中国探査船;バイデン新政権の対中強硬政策具体化前に着々と南シナ海で海底資源探査継続【米メディア】(2021/02/18)
2月17日付GLOBALi「バイデン新政権;東アジアに対して軍国主義的に対応」で報じたとおり、ジョー・バイデン大統領(78歳)は、アジア政策においてはもっぱら、中国の軍事力及び経済力の台頭を阻止することに注力すると明言した。しかし、したたかな中国は、新政権が対中強硬政策を具体化する前に、広い南シナ海に米軍艦が進出してこようとお構いなく、自身が主張する同海域における海底資源探査等を着々と継続推進している。
2月18日付
『ユーラシア・レビュー』オンラインニュース:「中国探査船、ベトナムが領有権を主張する海域でも構わず探査活動等を継続」
中国国営メディア報道及び船舶追跡データによると、中国政府所有の探査船が、ベトナムが領有権を主張する海域において、探査活動を実施していたことが判明した。
探査船“探策(タンスオ)2号”で、2月4日に海南島南端の三亜港(サンヤー)を出航して後、2月9日までの間に、西沙諸島(パラセル)周辺海域内において、ベトナム・ダナンから140海里(約260キロメートル)沖で生体資料の採取や深海潜水探査艇の試験を行っていたという。...
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2月18日付
『ユーラシア・レビュー』オンラインニュース:「中国探査船、ベトナムが領有権を主張する海域でも構わず探査活動等を継続」
中国国営メディア報道及び船舶追跡データによると、中国政府所有の探査船が、ベトナムが領有権を主張する海域において、探査活動を実施していたことが判明した。
探査船“探策(タンスオ)2号”で、2月4日に海南島南端の三亜港(サンヤー)を出航して後、2月9日までの間に、西沙諸島(パラセル)周辺海域内において、ベトナム・ダナンから140海里(約260キロメートル)沖で生体資料の採取や深海潜水探査艇の試験を行っていたという。
同海域は、ベトナムが領有権を主張している排他的経済水域(EEZ)内に当たるが、中国は南シナ海全体の9割近くを自国の主権だと一方的に主張していて、ベトナム同様、南シナ海の一部の海域で同じく領有権を主張しているブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、台湾と対立してきている。
これに対して、米国は以前から、南シナ海における中国の一方的な領有権主張及び海洋進出は認めないと非難してきている。
この姿勢はバイデン政権になっても変わらず、直近でも、米海軍第7艦隊は、ミサイル駆逐艦“ラッセル”が2月17日、南シナ海南沙諸島(スプラトリー)周辺海域において“航行の自由作戦(FONOP)”を展開したと発表している。
しかし、米国のみならず、周辺国からの反発や抗議行動にお構いなしに、中国はこれまで、南シナ海及び更に拡大した海域において、天然資源探査、海底起伏調査、最新技術試験やその他科学的調査を継続してきている。
例えば、『フィリピン・デイリィ・インクワイアラー』紙(1985年創刊)報道によると、今年1月、福建省の厦門大学(シャーメン、1921年設立の国立大)所有の探査船“嘉庚(チアガァン)号”が、フィリピン政府の事前了解ないままフィリピン領海内で探査活動を実施していたという。
また、昨年12月には、南シナ海ではないが、インドネシア東部スラウェシ島南部のセラヤー島周辺海域で、インドネシア政府が中国所有とみられる無人潜水機を発見している。
同機は、人民解放軍(PLA)海軍の潜水艦のための情報収集活動を行っていたとみられている。
なお、冒頭で報じた“探策2号”は、中国国営メディアによれば、中国科学院(1958年設立)傘下の深海科学技術研究所(2015年発足)所有の探査船で、同船には同科学院の研究員60名が乗船し、また、有人深海探査艇“深海戦士”を艦載していたという。
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フィリピンのトランプ;本家退陣後も米軍の駐留費や合同軍事演習費用支払いを求める等依然米国に対して強硬【欧米メディア】(2021/02/13)
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領(75歳)は、2016年に就任以来、傍若無人な発言や態度を繰り返すことから、フィリピンのトランプと揶揄されていた。そして、本家退陣後もその姿勢は変わらず、今度は米国に対して、駐留米軍や合同軍事演習に関わる費用を支払えと言い出している。
2月13日付
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「ドゥテルテ大統領、フィリピンとの地位協定維持のために米国側に費用弁済を要求」
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は2月12日、締結後20年余り続く「訪問米軍に関する地位協定(VFA、注後記)」の維持に関わる費用を米国側に支払うよう求めたいと発言した。
フィリピン国軍兵士を前にして演説したもので、同大統領は、VFAに基づいて合同軍事演習等を行ってきているが、それに伴い応分の負担が必要だと言及した。...
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2月13日付
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「ドゥテルテ大統領、フィリピンとの地位協定維持のために米国側に費用弁済を要求」
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は2月12日、締結後20年余り続く「訪問米軍に関する地位協定(VFA、注後記)」の維持に関わる費用を米国側に支払うよう求めたいと発言した。
フィリピン国軍兵士を前にして演説したもので、同大統領は、VFAに基づいて合同軍事演習等を行ってきているが、それに伴い応分の負担が必要だと言及した。
同大統領によると、例えば南シナ海における緊張が高まって、米中間で衝突が発生した場合、“VFAに基づいてフィリピン国軍も戦闘に巻き込まれる訳で、当然その補償を求めることになる”という。
ただ、同大統領は、金額含めてどういった費用の補填になるのか詳細には触れていない。
一方、『フィリピン・デイリィ・インクワイアラー』紙(1985年創刊)によると、同大統領発言の前日、米新政権とフィリピン高官が安全保障上の協力について協議しており、その際デルフィン・ロレンザーナ国防相(72歳)が、今夏に米比合同軍事演習の再開を希望している旨発言したという。
同大統領は約1年前、VFAの破棄を言い出していたが、その後この発言を撤回している。
同大統領はしばしば、米国との同盟関係に疑問を投げかける発言をしているが、実際上は、フィリピン国軍は米軍と協調して、南シナ海における中国側の勢力拡大活動に抵抗してきている。
なお、フィリピン外務省は2月12日、中国に対して60通の外交文書を出状した旨公式ツイッターアカウントに投稿している。
この中には、中国が直近で法制化した中国海警法(南シナ海において、海警艦が外国船舶に対して武器使用を認める法律)について抗議する1月27日付外交文書も含まれている。
同日付『ロイター通信』:「ドゥテルテ大統領、地位協定を維持したいなら“応分の支払いが必要”と米国に要求」
ドゥテルテ大統領は、熱血漢のナショナリストで、これまでもしばしば米国との長年の同盟関係に不満を募らせてきており、昨年には米国側が、同大統領の盟友であるフィリピン国会議員に対して米国入国ビザを発給しないとしたことに腹を立てて、VFAを破棄すると言い出している。
この発言は後に撤回されたが、同大統領は今度、VFAを維持したければ、米国は応分の費用負担をすべきだと発言したものである。
しかし、一方でフィリピン国防省は、貧弱な国軍にとって、米軍の支援に基づく軍事力向上は願ってもないため、VFAの継続を希望している。
そして同省は2月11日、バイデン新政権下で初の国防会議を開催し、南シナ海において勢力を拡大してきている中国に対抗するために協働していくことを再確認している。
(注)VFA:米国とフィリピンの間で1998年に締結された地位協定の一つ。米兵のフィリピン国内での法的地位について定め、合同軍事演習や有事の際に米軍の迅速な援助を可能としている。協定の締結後に米兵が罪を犯し、フィリピン側が容疑者の拘束を求めたものの拒否された事件があり、フィリピン国内には不平等だとの批判も存在する。なお、同協定は、2020年8月に失効する見込みとなっていたが、同年6月、当初協定破棄を発表していたドゥテルテ大統領が、外交関係の多様化を図ることを理由として、破棄を撤回している。
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