日本政府;日米貿易交渉の早期決着へと方針大転換【米メディア】(2019/04/24)
日米両政府は先週、ワシントン特別区で閣僚級の貿易交渉の初会合を持った。それを踏まえて米メディアが分析したのは、日本政府が従来ののらりくらり戦術から早期決着へと大幅な方針転換を行ったとみられるということである。すなわち、1980年代の長期交渉で粘り勝ちしたように、ここ数年においても、米国側の早期交渉の申し出に対して、確たる対応をせず、台風一過を待ち望んでいたとみられた。しかし、トランプ政権の支持基盤である米国農家が直接的損害を受けて、日本市場が豪州・カナダ他の競争相手に席巻されることを望まなくなったとみられること、更に、日本側として、一時的にせよ妥結しても、来年秋の大統領選の結果で“トランプ後の新政権”と再交渉が可能とみると判断したことが背景にあると分析している。
4月22日付
『フォリン・ポリシー』:「日本、日米貿易交渉の早期決着へと舵切り」
先週、ワシントン特別区で行われた日米貿易交渉において、茂木敏充経済財政・再生相とロバート・ライトハイザー米通商代表は、両国貿易交渉の早期妥結で一致した。
しかし、この背景には、早期妥結が有利となると判断した日本側が仕掛けた、巧みな戦術があるとみられる。
すなわち、これまでの日本は、かかる交渉を可能な限り長引かせて実利を得るという戦術に固執してきた。...
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4月22日付
『フォリン・ポリシー』:「日本、日米貿易交渉の早期決着へと舵切り」
先週、ワシントン特別区で行われた日米貿易交渉において、茂木敏充経済財政・再生相とロバート・ライトハイザー米通商代表は、両国貿易交渉の早期妥結で一致した。
しかし、この背景には、早期妥結が有利となると判断した日本側が仕掛けた、巧みな戦術があるとみられる。
すなわち、これまでの日本は、かかる交渉を可能な限り長引かせて実利を得るという戦術に固執してきた。
在日米大使館のウィリアム・ハガティ大使が今年2月、『朝日新聞』のインタビューに答えていみじくも、マイク・ペンス副大統領が日本側に対して、2017年、遅くとも2018年には交渉を決着したいと強く求めていたのに、結局日本側から何の回答も得られず頓挫したと明かしている。
この引き延ばし戦術は、1970~1980年代における日米貿易摩擦問題においても取られていた。
その際日本側は、当時の米国ではすでにトヨタ、パナソニック、ソニーが揺るぎない力を発揮していたにも拘らず、輸出至上主義の下、可能な限りの輸入制限を仕掛けた。
これによって、当時の政権にとって重要な支持者である農産者を擁護し、国内生産者が有利となるよう時間稼ぎをしていたからである。
かかる事態があったからこそ、ドナルド・トランプ大統領は、今回の日米貿易交渉に当っても、1980年代の日米貿易摩擦時のことを盛んに引き合いに出している訳である。
今回の交渉の際、米国側は、2018年における米国の入超は676億ドル(約7兆5,700億円)と非常に多額であると訴えている。
更に悪いことに、日本が4月17日に発表した貿易統計によると、3月における米側入超額が前年同月比+9.8%も上昇している。
しかし、ここへきて日本側に、早期決着という大きな方針転換があった背景には次があると考えられる。
第一に、米政権の支持基盤である米農産者が、貿易交渉がまとまらないことによって、直接的被害が増大しているとして、政府に対して早期決着を強く求め始めたことである。
すなわち、日本側は、包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)締結に基づき、締約国である豪州、NZ、カナダなどから非課税、あるいは関税減額となった農産品を多量に輸入するようになっている。
また、同時に日本は、欧州連合(EU)との間で日本・EU経済連携協定(EPA)を締結し、EUに対しても門戸を開放している。
例えば、豚肉取引をみると、今年2月の実績値で、EUから日本向けの輸出高は54%も急上昇し、メキシコ及びカナダも、輸出額を20%余り増やしている。
一方、米産豚肉は、14%も減少している。
米国豚肉生産者協会は4月1日、CPTPPやEPA締約国が好条件で日本市場への輸出を格段に増やし、そのために米国からの輸出額が激減しているとの声明を発表した。
第二に、早期決着の場合、多くが暫定措置であり、恒久的合意とならない以上、もし来秋の大統領選でトランプ政権が交代することになれば、当該暫定措置も効力がなくなる可能性があるとみていると考えられる。
そして、米通商代表が中国との貿易紛争に注力せざるを得ない間に、日本側として、当たり障りのないところで決着をすることができると踏んでいるとも考えられる。
更に、両首脳間の個人的な関係から言えば、トランプ大統領が5月下旬に新天皇拝謁のために来日すること、また、6月28、29日に大阪で開催される主要20ヵ国首脳会議(G-20サミット)出席のため再度来日することから、同大統領をして、日本製自動車への追加関税賦課等、手荒な政策は取らないだろうとの期待もあるとみられる。
ともかく、安倍晋三首相は、近々訪米して4月26日にトランプ大統領と首脳会談を持つ予定で、同大統領のご機嫌取りを行うものと予想される。
奇しくも、同会談開催日は、ファースト・レディのメラニア・トランプ夫人の誕生日でもあり、また、翌日には同大統領とのゴルフも予定されていることから、益々日米貿易交渉に関し、同大統領から厳しい注文は出ないと期待していることは十分考えられる。
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2度目の米朝首脳会談も日本に疎外感【米メディア】(2019/02/27)
ドナルド・トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)委員長の2度目の米朝首脳会談がいよいよ開催される。安倍晋三首相としては、直前に同大統領と電話会談し、日本側意向を反映して、朝鮮半島非核化及び拉致被害者早期返還について具体的進展を切望している。しかし、日本側の正直な気持ちは、日本の期待通りの成果よりも、むしろ起こって欲しくない一方的な対北朝鮮妥協という会談結果に終わらないことを願う限りと言える。かかる状況からも、依然日本側に疎外感(蚊帳の外)が漂っている。
2月26日付
『フォリン・ポリシー』政治ニュース:「米朝首脳会談で日本に疎外感」
安倍晋三首相は2018年9月、国連総会において、北朝鮮との“相互不信の殻を打ち破る”用意はあるし、金正恩委員長と日朝首脳会談を持つと宣言した。
しかし、それ以降、米朝、南北朝鮮、中朝首脳会談が続けて熱狂的に開催されるも、全てにおいて日本は蚊帳の外に置かれている。
そこで、宣言通り未だに日朝首脳会談が開催できない日本が最も恐れることは、ドナルド・トランプ大統領が、日本側との事前打合せのないシナリオで北朝鮮側と話を進めてしまうことである。...
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2月26日付
『フォリン・ポリシー』政治ニュース:「米朝首脳会談で日本に疎外感」
安倍晋三首相は2018年9月、国連総会において、北朝鮮との“相互不信の殻を打ち破る”用意はあるし、金正恩委員長と日朝首脳会談を持つと宣言した。
しかし、それ以降、米朝、南北朝鮮、中朝首脳会談が続けて熱狂的に開催されるも、全てにおいて日本は蚊帳の外に置かれている。
そこで、宣言通り未だに日朝首脳会談が開催できない日本が最も恐れることは、ドナルド・トランプ大統領が、日本側との事前打合せのないシナリオで北朝鮮側と話を進めてしまうことである。
日本の高官は非公式に、正直に言って日本が期待するのは、米朝首脳会談が思い通りにいくことよりも、むしろ最悪の事態が起こらないことだとコメントしている。
他の米同盟国も、2度目の米朝首脳会談で、トランプ大統領が金委員長にうまく丸め込まれてしまうことを密かに恐れている。
この思いは、マイク・ポンペオ国務長官も同様だと報じられてもいる。
実際問題、昨年6月の最初の米朝首脳会談以降、北朝鮮の非核化の具体的道筋は全くみえず、両国事務局折衝では、お互いの主張をぶつけ合うだけで、行き詰ったままとなっている。
また、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、南北融和に前のめりで、金委員長と会談する度に、握手・抱擁の姿をメディアに流させ、二国間友好関係を演出している。
一方、安倍首相にとって日朝会談を設定するに当って、北朝鮮が日本及び安倍首相を敵視している現状下、韓国、あるいは米国の支援なしには話を前に進められない。
ただ、同首相としては、特にトランプ大統領と緊密な関係が構築できているとの考えの下、同大統領と事前協議で政策・方針のすり合せはできていると自負している。
しかしながら、日本として米朝首脳会談を外から見守るだけという立場に変わりはない。
米中央情報局(CIA)の元朝鮮半島担当のブルース・クリングナー氏も、日本の高官と話した際、トランプ大統領がシナリオのない話を進めてしまうことを懸念しているとコメントしていたという。
現実的に、トランプ大統領は2018年の最初の米朝首脳会談の後、一方的に米韓合同演習の終結を宣言してしまったし、昨年12月も、国防省等との打合せもなく唐突に、シリアやアフガニスタンからの米軍撤退を発表している。
そこで、『日経アジアン・レビュー』紙コメンテイターの秋田浩之氏は、日本が最も恐れることは、トランプ大統領が、米国の直接的脅威となる大陸間弾道ミサイル開発は止めさせるにしても、日本の脅威となる短・中距離ミサイルは野放しにしてしまうことであり、それこそ“日本にとって悪夢”であるとする。
また、安倍首相が任期中の解決を目指して注力している、北朝鮮の拉致被害者の早期解放についても、優先事項と捉えていない米国や韓国経由の交渉では全く進展は期待できない。
戦略国際問題研究所(CSIS、1962年設立の米民間シンクタンク)北朝鮮問題専門家のスー・ミ・テリィ氏も、拉致問題は金委員長にとっても優先事項ではないことから、安倍首相としても日朝首脳会談で直談判せざるを得ないことだとする。
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