10月10日は台湾の国慶日(双十節、1911年に清朝からの独立をもたらした辛亥革命の記念日)である。その祭日を祝う演説で、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は、中国の圧力に屈せず台湾の自由と民主主義を守っていくと強調した。同総統は9月初め、独立志向の急先鋒である賴清德氏(ライ・チンテ、前台南市長)を首相に任命している。1週間後に中国共産党第十九次全国代表大会(十九大)開催を控える中国は、目下のところ静観しているが、習近平(シー・チンピン)主席の2期目が確定するや否や、益々強硬な対台湾政策を打ち出してくることは必至とみられる。
10月10日付米
『ロイター通信米国版』:「台湾総統、中国の圧力に屈せず台湾の自由を守り抜くと宣言」
台湾の蔡英文総統は10月10日の国慶日の祝日に、大国中国の増大する圧力に屈せず、台湾の自由と民主主義を守り抜くと演説した。
中国はかねてから、一つの中国原則を貫いてきていることから、昨年5月に台湾独立を標榜する民主進歩党の蔡党首が総統に就任以来、中台関係は冷え込み、定期的対話等一切行われていない。...
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10月10日付米
『ロイター通信米国版』:「台湾総統、中国の圧力に屈せず台湾の自由を守り抜くと宣言」
台湾の蔡英文総統は10月10日の国慶日の祝日に、大国中国の増大する圧力に屈せず、台湾の自由と民主主義を守り抜くと演説した。
中国はかねてから、一つの中国原則を貫いてきていることから、昨年5月に台湾独立を標榜する民主進歩党の蔡党首が総統に就任以来、中台関係は冷え込み、定期的対話等一切行われていない。
蔡総統は演説で、一つの中国原則を否定するような言及はせず、ただ、関係改善のための中台対話を呼び掛けた。
しかし、『新華社通信』は、中国国務院台湾事務弁公室が声明で、台湾と本土(中国)が一つの中国に属するという核心的な認識が必要であり、これがなくば、対話などは無意味だと一蹴したと報じた。
なお、中国は10月18日から十九大を開催し、習主席の2期目の指導体制を固める予定であるが、同主席はこれまで、東・南シナ海での領有権争いには一歩も譲歩しないと強調しており、台湾問題も同様頑なな対応を継続するとみられる。
同日付英『デイリィ・メール・オンライン』(『AFP通信』配信):「台湾総統:国防増強を打ち出すものの交戦は望まずと表明」
蔡総統は演説で、自前の戦闘機・潜水艦等の建造を進めて国防の増強を図っていくとしながらも、自ら戦いを仕掛けることはないと言及した。
更に同総統は、中台それぞれの違いはあるものの、引き続き台湾海峡及び周辺地域の平和と安定を維持すべく努めていくとも述べた。
中国はこれまで、蔡総統に一つの中国原則を確認するよう求めているが、同総統はこれを拒んでいる。そこで中国は、台湾海峡に中国国産空母を配備して軍事演習を実施したり、主たる国際会議への台湾の参加を妨害する行為に出ている。
一方、同日付台湾『フォーカス台湾』(台湾国営中央通信社のウェブサイトニュース):「蔡総統の協議呼び掛けに野党党首らは異なる反応」
蔡総統は10月10日の演説で、台湾の憲法改正やその他構造改革を前進させるため、各党に協議を呼び掛けた。
民主進歩党の党首でもある蔡総統は直近で、選挙権の18歳への引き下げ、人権条項の追加、更には、立法院(国会に相当、定数113)の定数変更に関し、憲法の改正を検討したいと表明していた。
しかし、野党党首はそれぞれ異なる対応に出ている。すなわち、
・中国国民党の呉敦義(ウー・トンイー)党首:議題や協議の体裁が妥当なら、協議を拒むことはない。
・同党の李明賢(リー・ミンシェン)文化・通信委員会委員長:蔡総統の誠実さには懐疑的。
・親民党:国内問題の前に、まず外交政策について協議することが先決。
・時代力量の徐永明(シュー・ユンミン)党首:憲法改正のためには各政党の合意が不可欠であるが、まず党首間で協議することは賛同。
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12日(土)に台湾が実効支配する南シナ海・南沙諸島の太平島で、港湾施設の完工式が行われ台湾の内政部長(内相)が出席したが、予定されていた馬英九総統の出席は見送りとなった。この地域は中国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイなどが領有権を主張しており、馬総統が出席すれば他国からの反発は避けられず、新たな紛争を避けたものと見られる。馬総統は「南シナ海平和イニシアチブ」を提唱し、領有権問題の解決から資源の共同開発に焦点移すことを呼びかけている。外交的な影響力を持たない台湾は、各国との摩擦を避けつつ領土権を模索している。
12月13日付の
『フォーカス台湾(台湾通信社)』は、台湾当局は陳威仁・内政部長による太平島視察は台湾の領有権行使であり、他国が干渉する問題ではないと主張したと伝えた。ベトナムはこれに反対する声明を発表している。
また別の記事では、米国務省東アジア・太平洋局は南シナ海の領土権を主張する国々に対して地域間の緊張緩和に努力するよう呼びかけ、内政部長の太平島訪問は平和的な目的に寄与することであることを希望すると述べたと伝えた。...
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12月13日付の
『フォーカス台湾(台湾通信社)』は、台湾当局は陳威仁・内政部長による太平島視察は台湾の領有権行使であり、他国が干渉する問題ではないと主張したと伝えた。ベトナムはこれに反対する声明を発表している。
また別の記事では、米国務省東アジア・太平洋局は南シナ海の領土権を主張する国々に対して地域間の緊張緩和に努力するよう呼びかけ、内政部長の太平島訪問は平和的な目的に寄与することであることを希望すると述べたと伝えた。
同日付
『ウォールストリート・ジャーナル』では、中国当局はこの件に関して声明を出していないことを伝え、完工式当日に中国海軍が南シナ海で演習を行ったが、これは定例の演習であると述べたと伝えた。
アメリカのシンクタンクCSIS(戦争国際問題研究所)は、滑走路は台湾のF-16戦闘機、C-130ハーキュリーズ、P-3哨戒機などが離着陸可能な長大なものだとしている。台湾は、1946年に太平島の実効支配を開始し、1956年に軍事基地が建設された。2000年には100名の沿岸警備隊が配置されている。
台湾は、太平島の開発は「南シナ海平和イニシアチブ」のもと、平和的、環境保護かつCO2排出削減を目的としたものであると国際社会に宣言している。
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