トランプ大統領は就任以来、外国要人招待はもとより自身の休暇にも、しばしば自己所有の別荘等を利用してきたことから、税金の公私混同使用だと問題提起されてきた。しかし、初めての夏季休暇も、ニュージャージー州のトランプ・ナショナル・ゴルフ・クラブで過ごすことになり、またしても非難の的になっている。特にメディアが問題視しているのは、同大統領自身が、オバマ前大統領が休暇を取る度毎に、税金の無駄遣いだとか、重要事項より己の休暇を優先している等、何度もツイッターで批判してきたにも拘らず、自身が大統領になった途端、同前大統領より更に頻繁に休暇を取得しているとの事実である。
8月3日付米
『USAトゥデイ』:「トランプ大統領、自己所有のリゾート施設があるベッドミンスターで夏季休暇」
トランプ大統領はこれまで、就任以来ほぼ毎週の頻度で、フロリダ州・ヴァージニア州・ニュージャージー州にある自己所有のリゾート施設を利用してきたことで、批判を浴びてきた。しかし、同大統領はまたしても、8月4日からの17日間の夏季休暇をベッドミンスター(ニュージャージー州)のトランプ・ナショナル・ゴルフ・クラブで過ごすとしている。
2014年8月、トランプ大統領が民間人であったとき、オバマ大統領(当時)がゴルフ等で休暇を楽しんでいる間に、イスラム過激派集団ISISが人質にしたジャーナリストを斬首していると批判のツイートをしている。また、トランプ氏はかつて、大統領が休暇を取得することを軽蔑するとも述べていた。
ただ、ホワイトハウスのリンゼイ・ウォルターズ報道官は、ホワイトハウスの西棟の空調入れ替え工事に2週間余りかかるためにホワイトハウスで執務できないこと、また、大統領は滞在先で“仕事をしながらの休暇”となると擁護している。
一方、歴史学者のテヴィ・トロイ氏は、大変なストレスを抱えることになる米大統領には十分な休暇が必要だと説く。一例を挙げれば、ジェームズ・ポーク第11代大統領(1845~49年)は、長期休暇を全く取らなかったが、大統領退任後間もなく死去しているとする(編注;4年の在任中に取得した休暇は僅か計37日。退任して3ヵ月後に逝去)。
8月4日付英
『ザ・テレグラフ』紙(
『AP通信』配信):「ドナルド・トランプ大統領、かつて自身が投げつけた“休暇を取るな”との批判を忘れてゴルフ・クラブで夏季休暇」
ウォルターズ報道官は8月3日、ホワイトハウスの空調工事のため、大統領だけでなくスタッフは皆ホワイトハウスで執務できないとした上で、大統領は滞在先でも仕事は続けると弁護した。
しかし、トランプ大統領自身、2004年に発行した自著の中で、休暇を取るなら、その仕事は向いていないので転職すべきだ等と語っているし、また、2012年にも同様のツイートをしている。
にも拘らず、
『AP通信』の調査では、トランプ大統領在任期間の28週間のうち、13回もの週末をホワイトハウスから離れ、そのほとんどを自己所有のリゾートのあるパーム・ビーチ(フロリダ州)かベッドミンスターで過ごしている。
更に、2011年8月には、オバマ大統領(当時)が10日間の休暇で不在とは何たる倫理観か、と非難するツイートをし、また、昨年も、もし大統領に就任したら、ゴルフに割く時間など取れないとも言っていた。
ただ、心理学及び脳科学専門のスーザン・ウィットボーン教授は、ストレスが慢性的になると、免疫力・抵抗力等を大きく損ない、病気・怪我・睡眠障害等に陥りやすいので、特に深刻なストレスを抱えることになる米大統領には長期休暇が必要であると説いている。
同日付ロシア
『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「トランプ大統領、何年もの間オバマ前大統領の休暇取得を非難してきたのに、17日間の夏季休暇取得」
トランプ大統領はこれまで、オバマ前大統領の在任期間中、以下のような非難を浴びせていた。
・2011年8月:オバマ大統領は昨日ゴルフをしたが、今日から10日間の休暇に向かう。何たる労働倫理か。
・2012年1月:オバマ大統領の休暇には数百万ドル(数億円)の税金が投じられている。
・2012年4月:オバマ大統領のスペイン休暇旅行には47万6,000ドル(約5,240万円)の税金が使われている。何と金使いの荒いことか。
・2012年11月:休暇なんか取るな。さもなくば大統領職から退くべきだ。
しかし、
『ポリティファクト(タンパベイ・タイムズ紙運営のファクトチェック・ウェブサイト)』の報告では、トランプ大統領は就任以来、既に合計21回ゴルフをしているが、オバマ前大統領が在任8年間で行ったゴルフの回数は僅か11回である。
更に、トランプ大統領は在任期間の28週のうち、既に13回の週末をホワイトハウスではなく遠隔地で過ごしているが、これはオバマ前大統領の8年間の合計記録にほぼ匹敵する回数である。
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