フランスメディアが見る米・キューバ和解
米国とキューバが、1961年キューバ危機以来断絶していた国交を再開すると発表した。対ロシア政策、共産主義国の中国とベトナムとの力関係、オバマ大統領の国交回復の発表に激怒する米国共和党と、様々な思惑が報じられるが、ローマ・カトリックの影響が大きいフランスでは、各メディアが歴史的和解の背後で、ローマ法王フランシスコが中心的な役割を果した事に注目する。
『ラクロワ紙』は「オバマ大統領とラウル・カストロ議長は17日に、1960年以来断絶していた米国とキューバの国交再開を同時に発表」し、「“歴史的”和解に着手するため、オバマ大統領はケリー国務長官に議論の即刻開始を要請し、1962年以来の経済制裁削減を目指す」と報じる。
『ルモンド紙』は「ローマ法王フランソワは、キューバと米国の和解の中心」と題し、両国和解は「外交関係の回復に貢献したバチカンの数か月に渡る仲裁の成果」と評する。...
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『ラクロワ紙』は「オバマ大統領とラウル・カストロ議長は17日に、1960年以来断絶していた米国とキューバの国交再開を同時に発表」し、「“歴史的”和解に着手するため、オバマ大統領はケリー国務長官に議論の即刻開始を要請し、1962年以来の経済制裁削減を目指す」と報じる。
『ルモンド紙』は「ローマ法王フランソワは、キューバと米国の和解の中心」と題し、両国和解は「外交関係の回復に貢献したバチカンの数か月に渡る仲裁の成果」と評する。ラクロワ紙によると、「和解はローマ法王とバチカン政府立ち合いで行われ、バチカン市国は議論に関わった唯一の外国政府である」。
『リベラシオン紙』は「ハバナとワシントンに、各大使館を数か月以内に再開する見通し」と報じる。
『AFP通信』は経緯について、「バチカンはカナダと共に18か月間極秘交渉をとりもったが、議論の中心は両国に抑留中の捕虜で、米国議会グループが法王の支援を求めて2012年3月に、ワシントンのローマ法王庁公式代表部の法王大使公邸に足を運んで以来、バチカンが関わるようになった」と報じ、「法王大使によって、特にキューバに5年間抑留されていた米国人グロス氏の解放交渉が促進された」と伝える。
リベラシオン紙は、「ローマ法王フランシスコはアルゼンチン出身で、初の南米出身の法王であり、個人的にも両国に関与した」と伝え、ルモンド紙は「2014年夏の初めに法王は、一部捕虜の状況を含む共通の関心事に対する人道的問題への解決を訴えて、オバマ大統領とキューバのラウル・カストロ大統領に個人的に二つの書状を両首脳に宛てる」など、個人的訴えの手法に触れる。また、ルモンド紙は「ローマ法王フランシスコが二人の前法王、ヨハネ・パウロ2世(1998年)とベネディクト16世(2012年)のハバナ訪問を継続して、共産主義政権との対話を拒絶しなかった」事に触れ、ローマ法王の成果について「バチカン外交が冷戦終結時に法王ヨハネ・パウロ二世とともにバチカンが持っていた可視性を取り戻す事ができる」と評価する。また「法王大使の外交ネットワークは、世界でも最も広いネットワークの一つである」事、「現法王の外交スタイルは、東欧の共産主義崩壊の最前線に立ったヨハネ・パウロ二世の政治色の強いスタイルとも違う沈黙の外交」だと指摘する。
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パレスチナ国家承認への動き
スウェーデンが始めたパレスチナを、国家承認する動きがヨーロッパで進み、パレスチナも国連に提訴する準備を進めている。フランスの各メディアは、フランスをはじめ、各国の動向と思惑について、下記の通り報じる。
『リベラシオン紙』は、「フランス国民議会(下院)と上院は、パレスチナ国家承認の是非を問う投票を実施する(第一回目が12月2日)。単に目安になる投票だとしても、政府しか正式に承認出来ないので、議会投票は重要な意味を持つ」と報じる。「国連安全保障理事会の決議案(特に1967年の決議案)のように、国際司法裁判所が、明確に領土の境界線を定めた司法文書があるが、ヨルダン川西岸やガザ地区は、1967年以来イスラエルが占領」しているため、「国境や入植問題が、交渉無期限延期になった現状を、国際法に則って仕組みを覆す必要がある。...
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『リベラシオン紙』は、「フランス国民議会(下院)と上院は、パレスチナ国家承認の是非を問う投票を実施する(第一回目が12月2日)。単に目安になる投票だとしても、政府しか正式に承認出来ないので、議会投票は重要な意味を持つ」と報じる。「国連安全保障理事会の決議案(特に1967年の決議案)のように、国際司法裁判所が、明確に領土の境界線を定めた司法文書があるが、ヨルダン川西岸やガザ地区は、1967年以来イスラエルが占領」しているため、「国境や入植問題が、交渉無期限延期になった現状を、国際法に則って仕組みを覆す必要がある。パレスチナが国家承認によって、国連総会の加盟国の地位をすぐ与えられ、法律上同等に、イスラエルと交渉開始出来る」と評する。
『ルモンド紙』によると、「イスラエルは起訴という外交アクションを恐れ、被告人の立場に置かれる。パレスチナはこの夏のガザの戦い(パレスチナ民間人死者2100人)、またはヨルダン川西岸での罪で、起訴に持ち込む可能性がある」。
『レゼコー紙』は、「ネタニヤフ首相は、フランスがパレスチナ国家を承認するのは、重大な過ちと忠告した」と報じる。
ルモンド紙は、「パレスチナは枠組み変更を迫り、イスラエル占領終結の決議案を、安全保障理事会に提示した。パレスチナは米国が棄権する事を望み、米国が拒否権を発動する場合、全ての国連付属機関に加盟し、国際司法裁判所に提訴する意向。また、アラブ連盟の臨時会議で、11月29日に決議案を提出する」と、パレスチナの方向転換を伝える。また、ルモンド紙は、「英国議会も投票を行い、英仏両国の声は、国連安全保障理事会で極めて重要である。安全保障と民族問題の激化への関与で、ネタニヤフ首相に対する欧米の批判が積み重なり、オバマ政権は苛立ちを隠せない。最後まで米国が主導権をとるため仲裁を続けると、アッバス議長の側近が強調した」と、各国の情勢を伝える。
また、「フランスは代替案を探るため、独英との交渉を舞台裏で国連に持ち込む。国際会議を準備し、安全保障理事会に重要な役割を与え、ゆるぎない手続きを促進する考え」と伝え、リベラシオン紙は「国家承認におおむね好意的なフランス世論と一体になって、議会は賛成に投票し、他のEU加盟国を牽引して国家承認加速に寄与する」との見方を報じる。
『フィガロ紙』は「パレスチナが要求する2016年11月の期限が、米国の反感を買い、現地衝突が起きるかもしれない。国際法に違反して、ヨルダン川西岸のイスラエル入植が拡大し、両国が交渉する解決案をこじれさせる」と、決議案が最終確定していない事を示す。
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