プーチン大統領;平昌冬季大会からの排除通告、米大統領のイスラエル擁護の一方的決定、及び来春の大統領選出馬それぞれについての対応【米・フランスメディア】(2017/12/08)
11月23日付GLOBALi「プーチン大統領、米国を尻目にトルコ・イラン首脳と連携してシリア内戦終結に向け邁進」で報じられたロシア大統領の対応について、トランプ大統領は苦々しく思ったのかも知れない。イラン核合意から離脱すると発言している同大統領が、突然イスラエルの首都はエルサレムだと宣言したからである。プーチン大統領もこれには黙っておられず、トルコとともに米側主張に真っ向から反対を表明した。一方、国際オリンピック委員会(IOC)から突き付けられた、平昌(ピョンチャン)冬季大会からのロシア締め出し決議に対しては、ドーピング疑惑を西側諸国の陰謀として全否定してきた政府見解を翻し、IOC決定に従うとの従順さを示した。そして更に、ロシアとして同冬季大会をボイコットするのではなく、ロシア選手の個人としての参加を容認するとの柔軟な対応を見せた。これについては、来春のロシア大統領選に向けて、ロシア選手やその支援者等を敵に回すことを避けた人気取りが透けて見えるとのメディア報道もある。
12月7日付フランス
『France 24』オンラインニュース(
『AFP通信』配信):「プーチン大統領、米国大使館をエルサレムに移設するとの動きに“深刻な懸念”を表明」
ウラジーミル・プーチン大統領は12月7日、ドナルド・トランプ大統領が発表した、イスラエルの首都はエルサレムであるとの宣言に“深刻な懸念”を表明した。
ロシア大統領府の発表では、同大統領はトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と電話会談し、パレスチナとイスラエル両国には、“事態を冷静に捉えて”新たな対話を始めることを提案していくことで一致したという。...
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12月7日付フランス
『France 24』オンラインニュース(
『AFP通信』配信):「プーチン大統領、米国大使館をエルサレムに移設するとの動きに“深刻な懸念”を表明」
ウラジーミル・プーチン大統領は12月7日、ドナルド・トランプ大統領が発表した、イスラエルの首都はエルサレムであるとの宣言に“深刻な懸念”を表明した。
ロシア大統領府の発表では、同大統領はトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と電話会談し、パレスチナとイスラエル両国には、“事態を冷静に捉えて”新たな対話を始めることを提案していくことで一致したという。
ロシア外務省も、エルサレムの帰属問題等は、イスラエル・パレスチナ両当事国同士の協議に委ねるべきとする方針を再確認するとしている。
同日付米『フォリン・ポリシー』オンラインニュース:「プーチン大統領、(IOCによる)オリンピックからのロシア締め出し決議を、来春のロシア大統領選挙への支援獲得の手段に使う」
プーチン大統領は、長い間沈黙を守ってきた来春の大統領選について、IOCがドーピング問題を理由に、ロシアを平昌冬季大会から締め出すとの決議を出した翌日に、正式に出馬すると表明するに至った。
同大統領は12月6日、ロシア中央部のニジニ・ノヴゴロド市にある自動車会社GAZ(ゴーリキー自動車工場を意味するロシア語の頭文字、1929年設立)を訪れた際、労働者らから求められる形で出馬することを認めた。
ロシアは目下、IOCの決議の他、2016年米大統領選に関わるロシア介入疑惑の捜査が進展する等、国際社会から悪い意味で注目を集めてしまっている。
そこで同大統領としては、第二次大戦でのファシズムに対する勝利はもとより、元々ロシア人の領土であったとするクリミア半島併合を成し遂げたことまで持ち出して、今こそロシアは結束すべきときとアピールした。
更に同大統領は、これまでの主張に則り、IOC決議に真っ向から反対して冬季大会をボイコットするのではなく、ロシア選手の個人として参加する道を容認することで、ロシア市民他から余計な非難を浴びないように配慮した。
なお、下馬評ではプーチン大統領の有力な対抗馬はいない。しかし、同氏としては、これまでの通算18年に加わる4期目(6年)を、大多数の支持率を持って迎えたいと欲していると考えられる。
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トランプ大統領が北朝鮮及び通商問題を優先している陰で中国が南シナ海制圧を着々と促進【米・英・中国メディア】(2017/11/17)
11月12日付GLOBALi「南シナ海問題:習・ドゥテルテ両首脳が対話路線を強調すれば、トランプ大統領はベトナム首脳に仲介の申し出」で触れたとおり、本家のドナルド・トランプ大統領はもとより、フィリピンのトランプことロドリゴ・ドゥテルテ大統領も、習近平(シー・チンピン)国家主席のいない所でないと、強気の姿勢を見せられないようである。一方、習指導部は、トランプ大統領が北朝鮮及び通商問題にかかずらっている間に、南シナ海の軍事拠点化拡充並びに東南アジア諸国連合(ASEAN)抱き込みを着々と進めている。
11月16日付米
『フォリン・ポリシー』オンラインニュース:「トランプ大統領が北朝鮮問題にかかずらっている間に中国が南シナ海制圧を着々と促進」
ドナルド・トランプ大統領は、直近12日間に及ぶアジア初歴訪の間、北朝鮮及び通商問題に焦点を当て、一方で、南シナ海問題に関わり中国を直接批判することを避けた。
これを千載一遇の機会と捉えてか、習近平指導部は、南シナ海に建設した人工島の軍事拠点化と、一部の国と領有権問題を抱えるASEAN諸国の抱き込みを着々と進行させている。...
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11月16日付米
『フォリン・ポリシー』オンラインニュース:「トランプ大統領が北朝鮮問題にかかずらっている間に中国が南シナ海制圧を着々と促進」
ドナルド・トランプ大統領は、直近12日間に及ぶアジア初歴訪の間、北朝鮮及び通商問題に焦点を当て、一方で、南シナ海問題に関わり中国を直接批判することを避けた。
これを千載一遇の機会と捉えてか、習近平指導部は、南シナ海に建設した人工島の軍事拠点化と、一部の国と領有権問題を抱えるASEAN諸国の抱き込みを着々と進行させている。
特に、南沙(スプラトリー)諸島内に建設した7つの人工島のうち、ファイアリー・クロス、ミスチーフ、スビ礁において重点的に恒久施設-ジェット戦闘機離着陸用滑走路、レーダー設備、戦闘機格納庫、ミサイル防衛ドーム等-の建設を完工させている。
軍事専門家によると、トランプ政権は、南シナ海については、北朝鮮及び通商問題程緊急性がないとの判断であろうが、中国があまり目立たないように、しかし着々と同海域を制圧しつつあるとみている。
トランプ大統領は外遊時の最後、ベトナム首脳との会談時に南シナ海領有権問題での“仲介役”を買って出たが、ベトナム高官としては、北朝鮮問題で中国の協力を仰ぐことの方が優先されると見越している。
同日付英『デイリィ・メール・オンライン』(『AP通信』配信):「ASEAN首脳、中国が建設の人工島や仲裁裁定敗訴の件は回避」
ASEANは11月16日、首脳会議から3日遅れで声明を発表した。それによると、これまで言及されてきた中国による南シナ海海洋進出についての“深刻な懸念”や“懸念”との表現が使われず、ただ、今年枠組み合意された「行動規範(COC)」に基づき、中国・ASEAN間で詳細交渉が進展することが期待されるとのみ言及した。
今年度のASEAN議長国フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領も、中国とASEANの関係は改善されていると強調し、前政権が提訴して勝ち取った常設仲裁裁判所の裁定についても何ら言及しなかった。
一方、国際人権監視団等から非難されていた、フィリピンの麻薬犯罪取り締り上の超法規的殺人やミャンマー政府によるロヒンギャ族虐待についても、同声明で直接的な批判表現が使われることはなかった。
一方、11月13日付中国『環球時報』:「南シナ海で部外者の“助け”は不要」
トランプ大統領はベトナム訪問時、チャン・ダイ・クアン国家主席に対して、もしベトナムが中国と南シナ海領有権問題でもめるようなことになれば、いつでも仲介役を買って出ると申し出た。
しかし、この自惚れた申し出に対して、当事国はいたって気のない反応を示した。すなわち、チャン主席は、南シナ海問題は国際法に則って平和裏に交渉していくと返答した。また、フィリピンのアラン・カイェタノ外相は、申し出は感謝するが、本問題はASEANグループと中国間で解決の道を探るとコメントした。
米国は、オバマ前大統領時代から南シナ海に必要以上に口出ししてきている。しかし、その時代と違って、中国とフィリピン間、また、ベトナムとの間において、領有権問題を対話で解決する態勢が形成されつつある。
従って、関係国はみな、日米の余計な干渉によって、問題が反って複雑化するだけだということを、段々と認識するようになっている。それは、トランプ大統領の申し出に対する、ベトナム及びフィリピンの対応で明らかであろう。
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