ドゥテルテ比大統領がまた舌禍-麻薬取締局が不十分なら自分が麻薬犯罪者を射殺すると発言【米・英・ロシア・フィリピンメディア】(2017/10/23)
これまで何度か触れたとおり、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、自身が最優先課題とする麻薬撲滅運動を批評する人達に対しては、同盟国である米国のバラク・オバマ大統領(当時)であろうと、貿易拡大交渉を続けている欧州連合(EU)の政治家であろうと、一国の首脳にあるまじき口汚い表現でののしっている。そして今度は、人権蹂躙と非難されたフィリピン警察(PNP)を一時的に麻薬撲滅運動からはずし、代わりに中心となるよう指示したフィリピン麻薬取締局(PDEA)から弱音の発言が出されるや否や、同大統領自身が銃を持って麻薬犯罪者らを射殺すると言い出した。本家のドナルド・トランプ大統領に負けず劣らず、“フィリピンのトランプ”の舌禍は止みそうもない。
10月22日付米
『Foxニュース』:「フィリピンのドゥテルテ大統領、自らが犯罪者を銃で撃っても良いと発言」
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は10月20日、必要に応じて自らが銃を持って麻薬犯罪者らを撃っても良いと発言した。
同大統領は10月11日、人権団体等から超法規的殺人を強く非難されたために、PNPを麻薬撲滅運動の管轄からはずす旨表明していた。しかし、代わりに取り締りに当ることを期待されたPDEAから弱気な発言が出たことから、麻薬犯も強姦犯も、大統領自身が銃を持って裁くこと厭わずと発言したもの。...
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10月22日付米
『Foxニュース』:「フィリピンのドゥテルテ大統領、自らが犯罪者を銃で撃っても良いと発言」
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は10月20日、必要に応じて自らが銃を持って麻薬犯罪者らを撃っても良いと発言した。
同大統領は10月11日、人権団体等から超法規的殺人を強く非難されたために、PNPを麻薬撲滅運動の管轄からはずす旨表明していた。しかし、代わりに取り締りに当ることを期待されたPDEAから弱気な発言が出たことから、麻薬犯も強姦犯も、大統領自身が銃を持って裁くこと厭わずと発言したもの。
10月21日付英『スカイ・ニュース』:「フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領自身が銃を持って犯罪者らを罰しても良いと申し出」
ドゥテルテ大統領は2016年6月に就任して以降、同大統領自身が、3百万人にも上る麻薬常習者を“根絶やしにすることは喜び”と発言していたこともあって、麻薬犯罪撲滅運動のための乱暴な取り締りによる犠牲者が7千人以上にもなっている。
人権監視団体やアムネスティ・インターナショナルは、PNPからの正当防衛による犯罪者殺害のみだとの主張に対して、超法規的殺人がまかり通っていると非難した。
なお、ドゥテルテ大統領は10月20日、一時的にPNPを同取り締りからはずす決定をしているが、犯罪者取り締りのためには自らが銃を持って罰していくと言い出した。更に、今後6ヵ月ほど様子をみるが、もし犯罪撲滅が停滞するようなら、再びPNPに取り締まらせるとも発言している。
同日付ロシア『RT(ロシア・トゥデイ)テレビニュース』:「フィリピン大統領、“誰もやらないなら自分が引金を引く”と犯罪者に警告」
ドゥテルテ大統領は、フィリピンにとって深刻な問題となっていた麻薬犯罪撲滅のため、厳重な取り締りの上で犯罪者10万人をマニラ湾の魚の餌にしてやると豪語して、国民から強い支持を得た。
実際に、当該取り締りの結果、4千人近い麻薬犯罪者が殺害されている。しかし、超法規的殺人を非難されたことから、一時的にPNPを麻薬取り締りからはずした。ただ、代わりに同取り締りの中心に据えたPDEAが頼りにならないとみるや、自らが銃を取って犯罪者らを罰していくと言い出している。
10月22日付フィリピン『マニラ・ニュース』:「フィリピン大統領、自らが銃で犯罪者を撃つと警告」
ドゥテルテ大統領就任以降、PNPによって処罰された麻薬犯罪者は3,900人以上に上るとPNPは発表している。更に、政府発表では、“麻薬絡み”の未解決事件で2,290人が死んでいるとしている。
この超法規的殺人に対して、国連はもとよりローマ教皇フランシスコまでも同大統領を非難したが、フィリピン国民は同大統領を引き続き支持している。
しかし、国際社会からの非難の声が高まったため、ドゥテルテ大統領は10月11日、一旦PNPを麻薬犯罪取り締りから外すこととし、代わりにPDEAに当らせると発表した。
ただ、PNPが16万5,000人の警察官を擁しているのに対して、PDEAの麻薬取締官は僅か2,000人であるため、麻薬犯罪取り締りがうまく運ぶか疑問なしとしない。そこで同大統領は10月21日、自らが銃を持って麻薬犯罪者らを罰しても良いし、また、暫く様子を見て、場合によって再度PNPに同取り締まらせるとも表明した。
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米・フランス・フィリピン・中国メディア;中国、思惑通りフィリピン調略(2016/10/31)
10月28日付
Globali「二枚舌(?)のフィリピン大統領(2)」の中で報じたとおり、ドゥテルテ大統領は訪中の成果として、中国から240億ドル(約2兆5千億円)を引き出しており、また、日本側からは210億円(2億1千万ドル)の海上安全保障及びプロジェクト開発のための融資を獲得した。同大統領のしたたかさを遺憾なく発揮した外交手腕であるが、見方を変えれば、中国として、常設仲裁裁判所(PCA)の裁定を無効化し、東南アジア諸国連合(ASEAN)を懐柔するという戦略実現のため、うまくフィリピンを調略したと言えよう。そして、中国の次なる調略相手はマレーシアである。
10月30日付米
『ロイター通信米国版』:「フィリピン、中国公船が依然近海の岩礁にへばりつくもフィリピン漁師の操業を妨害せずと発表」
「●フィリピン大統領安全保障顧問のハーモゲンズ・エスペロン元フィリピン軍大将は10月30日、依然中国公船は南シナ海のスカボロー(中沙)礁近海にへばりついているが、これまでと違ってフィリピン漁師の操業妨害はしていないと発表。
●2週間前のロドリゴ・ドゥテルテ大統領の訪中時の討議を受けて、デルフィン・ローレンザーナ外相は10月28日、今後中国公船が同礁近海を監視することはなく、フィリピン漁師が自由に操業できるとコメント。...
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10月30日付米
『ロイター通信米国版』:「フィリピン、中国公船が依然近海の岩礁にへばりつくもフィリピン漁師の操業を妨害せずと発表」
「●フィリピン大統領安全保障顧問のハーモゲンズ・エスペロン元フィリピン軍大将は10月30日、依然中国公船は南シナ海のスカボロー(中沙)礁近海にへばりついているが、これまでと違ってフィリピン漁師の操業妨害はしていないと発表。
●2週間前のロドリゴ・ドゥテルテ大統領の訪中時の討議を受けて、デルフィン・ローレンザーナ外相は10月28日、今後中国公船が同礁近海を監視することはなく、フィリピン漁師が自由に操業できるとコメント。
●しかし、エスペロン氏は、かつては中国の軍艦4、5隻と海警4隻が常に監視し、フィリピン漁船を追い払っていたが、今現在は妨害はなくなったとは言え、依然中国公船4隻が同海域を航行・監視とコメント。」
同日付米
『ワシントン・ポスト』紙(
『AP通信』配信):「フィリピン、中国公船が依然岩礁近海を監視するもフィリピン漁業は再開と発表」
「●ローレンザーナ外相は10月30日、依然中国公船がスカボロー礁近海にいるが、2012年に中国に実効支配されて以来初めて、フィリピン漁師の操業が中国側の妨害なく行われていることを歓迎。
●米国務省のアントニー・ブリンケン副長官は10月29日、中国がスカボロー礁海域か
ら撤退することは、7月のPCA裁定に則して適切なことと評価するとコメント。」
同日付フランス
『フランス24』オンラインニュース(
『AFP通信』配信):「フィリピン、中国公船が領有権争いの岩礁近海に留まるもフィリピン漁師の操業は再開と発表」
「●訪中から帰国したドゥテルテ大統領は、あと数日待てば中国側がフィリピン漁師の操業を妨害しなくなるとして、スカボロー礁の領有権争いから中国が一歩引くとの期待をほのめかし。
●中国公船が数隻まだ居残っているが、ここ数日間、フィリピン漁師の操業は妨害なく再開。」
10月31日付フィリピン
『マニラ・ニュースネット』:「中国が依然岩礁を監視するも、フィリピン漁業は再開」
「●ドゥテルテ大統領が訪中時に会談した習近平(シー・チンピン)主席他中国側幹部は、フィリピンから228キロメーター西沖のスカボロー礁へのフィリピン側アクセスを許容。
●同大統領は、中国側に対して、同礁はフィリピン帰属であると主張したが、中国側も同礁の占有を断言したと報告。
●エスペロン安全保障顧問は、中国側と文書を交わした訳ではないが、今のところフィリピン漁師の操業は妨害されておらず、また、同海域に居座っている中国公船の数も、同大統領訪中前より明らかに減少しているとコメント。」
一方、10月30日付中国
『環球時報』:「共同開発が中国とASEANの共通した認識」
「●中国側はこれまで長い間、南シナ海領有権問題は横に置いて、関係国と共同開発の実現を提唱。
●中国は、ベトナムのグエン・スアン・フック首相及びフィリピンのドゥテルテ大統領を順次迎えて、それぞれの国との関係改善に成果。
●米国はこれまで、事あるごとに民主化と人権問題をあげつらうことで、アジア重点戦略を展開し、アジア地域を軍事拠点化すべく奔走。
●しかし中国は、“一帯一路”政策に基づく同地域・近隣諸国のインフラ開発等の援助に努めてきており、同地域が求めているのは米国の戦略ではなく中国のそれだということは確かなこと)。
●10月31日からナジブ・ラザック首相が訪中するマレーシアにしても、中国との貿易高が2014年で1,000億ドル(約10兆4千億円)超となり、過去7年連続して中国が同国最大のパートナーになっているが、米国との取引は同国にとって4番目で、インフラ開発の投資もごく僅かという現状。
●かくして、南シナ海領有権問題に関わるPCA裁定が下された後、その当事国であるベトナム、フィリピン、マレーシアのトップがそれぞれ訪中するという事実より、中国が提唱してきた共同開発の提案が関係国の共通認識となっていることが明白。」
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