環太平洋経済連携協定(TPP)は、日本を誘い入れた米国のバラク・オバマ大統領の後任のドナルド・トランプ大統領が、180度方針転換して同協定からの離脱を宣言して以来、漂流を続けてきた。しかし、その間に、受け身だった日本が皮肉にも推進役となり、漂流後僅か1年で米国抜きのTPP(TPP11)の基本合意に漕ぎ着けた。これは日本にとって、第二次大戦以降、米国関与、もしくは後ろ盾の国際協定にしか参画できなかった日本にとって、初めての米国抜きの国際協定締結である。これについては、TPP11の署名式典開催地のチリ大統領も、来日した上で強い支援を表明した。
2月22日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「日本、米国抜きのアジア圏自由貿易協定を推進」
第二次大戦の戦敗国の日本は、ほとんど全ての国際協定参画について、米国の関与、あるいは後ろ盾が必要とされてきた。それは、当初米国から参加を求められたTPPも然りであった。
しかし、ドナルド・トランプ大統領が2017年1月、就任時にTPP離脱を宣言したことから、同協定の正式発効が風前の灯火となっていた。...
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2月22日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「日本、米国抜きのアジア圏自由貿易協定を推進」
第二次大戦の戦敗国の日本は、ほとんど全ての国際協定参画について、米国の関与、あるいは後ろ盾が必要とされてきた。それは、当初米国から参加を求められたTPPも然りであった。
しかし、ドナルド・トランプ大統領が2017年1月、就任時にTPP離脱を宣言したことから、同協定の正式発効が風前の灯火となっていた。
そこで一躍推進役に躍り出た日本が、米国抜きの包括的かつ先進的TPP(CPTPP、あるいはTPP11)の発効に向け邁進し、遂に基本合意に辿りついた。これは、第二次大戦時に旧日本軍が標榜したが結果として失敗に終わった、西側諸国排除のアジア共栄圏の確立と言えなくもない。
ただ、TPP11の発効を目指す日本は、依然米国の参加に期待しており、今年2月初めに訪日したマイク・ペンス副大統領に対して、麻生太郎副首相兼財務相が、改めてその意向を伝えた。しかし、同副大統領の返答は、トランプ政権の目標は日米二国間の自由貿易協定の締結であると念押ししている。
日本としては、ここで立ち止まるつもりはなく、TPP11達成を礎に、続いて日本・欧州連合経済連携協定(EPA)の2019年早々の成立、更には、東南アジア諸国連合(ASEAN)・日中印豪韓NZ間の東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)推進に向けて注力していく覚悟とみられる。
同日付中国
『チャイナ・デイリィ』(
『ロイター通信』配信):「米国抜きのTPPルールが明らかに」
アジア太平洋地域では初の大規模経済連携協定となるTPP11のルール詳細が、2月21日に公表された。
それによると、当初参加国だった米国が離脱したことから、当初のTPPルールに比し、米国が要求していた知的財産権に関わる20ヵ条余りが削除されている。
新たなTPP11は今年3月8日、参加11ヵ国による署名式がチリで開催される予定である。
なお、TPP11加盟国の国内総生産(GDP)合計額は10兆ドル(約1,070兆円)と、世界のGDPの13%余りを占めるが、当初の米国参加の場合のGDP総額は、世界のそれの40%近くを占めていた。
ニュージーランドのデビッド・パーカー貿易相は2月21日、(保護貿易主義の台頭等により)世界貿易機関(WTO)の存在意義が脅かされる中にあって、CPTPPの役割は益々重要になっていると語った。
一方、2月23日付キューバ
『プレンザ・ラティーナ(国営通信社)』:「バチェレッ大統領と安倍首相が協定に署名し両国間連携強化を確認」
訪日中のチリのミチェル・バチェレッ大統領は2月23日、安倍晋三首相といくつかの協定に署名し、120年前の国交樹立(編注;日本・チリ修好通商航海条約が1897年9月成立)以来の連携強化を確認した。
今回署名された協定のひとつは、日本・チリ間パートナーシッププログラム(JCPP 2030)で、「国連の持続可能な発展のための課題2030」に基づく、南米及びカリブ海地域における食料安定供給・農業・再生可能エネルギー・気候変動対策の強化が謳われている。
同大統領は、3月8日にサンチャゴで署名式が開催される運びとなったCPTPPについて、台頭する保護主義に対抗するだけでなく、日本向けのチリ貿易の関税障壁減少にもつながり、非常に評価していると語った。
なお、安倍首相は、日本・チリ間国交樹立120年に当る昨年9月、秋篠宮殿下・妃殿下のチリ訪問の際のチリ側歓待に感謝の意を表明し、また、ブラジル及びアルゼンチンと同様、チリとの間でも防衛協力協定が成立したことについても満足していると語った。
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