したたかな中国;米国による中国包囲網打破のため新型コロナウィルス用ワクチン提供で周辺国囲い込み【米メディア】(2020/09/12)
9月11日付GLOBALi「
トランプ政権;大統領選までは対中強硬路線-ASEANにも中国包囲網参加を呼びかけ」で報じたとおり、マイク・ポンペオ国務長官が東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国に対して、米国による対中国企業制裁に賛同し、これに加わるよう要請した。これに対して中国は、米国による中国包囲網構築の動きを打ち破るべく、ASEANに対して、中国が開発した新型コロナウィルス(COVID-19)用ワクチンを優先的に提供することによって米国側に加担しないようはたらきかけている。
9月12日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「中国、COVID-19用ワクチン提供で東南アジア諸国を懐柔」
中国は、武漢(ウーハン)が発症地とされるCOVID-19が世界流行となり、国際社会における信頼度回復に躍起になっていて、COVID-19用ワクチン開発に率先して取り組んでいる。
そして、間もなく同ワクチン開発が完了すると触れ回っていて、更に、南シナ海で領有権問題を抱えるASEAN加盟国にまず提供するとしている。...
全部読む
9月12日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「中国、COVID-19用ワクチン提供で東南アジア諸国を懐柔」
中国は、武漢(ウーハン)が発症地とされるCOVID-19が世界流行となり、国際社会における信頼度回復に躍起になっていて、COVID-19用ワクチン開発に率先して取り組んでいる。
そして、間もなく同ワクチン開発が完了すると触れ回っていて、更に、南シナ海で領有権問題を抱えるASEAN加盟国にまず提供するとしている。
これは、米国が最近になって、南シナ海問題においても対中国強硬戦略を展開していることから、その中国包囲網構築を何とか打ち破ろうとしてのことと考えられる。
この一環で、7月には中国外交部(省に相当)が、まず親中派の大統領がいるフィリピンに対して、当該ワクチンを最初に提供することを約束したと表明した。
そして8月には、中国大手製薬会社シノバック・バイオテック(北京科興生物技術、1999年設立)が、インドネシア国営製薬会社バイオ・ファーマ(1890年設立)に対して毎年2億5千万回分のワクチンを提供する契約に調印したと発表した。
更に9月初め、中国共産党政治中央政治局委員(外交トップ)の楊潔篪(ヤン・チエチー、70歳)氏がミャンマーを訪問した際、同国にもワクチンを率先して提供すると約束した。
米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS、1962年設立)東南アジア研究専門家のグレゴリー・ポリング氏は『VOA』のインタビューに答えて、“ASEAN諸国はどこも、南シナ海領有権問題に関わっていようといまいと、COVID-19問題をどうするかが最優先される”とした上で、“これらの国々は、中国のやり方が気に入らなくとも、また、南シナ海領有権問題で大人しくしたくはないと考えても、もし中国が開発したワクチンしかないとなれば、それを求めざるを得ないだろう”とコメントした。
また、ジョージタウン大学(1789年設立、ワシントンDC近郊の私立大学)国際衛生法専門のローレンス・ゴスティン教授も『VOA』に対して、“中国がワクチン外交を進めようとしていることを大いに懸念している”とし、“本来、人命救助のためとすべきワクチンを、政治的、経済的、かつ軍事戦略上で活用しようとしていることは問題”だと強調している。
実際問題、ASEAN諸国内でのCOVID-19感染は依然深刻である。
フィリピン、インドネシアでは感染者が20万~25万人と(アジア最大のインド、パキスタンに続いて)多い。
また、シンガポールでも6万人近くが感染していて、ミャンマーでは感染者が急増している。
(編注;9月12日午後8時現在データでは、フィリピン感染者25万7,964人・死者4,292人、インドネシア同21万4,746人・同8,650人、シンガポール同5万7,357人・同27人、ミャンマー同2,009人・同14人)
ゴスティン教授は、“COVID-19用ワクチンの価値は計り知れず、間違いなく近代において最も重要な医療薬となろう”とし、“何故なら、数多の人の命と経済を救うことになるから”だともコメントしている。
一方、ワクチン開発で米国と英国も先行しているが、このワクチン提供先については、米国・英国の自国以外、日本、欧州連合(EU)等が真っ先に手を挙げており、アレックス・アザー米厚生長官は、“自国や同盟国向けのワクチン提供が完了した後に他国への提供を検討する”とコメントしている。
従って、CSISのポーリング氏は、“ASEAN諸国は順番を待つしかないため、中国製でもロシア製でも頼らざるを得ない”と付言している。
閉じる
米国;米中関係悪化の中、どこまで真剣に台湾支援?【米・中国メディア】(2020/08/22)
既報どおり、米中関係は、香港問題、相互の総領事館閉鎖事態、中国製移動通信機器排除問題等で緊張は高まるばかりである。そうした中、もし中国が武力で以て台湾制圧に動いた場合、米国はどこまで真剣に台湾支援に回るかが取り沙汰されている。
8月21日付米
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「米国は本当に中国から台湾を守る?」
米国はほぼ70年間、もし中国が台湾を侵略してきた場合、台湾を擁護するのか明確に表明して来なかった。
しかし、米中関係が最悪のレベルとなり、また、中国による台湾への武力侵攻の懸念が高まる中、状況は変わりつつある。
すなわち、多くの軍事評論家から米議会議員に至るまで、今こそ米国は台湾政策に関わる“曖昧な戦略”を再検討すべき時期だと考えるようになっている。...
全部読む
8月21日付米
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「米国は本当に中国から台湾を守る?」
米国はほぼ70年間、もし中国が台湾を侵略してきた場合、台湾を擁護するのか明確に表明して来なかった。
しかし、米中関係が最悪のレベルとなり、また、中国による台湾への武力侵攻の懸念が高まる中、状況は変わりつつある。
すなわち、多くの軍事評論家から米議会議員に至るまで、今こそ米国は台湾政策に関わる“曖昧な戦略”を再検討すべき時期だと考えるようになっている。
これまで米国は、公式な外交関係がないにも拘らず、台湾向けに数十億ドル(数千億円)レベルの武器提供を行っていた。
ジョージ・メイソン大学(1972年創立のバージニア州立大学)行政学部のマイケル・フンゼカー教授は『VOA』の取材に応えて、“習近平(シー・チンピン)国家主席率いる中国共産党政府は、仮に台湾に武力行使しても、米国は傍観したままだろうとみている”とコメントした。
一方、元国防総省次官補代理でトランプ政権の国防政策に関わったエルブリッジ・コルビー氏は今週初め(8月17日の週)、『ニューヨーク・タイムズ』紙に寄稿して、“今こそ従来の曖昧な政策を終わりにして、台湾に対して明確な対応を取る時期である”とし、“そのためには、軍事体制を見直し、台湾擁護の立場を明らかにして抑止力を利かせる必要がある”と強調している。
中国による台湾侵攻については、これまで米国内で余り深刻に取り沙汰されていない。
しかし、2人の米高官が、早ければ来年早々にも中国の台湾侵攻がなされる恐れがあると言い出している。
米中央情報局(CIA)のマイケル・モレル元副長官と統合参謀本部のジェームズ・ウィルネフェルド元副議長が、今月発行の米海軍研究所機関紙に連名で投稿し、このまま曖昧な戦略を続けると、中国軍による台湾武力侵攻を止められない恐れがあると警鐘を鳴らした。
また、議会の台湾支持派の議員も、トランプ政権下でのアレックス・アザー厚生長官の台湾訪問や、F-16戦闘機の台湾向け提供という積極政策を評価している。
ただ、一部の議員は、更に明確な台湾擁護方針を打ち出すべきだと主張している。
先月にはテッド・ヨーホー下院議員(フロリダ州選出共和党員)が、中国が台湾侵略を行った場合に米軍出動を認める“台湾侵攻防止法案”を議会に提出すべく準備中だと述べている。
同議員は、“米国による曖昧な台湾政策では、中国の武力侵攻を止められない”と付言している。
なお、これに先立って、ジョシュ・ホーリィ上院議員(ミズーリ州選出共和党員)が6月11日に“台湾防衛法案”を、また、マイク・ギャラハー下院議員(ウィスコンシン州選出共和党員)が7月1日に同様の法案をそれぞれ議会に提出している。
一方、同日付中国『新華社通信』:「中国、米国に対して台湾問題は慎重に扱うよう警告」
中国外交部(省に相当)は8月21日、米国の両政党に対して、一つの中国原則、及びこれまで合意した米中3つの共同コミュニケ(注後記)に基づいて、台湾問題については慎重に扱うよう警告した。
この背景には、8月20日に開催された米民主党全国大会において、今後一つの中国原則を是認しないとの方針が決定されたこと、また、米共和党も、対中国強硬政策を取っていくと表明していることがある。
同部の趙立堅(チャオ・リーチアン)報道官は、“台湾問題は最も重要かつ慎重を要する事項である”とした上で、“一つの中国原則は、米中関係の基本であり、かつ、国際社会においての共通認識でもある”と強調した。
(注)米中3つの共同コミュニケ:1つ目は1972年2月、リチャード・ニクソン大統領(1913~1994年)が訪中した際、周恩来首相(チョウ・エンライ、1898~1976年)との間で交わした“一つの中国原則を確認した上海コミュニケ”。
2つ目は、1978年12月の“米中の外交関係樹立(これに伴う台湾との外交断絶)に関する共同コミュニケ”。
3つ目は、1982年8月の“米国による台湾向け武器輸出を漸減させることを約したコミュニケ”。
閉じる
その他の最新記事