6月17日付
『ユーラシア・レビュー』オンラインニュース(
『ラジオ・フリー・アジア(米議会出資の短波局)』配信):「中国資源探査船、ベトナム領海内に張り付き」
中国政府所有の海洋資源探査船“海洋地質(ハイヤンジーチー)4号”が6月16日朝、南シナ海のベトナムの排他的経済水域(EEZ)内に入っていることが判明した。
船舶位置情報検索システムによれば、同船は6月14日にスプラトリー(南沙)諸島内のファイアリー・クロス礁上に築かれた中国軍事基地付近を航行して北上し、その2日後に、ベトナム沖のフー・クイ島から182海里(約337キロメートル)、同国沿岸から丁度200海里(約370キロメートル)沖に到着している。
同海域での石油掘削権益を保有していたスペイン石油企業のレスポルが6月13日、ベトナム国営企業のペトロ・ベトナムに権益譲渡すると決定したことから、ベトナム企業による同海域での石油掘削操業が始まるものとみられている。
従って、中国探査船の今後の動静によって、中国・ベトナム間の南シナ海領有権問題に関わる新たな火種になりかねない。
何故なら、中国所有の別の“海洋地質8号”が、中国海警艦とともに今年4月半ばから5月半ばまで南シナ海南端のマレーシア沖に居座り、マレーシアから業務委託を受けた英国石油掘削船“ウェスト・カペラ”が同海域で行っていた掘削操業に圧力を加えることとなり、結果、同掘削船は操業を止めて同海域を退去するという事態が発生していたからである。
今回、“海洋地質4号”に随行船はみられないが、中国海警艦“海昌(ハイチン)5202号”が南方のファイアリー・クロス礁上の中国埠頭に停泊しているのが認められている。
なお、スプラトリー諸島海域西端の、ベトナムが実効支配してきたバンガード堆近海で2019年7月、中国探査船“海洋地質8号”が1ヵ月余り居座って、同海域での石油探査活動を妨害する行動を取っていた。
今回、“海洋地質4号”がいる海域は、上記バンガード堆に近いところであるため、今後同船がどういう行動を取ろうとしているのか注目される。
一方、ベトナム国営メディアの報道によれば、米石油大手のエクソンモービルが6月11日、グエン・スアン・フック首相にコンタクトし、同国の天然ガス・石油開発部門に関心を持っていることを伝えてきたという。
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5月15日付
『CNNニュース』:「米軍、トランプ政権によるCOVID-19問題での中国対峙が高まるのに呼応して南シナ海での中国監視活動活発化」
米国はここへきて、南シナ海における中国の活動を監視する体制を強化してきている。
これまでも米軍は、中国が、COVID-19問題の隙をついて、南シナ海周辺国への圧力を高めていると糾弾してきたが、直近二、三週間で、同海域への軍艦派遣の頻度を上げている。...
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5月15日付
『CNNニュース』:「米軍、トランプ政権によるCOVID-19問題での中国対峙が高まるのに呼応して南シナ海での中国監視活動活発化」
米国はここへきて、南シナ海における中国の活動を監視する体制を強化してきている。
これまでも米軍は、中国が、COVID-19問題の隙をついて、南シナ海周辺国への圧力を高めていると糾弾してきたが、直近二、三週間で、同海域への軍艦派遣の頻度を上げている。
これは、ドナルド・トランプ大統領及びマイク・ポンペオ国務長官が異口同音に、COVID-19感染初期段階での中国の失政と、依然詳細情報開示を果たそうとしていないとして、中国側を攻め立てていることに呼応する動きである。
そして、米国防総省が強調しようとしていることは、COVID-19感染問題によって、中国監視活動体制が影響を受けていないことを示すことである。
そこで最優先課題として挙げられるのが、乗組員にCOVID-19感染が発覚して、グアム基地で待機を余儀なくさせられている原子力空母“セオドア・ルーズベルト”を、5月末までに南シナ海に再配備することである。
そうした背景の下、5月11日には、米インド太平洋軍報道官のマイケル・カフカ大佐が改めて、“中国政府は、COVID-19感染問題の隙をついて、南シナ海域での利権増強を企んでいる”と非難する発言をした。
そして、米空軍地球規模攻撃軍団のティモシー・レイ司令官も、“COVID-19感染問題が続こうとも、いつでもどこでも攻撃体制が取れる”として、直近も南シナ海にB-1超音速戦略爆撃機を3度にわたり派遣している。
米軍は最近、2004年からグアム基地に配備していた爆撃機を米本土に引き上げることを決めているが、今回の同海域派遣についても、適時にテキサス州のダイエス空軍基地から当該爆撃機4機を派遣する体制を敷いている。
更に、5月13日には、米太平洋軍が、同海域に展開する全潜水艦に対して、“COVID-19問題が続く中でも、インド太平洋地域の自由で開かれた航行を確保”する行動を取るよう異例の作戦指示を出した。
その上で、国防総省報道官のディブ・イーストバーン中佐は『CNN』のインタビューに答えて、“世界がCOVID-19感染対策に注力している最中、中国政府が南シナ海周辺国に対して違法な中国側海洋権主張を押し付けようとしていることは看過できない”と表明し、マーク・エスパー長官の対中国強硬施策継続につき説明している。
なお、直近で取られた、その他の米軍の示威行動は以下がある。
・5月13日、ミサイル駆逐艦“マッキャンベル”が台湾海峡を横断航行。
・5月初め、南シナ海南端のマレーシア沖に軍艦を立て続けに2度派遣。中国の海洋資源探査船“海洋地質(ハイアンジーチー)8号”が中国海警・武装漁船10隻を従えて、4月半ばよりマレーシア国営企業ペトロナスの石油探査リグ周辺海域に居座って、同社操業を間接的に妨害していることから、この牽制のため。
・4月末、複数の軍艦をスプラトリー(南沙)諸島及びパラセル(西沙)諸島海域に派遣し、中国建設の人工島の軍事拠点化を牽制。
一方、同日付『ラジオ・フリー・アジア』(米議会出資の短波放送局):「中国海洋探査船、マレーシア側への示威行動を終えてマレーシア沖から撤収」
中国海洋資源探査船“海洋地質8号”が5月15日、4月中旬より居座っていたマレーシア沖から撤収した。
同海域では、ペトロナスから業務委託を受けていた海洋資源掘削船“ウェスト・キャペラ(WC、2008年建造、パナマ船籍)”が資源掘削作業をしていたが、当初の操業工程を終了し、5月12日に同海域から移動してブルネイ湾の母港に戻っている。
本船“WC”は、マレーシアの排他的経済水域(EEZ)内で作業をしていたが、中国の“海洋地質8号”は、中国が主張する領海内での石油探査操業を停止するよう求めて、マレーシア側に圧力をかけるため1ヵ月程現地に居座っていた。
なお、5月15日当日、マレーシアと中国の国防相が電話会談し、“南シナ海を含めた海域での両国権益及び国際安全保障”について協議しており、これを契機として中国海洋探査船がマレーシア沖から去ったとみられる。
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