フランスメディアが見る安倍談話
欧州でも以前から注目されていた安倍首相の70年談話が出され、各国で様々な評価が発表されているが、フランスメディアも注目する。焦点となっていた「反省」、「お詫び」、「侵略」の表現が談話内で使用された事で、日本国内メディアや海外の一部メディアは「村山談話の意を間接的に取りいれた」と受止めたのとは対照的に、フランスメディアでは「安倍談話は謝罪を回避した」事に比重をおいて報じられた。
『ルモンド紙』は「安倍首相は謝罪を回避」と見出しをつけて、「戦時中の行いに対する首相自身の謝罪表明を回避」と報じる。「お詫び」や「反省」の文言は、過去の村山談話(1995年)や小泉談話(2005年)の引用文内の言葉にすぎず、「日本は戦時中の行いに対して、心からのお詫びと深い後悔の念をこれまで繰り返し表明した」と安倍首相が過去の事として言及した事に触れている。
『フィガロ紙』は、「安倍首相は永遠の哀悼の意を第二次世界大戦の犠牲者全てに表明した」が、「日本の過去の行いに対する謝罪の意に言及」しつつも「新たな世代が過去に犯した行為を悔い改める必要が無いことを呼びかけ」、「これで謝罪を終わらせようとしている」と報じた。...
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『ルモンド紙』は「安倍首相は謝罪を回避」と見出しをつけて、「戦時中の行いに対する首相自身の謝罪表明を回避」と報じる。「お詫び」や「反省」の文言は、過去の村山談話(1995年)や小泉談話(2005年)の引用文内の言葉にすぎず、「日本は戦時中の行いに対して、心からのお詫びと深い後悔の念をこれまで繰り返し表明した」と安倍首相が過去の事として言及した事に触れている。
『フィガロ紙』は、「安倍首相は永遠の哀悼の意を第二次世界大戦の犠牲者全てに表明した」が、「日本の過去の行いに対する謝罪の意に言及」しつつも「新たな世代が過去に犯した行為を悔い改める必要が無いことを呼びかけ」、「これで謝罪を終わらせようとしている」と報じた。
フランスメディアが安倍談話の意向に総じて懐疑的な見方を示したのは、談話内容というより翌日の終戦記念日の8月15日に安倍内閣の閣僚が靖国神社に参拝した事が大きな要因となっているようだ。
『レゼコー紙』は「日本戦没者追悼式、中国動揺」と見出しをつけ、「中国は終戦70周年に安倍首相が戦犯に敬意を表した事に不満」と報じる。大臣三人が、国家主義の靖国神社を参拝した事に触れ、「安倍内閣の閣僚が、A級戦犯が祀られている靖国神社参拝にこの日を選んだ」事を疑問視する。
ルモンド紙も安倍首相が近い関係にある「日本会議」が、「軍国主義の犯罪に対する告発に対して反論を表明している」事に触れ、「後悔の念は過去にも表明された」が、「論争をよぶ靖国神社への訪問が日本の誠意への疑念を増大させた」と報じる。
また、明仁天皇陛下が述べた「第二次世界大戦に対する深い反省」の言葉は、安倍談話と対照的なものとしてフランス各メディアは受止めた。中でも
『リベラシオン紙』は日本の降伏を発表する昭和天皇の録音のオリジナルを公開した事に触れ、「真実に対する多大な努力」と評し、初めて「深い反省」に言及した現天皇陛下の言葉について、「国家主義の潮流に対抗する」との見方をしめし、「控えめな暗示や象徴的な過去への反省や平和主義を喚起する熟練した表現」と称賛する。
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フランスメディアが見る安保法制
7月16日に1947年に制定された憲法の新解釈を実施する安保法制の採決を行った。日本とは安全保障上の関係が薄いフランスの各メディアも、アジア全域に影響を及ぼす方向転換として大きく取り上げる。
『ルモンド紙』は、「日本は平和主義脱却」と見出しをつけ、日本の安保法制を「1945年以来アジア太平洋地域の最も重要な戦略的激変の一つ」と評し、「理論上戦争が出来るようになる」この改正を、「第二次世界大戦後の日本国内のアイデンティティの中核をなす、平和主義の伝統からの離脱」と意味づけ、「近隣諸に嫌な記憶を残した帝国主義、超国家主義、植民地主義の過去の償いという前向きな対外的イメージからも離別」は、日本にとってマイナスとの見方を示す。...
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『ルモンド紙』は、「日本は平和主義脱却」と見出しをつけ、日本の安保法制を「1945年以来アジア太平洋地域の最も重要な戦略的激変の一つ」と評し、「理論上戦争が出来るようになる」この改正を、「第二次世界大戦後の日本国内のアイデンティティの中核をなす、平和主義の伝統からの離脱」と意味づけ、「近隣諸に嫌な記憶を残した帝国主義、超国家主義、植民地主義の過去の償いという前向きな対外的イメージからも離別」は、日本にとってマイナスとの見方を示す。「戦争放棄の平和的イメージが経済文化の発展を助け、人道支援や開発援助時の大きな信用を得ていた」。
『リベラシオン紙』は、「日本は軍国主義の過去について、近隣諸国に対して反省を続ける必要がある」と記者会見で反対意見を述べたアニメの宮崎駿監督の見解に注目する。「日本は、侵略戦争は誤りだったと認めるべき」、「多くが過去を忘れたがっていても、過去の軍事活動への反省表明は政治家の義務」と述べた。しかし「現在は殆ど行っていない」。
経済紙
『レゼコー紙』は世論調査で8割が反対する安保法制について、「1960年代の日米安全保障条約締結時に強い反対があった」と報じ、「安倍首相の祖父である当時の岸首相が、日米安保条約が50年後に理解されるだろうと述べた」が、「実際25年で日米同盟が支持され、歴史が安倍首相に理由を与えた」と安倍首相の論理を報じる。また軍事予算の著しい増加を伴わないため、「世論の反対があっても参議院でも採決される」との見通しを示した。
フランス各紙の見解は多様だが、アジア地域での中国の拡張主義への軍事的備えには総じて一定の理解を示す。「海上での示威行動、係争中の岩礁での人工島の建設や砲台の設置など、南シナ海で近隣諸国との領土紛争に突入した中国の台頭によって、アジアの地域環境が変化した事を考えると、安倍首相は間違っていない」(ルモンド紙)。
「現行の法制では中国と係争中の尖閣諸島付近の軍事衝突に対する準備を妨げる」(レゼコー紙)。問題は海外派兵の唯一の基準の「日本の生存が脅かされる場合」の定義が曖昧なままであると、ルモンド紙は指摘する。「安倍首相は定義する事自体を拒み、ホルムズ海峡での地雷除去等の例を挙げるのみ」で、「これで武力行使への選択が大幅に広がった」との見方を示す。
またルモンド紙は「安倍首相は支持率低下覚悟でリスクを負った」と報じ、レゼコー紙は「日米安保条約採決後辞任を余儀なくされた祖父の岸首相の境遇を自ら経験するとは思っていない」と強行採決のツケを暗示する。
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