どの国が最もウクライナを助けているのか?(2022/04/22)
ドイツのシンクタンク「キール世界経済研究所」が発表したデータによると、ウクライナへの支持を表明している国々の間には援助の程度に大きな格差があることが判明した。米国がウクライナ人に対する最大の援助供与国となっており、その支援はヨーロッパのすべての国や機関の合計を上回っている。
仏紙
『レゼコー』によると、ドイツのキール世界経済研究所は、2月24日のロシアのウクライナ侵攻開始から3月末までの間に、EU加盟国とその他のG7メンバー31カ国からの援助、および欧州機関からの寄付など、公開されているすべてのデータを集計した。シンクタンクのリサーチディレクターで、このデータベースの主執筆者であるクリストフ・トレベッヒ氏は、「戦争が始まって以来、世間の議論はロシアの幹部を効果的に弱体化させる方策に集中し、ウクライナへの支援は、データ不足もあり、あまり注目されてこなかった」と述べている。...
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仏紙
『レゼコー』によると、ドイツのキール世界経済研究所は、2月24日のロシアのウクライナ侵攻開始から3月末までの間に、EU加盟国とその他のG7メンバー31カ国からの援助、および欧州機関からの寄付など、公開されているすべてのデータを集計した。シンクタンクのリサーチディレクターで、このデータベースの主執筆者であるクリストフ・トレベッヒ氏は、「戦争が始まって以来、世間の議論はロシアの幹部を効果的に弱体化させる方策に集中し、ウクライナへの支援は、データ不足もあり、あまり注目されてこなかった」と述べている。
集計結果で気が付くことは、ヨーロッパがウクライナを支援するために様々な対策を取ってきたものの、圧倒的に多くの資金を費やしているのはアメリカであるということである。アメリカだけで76億ユーロ(約1兆円)を費やした。その半分強が武器、食糧、燃料などの軍事援助で、残りが人道支援であった。戦争が始まって以来、ウクライナに提供された二国間軍事援助のうち、合計で4分の3以上がアメリカからのものである。
次いで、隣国のポーランドが10億ユーロ(約1390億円)弱を支出し、主に資金面で支援し、米国に次いでウクライナ人への軍事支援額が大きい英国は、7億ユーロ(約975億円)で3位となっている。EUの二大勢力であるドイツとフランスは、人道的支援と財政的支援を中心としており、それぞれ4位と5位に登場する。日本は、イタリア、スウェーデン、エストニア、カナダに続いて10位に登場している。
欧州機関では、ウクライナに軍事支援を行っている加盟国に償還するための10億ユーロ(約1390億円)の基金がEU理事会で承認された。しかし、欧州投資銀行が発表した20億ユーロ(約2786億円)の緊急融資など、欧州の他のすべての施策と合計しても、合計63億ユーロ(約8777億円)は米国の支出より少ない。
しかし、一部の加盟国による努力は相当なものである。国内総生産(GDP)比率で比較すると、東欧4カ国が放出する援助金は米国を上回っている。特に、エストニアはGDPの0.8%近くをもって援助していると推定され、圧倒的な支援を施している。
仏ニュースサイト『ユーロニュース』によると、2位はポーランドでGDPの0.18%に相当し、リトアニア、スロバキア、スウェーデンが上位5位までを占めた。一方、米国の支援額はGDPの0.4%弱で、6位に下がる。日本は上位10位から外れている。
リサーチディレクターのトレベッヒ氏は、「ウクライナに地理的に近いということが、東欧諸国の関与に大きな役割を果たしているようだ」と述べている。ただし、このデータには限界があり、「特にウクライナへの軍事援助は必ずしも透明ではないので、全体像を示すことはできない」という。また、難民支援の費用など、他の種類の支援も含まれていない。
国連によると、ロシアの攻撃開始以来、ウクライナから脱出した人は490万人以上にのぼる。近隣諸国はその大部分を受け入れており、ポーランドは280万人の難民を、ルーマニア、ハンガリー、モルドバは合計190万人の難民を受け入れている。
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リトアニア、Z文字使用禁止へ(2022/04/20)
バルト海に面するリトアニアで、ロシアによるウクライナへの侵攻を支持するとみなされる「Z」文字などの使用が禁止される。先月、Z文字は、ロシア軍車両上で頻繁にみられる文字となり、SNS上でも親ロシア派の象徴となった。ラトビアやウクライナの隣国モルドバでも使用が禁止され、ドイツも検討中である。
4月20日付
『ロイター通信』:「リトアニア、ロシア侵攻を巡りZ文字の使用禁止へ」:
リトアニアは、ロシアによるウクライナへの侵攻を支持するとみなされるZ文字の使用や、聖ジョージの黒とオレンジのリボンを公共の場で使用することを禁止する。
ロシア軍の戦車には゛Z゛と記されており、SNS上でこの文字を掲載し、この文字が記された服を着ることは戦争支持と受け取られかねない情勢となっている。...
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4月20日付
『ロイター通信』:「リトアニア、ロシア侵攻を巡りZ文字の使用禁止へ」:
リトアニアは、ロシアによるウクライナへの侵攻を支持するとみなされるZ文字の使用や、聖ジョージの黒とオレンジのリボンを公共の場で使用することを禁止する。
ロシア軍の戦車には゛Z゛と記されており、SNS上でこの文字を掲載し、この文字が記された服を着ることは戦争支持と受け取られかねない情勢となっている。聖ジョージの2色のリボンは、皇帝キャサリン2世により確立されたもので、2014年にロシア支持の象徴としてウクライナ東部の分離派が使用し始めたことでロシアの色と見なされるようになった。
リトアニアで以前、ソ連やナチスのシンボルの公的使用を禁止した際の規定では、「全体主義または独裁政権で過去に使用されたシンボル、それらによる軍事侵攻、人権犯罪、戦争犯罪への支持」と見なされる場合との条件を設けていた。
ラトビアやモルドバでは既にこれらは使用が禁止されており、ドイツも同様の禁止措置を検討している。ウクライナのクレバ外相は今年3月、「Z文字はロシアの戦争犯罪、爆撃された都市、数千人の殺害されたウクライナ人を意味するもの」だとして、この文字の公的使用を禁止するよう求めていた。
4月19日付『ユーロニュース』:「リトアニア議会でロシア軍のZシンボル使用禁止法案可決」:
リトアニア議会で、ロシア軍の゛Z゛シンボル使用禁止法案が可決。今月19日投票が行われ、V文字やZ文字、黒とオレンジのリボンの公的使用や、侵攻を支持することを示すシンボルの使用が禁止される。
違反者には300~700ユーロの罰金が科され、違反や反動を煽る行いをした企業トップへは600~1200ユーロが科されるという。今回の措置により、ロシア軍のシンボルが、ナチスや共産主義シンボル同様の扱いとなる。
法案を主導した自由党議員は、「軍事侵攻や人権犯罪を助長する全体主義者や独裁政権を標的とし禁止法が修正された。軍事侵攻は過去にもそれ以外にも許されないことで、国家の安全保障にとり非常に重要な法」だとしている。議員の間では、ロシア軍シンボルが、5月9日のナチスドイツへの勝利記念日に掲げられるのではと懸念されている。
ラトビアでも、VとZ文字の掲示禁止法案が可決、ドイツ圏の一部では公的使用を違法としている。モルドバでも今月19日、同国のサンドゥ大統領が、VとZ文字、聖ジョージのリボンの禁止法への署名を行った。
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