フランス紙・「襲撃事件」を深掘りする
風刺的な週刊新聞を発行するシャルリ・エブド襲撃は、フランスが標榜する言論の自由を脅かす事件として、衝撃と怒りが報じられている。一方、フランスのニュース番組
『20 heurs』や
『BBC』を始め、仏欧各メディアは憎悪と敵対心の蔓延と扇動をたしなめる言葉を忘れない。フランス極右政党の国民戦線(Frontier Naional)の議員さえも、インタビューで言葉を選んだ事が報じられた事は印象深い。
『ルモンド紙』を始めフランス各メディアは、フランス全土に広がる“私はシャルリ(Je suis Charlie)”を掲げる「静かな抗議」を象徴的と報じる。
また
『フィガロ紙』は、「今回の襲撃を2つのテロの形が合わさったもの」と分析する。一つ目の特徴は「“名誉の罪”と“見解の違反”が際立つ」事で、この種のテロは報復の観念から標的を選び、通常標的が殺害される。いわゆる、イスラム教宗教指導者が出す宗教的な見解や指導、ファトワである。現代社会における初めての実行例として、「1989年にイランのホメイニ師が、“悪魔の詩”の著者ラシュディ氏に対して呼びかけた死刑宣告のファトワ」を挙げ、「イスラムの名の下で行われる、女性に対する暴力を非難した告発映画“服従”のオランダ人監督テオ・ヴァン・ゴッホ監督が放映後に届いた脅迫を、無視して殺害された2004年が、見解によるテロ時代の幕開け」と位置付ける。...
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『フィガロ紙』は、「今回の襲撃を2つのテロの形が合わさったもの」と分析する。一つ目の特徴は「“名誉の罪”と“見解の違反”が際立つ」事で、この種のテロは報復の観念から標的を選び、通常標的が殺害される。いわゆる、イスラム教宗教指導者が出す宗教的な見解や指導、ファトワである。現代社会における初めての実行例として、「1989年にイランのホメイニ師が、“悪魔の詩”の著者ラシュディ氏に対して呼びかけた死刑宣告のファトワ」を挙げ、「イスラムの名の下で行われる、女性に対する暴力を非難した告発映画“服従”のオランダ人監督テオ・ヴァン・ゴッホ監督が放映後に届いた脅迫を、無視して殺害された2004年が、見解によるテロ時代の幕開け」と位置付ける。フィガロ紙はもう一つのテロの形として「アルカイダタイプの手法」を挙げる。特徴として「犠牲者を最大規模にして精神的ショックを与えるために、計画的に入念に組織される」事と、「個人よりも企業や大使館など、象徴的な標的を選ぶ」事を挙げる。
フィガロ紙は「シャルリ・エブドは、2005年に再開した時にジハード主義者の視野に初めて入った」と報じ、「今回のテロは両方の要素が含まれる点で、新たなテロの形」と分析する。
『リベラシオン紙』も「犯行を実施した3名の内に兄弟2名がフランス警察の危険人物リストに入っていた」事と、「犯行の手口から相当入念に計画されている」と報じ、アルカイダタイプの要素を伝える。また、「アンバランスな孤独な人物像が引き起こしたシドニーの脅威」とは、次元が違う脅威と危険の大きさをフィガロ紙は指摘する。
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フランスメディア・経済学者「ピケティ教授」受勲断わる
経済的不平等を専門とする、フランスのピケティ教授の経済論は賛否が分かれるが、米国では出版ブーム現象が起き、金融批判の根拠として広まり、2011年のウォール街占拠運動に影響を与えた。ピケティ教授が、フランスで最も権威があるレジオンドヌール勲章を拒否した事を、新年からフランス各メディアが報じる。
『レゼコー紙』は「国家改革担当のマンドン国務長官は、経済学者ピケティ教授がレジオンドヌール勲章を拒否した理由は、謙遜からではないとの見解を示した」と報じる。レゼコー紙はこれを、「政府に対する侮辱と見られるピケティ氏の拒否」と評し、「ピケティ氏の決断は悲しく残念で、ピケティ氏が望む税制改革は“広範囲な抗議”を引起す」とマンドン長官の見方を引用する。
『リベラシオン紙』は辞退の理由について、「勲章を受ける一握りの市民が誰かを決めるやり方や、それが政府や国家の役割とする概念は、時代遅れだと思っていた。...
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『レゼコー紙』は「国家改革担当のマンドン国務長官は、経済学者ピケティ教授がレジオンドヌール勲章を拒否した理由は、謙遜からではないとの見解を示した」と報じる。レゼコー紙はこれを、「政府に対する侮辱と見られるピケティ氏の拒否」と評し、「ピケティ氏の決断は悲しく残念で、ピケティ氏が望む税制改革は“広範囲な抗議”を引起す」とマンドン長官の見方を引用する。
『リベラシオン紙』は辞退の理由について、「勲章を受ける一握りの市民が誰かを決めるやり方や、それが政府や国家の役割とする概念は、時代遅れだと思っていた。政府はフランスと欧州の成長回復に注力すべき」とピケティ教授の抗弁を掲載する。
一般的傾向として、レゼコー紙はピケティ教授の課税政策に対し批判的な寄稿を掲載し、リベラシオン紙は定期的にピケティ氏の寄稿を掲載する。レゼコー紙は「レジオンドヌール勲章はフランス国内の功績を抜擢するもので、政府と国の役割である。膨大な時間がかかる訳でも、失業対策を妨げる訳でもない」とマンドン国務長官の反論を引用し、「ピケティ論を査定しようとし、実行に向けて検討しようとしたが、全く複雑で一般論」と、エソンヌ県の社会党議員の見解に触れる。一方レゼコー紙もリベラシオン紙も「財産課税に関するピケティ氏の経済論を“非常に興味深い”と形容した」事に触れる。
『ルモンド紙』は「ピケティ教授は本来社会党よりだが、頻繁にオランド大統領の政策を批判する。ピケティ氏が擁護する累進課税において、オランド大統領が抜本的な税制改革の公約を埋葬した事に、特に遺憾を表明した」と伝える。また「ピケティ教授の著書“21世紀の資本”は数か国語に翻訳され、半年で50万部以上のベストセラー」となり、所得課税に財産課税と一般福祉税を組み合わせた独自の経済論を展開する。
ルモンド紙は「ピケティ氏以前にも、放射能研究のピエール・キュリー氏は”必要ない“と受勲を辞退し、画家のモネ、不条理哲学のカミュやサルトルらが辞退者リストに名を連ねる。2012年には職業病としての癌の専門家テボーモニ氏が、企業グループや企業犯罪の責任者が処罰されていないと非難し勲章を拒んだ」というように、辞退者は少なくない。
またピケティ氏は日銀のインフレ政策は評価し、4月の消費税増税には否定的である。
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