したたかなインド、米国との首脳会談で防衛・通商協力強化で合意も、自国利益最大化のため米国敵視の安価なロシア産原油を大量買い付け【米メディア】
国賓として迎えられたナレンドラ・モディ首相(72歳、2014年就任)は、ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)との首脳会談で、両国間の防衛・通商面での協力を深化していくことで合意した。しかし、インドの利益最大化のためには形振り構わず、欧米諸国による対ロシア制裁のお陰で、国際市場より遥かに安くなったロシア産原油を大量に買い付けていることが分かった。
6月22日付
『ブライトバート』オンラインニュース(2005年設立の保守系メディア)は、
『ロイター通信』や
『BBCニュース』報道を一部引用して、インドが今年5月にロシアから買い付けた原油が、同国全体の40%を占めることとなり、従来の米国や中東産油国の合計輸入量を遥かに凌ぐ同国史上最高記録を更新したと報じている。
『ロイター通信』の6月21日付報道によると、原油業界ウェブサイト『OilPrice.com』及び国際データ収集機関『JODI』(2001年設立)の原油取引データから、インドの5月のロシア産原油輸入量が一日当たり195万バレル(約31万キロリットル)と、同国史上最高記録であったという。...
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6月22日付
『ブライトバート』オンラインニュース(2005年設立の保守系メディア)は、
『ロイター通信』や
『BBCニュース』報道を一部引用して、インドが今年5月にロシアから買い付けた原油が、同国全体の40%を占めることとなり、従来の米国や中東産油国の合計輸入量を遥かに凌ぐ同国史上最高記録を更新したと報じている。
『ロイター通信』の6月21日付報道によると、原油業界ウェブサイト『OilPrice.com』及び国際データ収集機関『JODI』(2001年設立)の原油取引データから、インドの5月のロシア産原油輸入量が一日当たり195万バレル(約31万キロリットル)と、同国史上最高記録であったという。
この数値は、インドの従来の輸入元であるイラク・サウジアラビア・アラブ首長国連邦(UAE)及び米国からの合計輸入量の174万バレル(約27万7千キロリットル)を遥かに凌ぐものとなっている。
また、『BBCニュース』報道によれば、5月のロシア産原油輸入量はインド全体の約40%を占め、2021年実績の2%から20倍増となっているという。
この背景には、欧米諸国による対ロシア制裁でロシア産原油価格に上限が設けられたことから、高騰する国際市場価格より大幅に安価となったことがある。
(編注;昨年9月開催の主要7ヵ国財務相・中央銀行総裁会議において、対ロシア制裁強化の一環で同年12月初め以降ロシア産原油にプライスキャップ(上限値)を設けることで合意。同年12月、欧州連合等は上限値を1バレル当たり60ドルに設定)
『BBCニュース』は、上記に伴う価格差のお陰で、インドは5月の原油輸入において約50億ドル(約7千億円)の費用を削減できた計算になるとしている。
インドは、上記のプライスキャップ制導入以前より、ウクライナ戦争に伴うエネルギー価格高騰に対応するため、従来の輸入元からのシフトを始めていて、昨年11月にはロシア産原油輸入量が、それまでの最大輸入元のサウジアラビアを凌ぐ程となっていた。
かかる状況に至る以前から、インドは、西側諸国による脱ロシア移行並びにウクライナ支援への圧力を不満に思っていた。
ハーディープ・シン・プーリ原油・天然ガス担当大臣(71歳、2021年就任)は昨年11月、“ロシア産原油を購入することに何ら道義上の問題はない”と発言している。
また、スブラマニヤム・ジャイシャンカル外務大臣(68歳、2019年就任)も今年1月、
西側諸国から安価なロシア産原油輸入量を増やしていることを咎められたことに対して、次のように強硬に反論した。
すなわち、“欧州諸国では1人当りの国内総生産(GDP)が6万ユーロ(約930万円)超かも知れないが、インドの当該数値は僅か2千ドル(約28万円)である”とした上で、“欧州諸国が対ロシア制裁の一環でロシア産原油から中東産原油へのシフトを強めたため、国際原油市場が2倍以上となっている現在、これらの民のエネルギー源確保のために安価な原油に頼ることは誰からも責められるものではない”と強調している。
なお、中国も、対欧米牽制のためにロシアとの連携を強めていて、中国海関総署(1949年設立、税関に相当)データによると、5月のロシア産原油輸入量は1日当たり229万バレル(約36万キロリットル)と前年同月比+15.3%増となり、ロシア同様これまでの最高記録を更新している。
この結果、5月時点において、中国及びインドの原油輸入量が、ロシア産原油総輸出量の80%を占める程となっている。
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米メディア、G-7一員の日本が例外措置でロシア産原油を高値買いと一斉報道
主要7ヵ国(G-7)は、欧州連合(EU)他と連携して、対ロシア制裁の一環で、昨年12月初め以降、ロシア産原油の輸出価格に「プライスキャップ制度(注後記)」を適用する旨決定している。そうした中、G-7の一員である日本が、同制度に反して、設定価格より高い値段でロシア産原油を購入するという例外措置を適用している。
4月4日付
『デイリィ・ワイア』、
『ブライトバート』オンラインニュース等保守系メディアが、
『ウォールストリート・ジャーナル』の特報記事を引用して、日本が欧米諸国間で制定した「プライスキャップ制度」を適用せず、ロシア産原油を高値買いしていると一斉に報じている。
西側諸国は昨年12月、EU、G-7を中心として、ウクライナ侵攻を止めないロシアを制裁する一環で、ロシア産原油の輸出価格に「プライスキャップ制度」を適用する旨決定している。...
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4月4日付
『デイリィ・ワイア』、
『ブライトバート』オンラインニュース等保守系メディアが、
『ウォールストリート・ジャーナル』の特報記事を引用して、日本が欧米諸国間で制定した「プライスキャップ制度」を適用せず、ロシア産原油を高値買いしていると一斉に報じている。
西側諸国は昨年12月、EU、G-7を中心として、ウクライナ侵攻を止めないロシアを制裁する一環で、ロシア産原油の輸出価格に「プライスキャップ制度」を適用する旨決定している。
同価格上限は、1バレル当たり60ドル(約8千円)で、世界原油市場を混乱させないため、ロシア産原油の供給継続は認めるものの、ロシアの収入を制限するため上限価格を設定したものである。
しかし、この程判明したところによると、G-7の一員である日本が、ロシア極東のサハリン-2産原油を、上記上限価格を上回る値段で購入している。
『ウォールストリート・ジャーナル』4月2日報道によると、今年1、2月に日本が輸入したロシア産原油価格が、プライスキャップ制度上の上限価格を上回っていたという。
経済産業省高官が同紙に語ったところによると、大量の原油を輸入に頼っている日本として、日本企業(三菱商事及び三井物産)が関わっているサハリン-2産の原油及び天然ガスは重要な供給元で、“日本のエネルギー事情に大きな支障を与えないよう注意深く対応する必要がある”と言及している。
日本が依拠するロシア産天然ガスは全体の10分の1程度であるが、一方、ドイツは、ロシアのウクライナ侵攻前でロシア産天然ガス供給に全体の半分以上を頼っていたものの、ウクライナ支援方針の下、他ソースへの転換という大きな舵切りを断行している。
これは、日本が以前から、エネルギー政策含めてロシアとの連携を継続していた背景があるためと考えられ、このためもあってか、G-7が際限ないウクライナ支援策を打ち出す中で、日本の態度が見劣りしてみえる。
これに対して、松野博一内閣官房長官(60歳、2021年就任)は、“ロシアによるウクライナ軍事侵攻を一切認めないという対応に変わりはない”とし、“ロシアに侵攻を止めさせるべく、対ロシア制裁も厳しく行っている”と強調した。
また、岸田文雄首相(65歳、2021年就任)も、5月に広島で開催されるG-7サミットにおいて、ウクライナ支援を力強く宣言する意向を示している。
(注)プライスキャップ制度:EU、G-7、オーストラリアが制定した制度で、世界市場へのロシア産原油の供給を維持すると同時に、ロシアが石油輸出から得る収益を削減することを目的としたもの。2022年12月5日から発効。
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