有すると評価されているからである。
海兵隊元少将で上院軍事委員会事務責任者も務めていたアーノルド・プナ―ロ氏(76歳)は、“まだ即座に中国の脅威に対抗する措置を講ずる必要性はないが、ブラウンJr.氏は将来の様々な軍事的対応に備える必要となった場合の最適任者となる”とコメントしている。
なお、統合参謀本部議長は直接軍を陣頭指揮する立場にはないが、米国軍制服組のトップであり、大統領・国防長官及び国家安全保障会議にとっての軍事顧問であることから、軍事戦略、本格的攻撃作戦等まで様々な軍事的対応に直接関わることになる重要な任務を帯びている。
閉じる
習近平国家主席(69歳、2012年就任)は、今月中旬に開催される中国共産党第20回代表大会(党大会、注後記)において異例となる3期目の続投が承認される見込みである。そこで、同国家主席が主導する“ゼロコロナ政策”は成功事例のひとつとして堅持されることとなり、この程、新疆ウィグル自治区では1日僅か100人未満の新型コロナウィルス(COVID-19)感染者が発生しただけで、10月1日からの国慶節長期休暇期間であっても、厳格な都市封鎖措置が取られている。
10月6日付米
『AP通信』は、「広大な新疆ウィグル自治区、COVID-19問題で一斉に行動制限」と題して、新疆ウィグル自治区でCOVID-19新規感染者が出たが、1日100人弱にも拘らず、重要な党大会開催直前の事態であることから、“ゼロコロナ政策”の下で厳重な行動制限措置が取られていると報じた。
広大な新疆ウィグル自治区では、中国本土において直近のCOVID-19感染拡大問題に遭っている。
中国では今月中旬、重要事項が決定される党大会が開催されることから、COVID-19感染防止対策がより厳しくなっている。
そこで、10月1日からの国慶節長期休暇期間の真っ只中ながら、人口2,200万人の同地区において厳格な行動制限措置が取られることとなり、同地区に出入りする電車・バスの運行が停止され、また航空便も75%まで減便された。
地元政府の10月4日付発令によると、“感染拡大を断固として食い止めるため、厳格な措置を講じる”としている。
ただ、国家衛生健康委員会(1949年前身設立)の発表では、10月5日の新規感染者は93人、10月6日は97人と僅少数値であるばかりか、全員が無症状であるという。
従って、感染状況と行動制限措置が不均衡となっているが、“ゼロコロナ政策”が絶対的なものであることから疑問を挟む余地はない。
何故なら、同政策を主導してきたと言われる習近平国家主席にとって、党大会において異例となる3期目の続投が決定されるかどうかの重要な局面にあるからである。
更に、COVID-19感染で100万人以上の犠牲者を出している米国に比べて、同国家主席のリーダーシップの下で取られた感染症対策によって、1万6千人弱に抑えられており、如何に同政策が素晴らしいかと喧伝されている。
同国家主席自身も、中国の感染症対策が“素晴らしい戦略の成功例”であり、また、中国の政策決定システムが民主主義を標榜する西側諸国よりも“著しく顕著な利点”であることの証左となっていると表明している。
しかし、中国南西部の貴州省で9月中旬深夜、陽性患者の濃厚接触者であるとの理由だけで夜中に強制的に隔離されようとした人たちを乗せたバスが高速道路を移動中に転落して27人が死亡する事故が発生している。
また、2,600万人の人口を抱え、直近2ヵ月間の都市封鎖措置が講じられた中国最大都市の上海においても、10月6日の新規感染者が僅か11人(但し無症状)であるにも拘らず、引き続き2日間のPCR検査を強制する等の厳格な防疫政策が取られており、国内から不満の声が更に高まってきている。
同日付香港『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』紙は、「中国の感染症専門家、新疆ウィグル自治区の感染拡大に警鐘」として、同地区での感染拡大が懸念されていると報じている。
中国疾病予防管理センター(CCDC、1983年設立)の你明健主任研究員(ニー・ミンチアン)は10月5日晩、先週から発生している新疆ウィグル自治区の新規感染者が、今後更に増える可能性があると警鐘を鳴らした。
同地区では8月に再びCOVID-19感染者の発生が報告され始め、10月6日には首都ウルムチの40人含めて全地区合計で97人の陽性者が出ている。
ただ、無症状患者は452人となっている。
同主任研究員は、感染拡大の原因として、感染が疑われる人々のマスク着用が不適切であったことや、9月からの経済活動再開に伴う人流活発化が考えられるとした。
また、同地区でのPCR検査体制の不十分さで隠れ陽性者が把握できていないことや、限られた医療従事者の激務で二次感染が広がっていることも考えられるという。
その上で同主任研究員は、オミクロン変異株の感染拡大状況等、今後の見通しが読めないこともあり、予断は許さないと強調した。
同自治区の劉崇謝主席代行(リウ・スーシェ)は10月4日、8月以降一部地域での行動制限措置を講じていたものの、感染抑制対策が不十分であったことを認めた上で、同日から公共の電車・バスの運行を停止し、住民の移動を制限して感染拡大を防ぐとの方針を発表している。
なお、同自治区では2020年以来数度にわたり都市封鎖措置が講じられていたが、直近で発生している新規感染者数は過去最大レベルとなっている。
(注)党大会:5年に一度開催される、全国共産党代表によって同党の最重要事項を決定する会議。共産党一党独裁の中国における事実上の最高機関。全国から選ばれた2,200人余りの代表者によって、中央委員205人、中央政治局委員25人、同常務委員7人、総書記1人が選ばれる。なお、毎年3月に開かれる全国人民代表大会(全人代)が憲法上で最高の国家権力機関と定められている。
閉じる