フィリピン;マルコスJr.新大統領の下で対中政策見直しか、国防省も元老院(上院)も南シナ海領有権問題で強硬姿勢【米・フィリピンメディア】
ロドリゴ・ドュテルテ政権下では、親中路線を標榜していたこともあって、南シナ海の領有権問題では中国と際立った対立を見せるのではなく、むしろ経済支援を引き出す対応に終始した。しかし、ボンボン・マルコス新大統領(65歳、2022年就任)は対中政策を見直す意向か、この程、度重なる中国船のフィリピン主権主張海域への無断侵入に対して、国防省のみならず元老院(上院)まで公に厳しく非難する姿勢をみせている。
12月18日付フィリピン
『ザ・フィリピン・タイムズ』オンラインニュースは、「フィリピン高官、中国船の度重なる主権海域無断侵入を糾弾」と題して、国防省幹部が、新大統領の指示だと断ったうえで、フィリピンは南シナ海における主権海域を1ミリも譲る意向はないとはっきりと表明したと報じている。
ホセ・ファウスティーノ国防次官(57歳、2022年就任)は12月18日、十数席の中国船が南シナ海のフィリピン主権海域に無断侵入した件に関し、“全く受け入れられない”し、明らかにフィリピン主権を脅かすものだと非難する声明を発表した。...
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12月18日付フィリピン
『ザ・フィリピン・タイムズ』オンラインニュースは、「フィリピン高官、中国船の度重なる主権海域無断侵入を糾弾」と題して、国防省幹部が、新大統領の指示だと断ったうえで、フィリピンは南シナ海における主権海域を1ミリも譲る意向はないとはっきりと表明したと報じている。
ホセ・ファウスティーノ国防次官(57歳、2022年就任)は12月18日、十数席の中国船が南シナ海のフィリピン主権海域に無断侵入した件に関し、“全く受け入れられない”し、明らかにフィリピン主権を脅かすものだと非難する声明を発表した。
その上で同次官は、“新大統領の国防省への指示に基づき、フィリピンは南シナ海における主権海域を1ミリたりとも譲る意向はない”と強調した。
更に、“(フィリピン主権海域として呼称の)西フィリピン海のイロクワ礁及びサビーナ砂州周辺に、中国船団が勝手に侵入して漁をしていることを看過できない”とも言及した。
『フィリピン・デイリィ・インクワイアラー』紙が先週報じたとおり、同次官は、民兵が乗り込んだ漁船が今年初めから同海域で漁を続けていることを確認している、とも付言している。
12月19日付米『EINプレスワイア』は、「ルガルダ臨時議長、フィリピンは領有権を頑なに守るべきと強調」と題するフィリピン元老院名のプレスリリースを掲載している。
ローレン・ルガルダ元老院臨時議長(62歳、2022年就任)は12月14日、南シナ海のフィリピン排他的経済水域(EEZ)への中国船による度重なる侵入を非難した上で、フィリピン主権を頑なに守るべきだと議会で表明した。
同臨時議長は、中国船の無断侵入を断固阻止するのみならず、同海域における生物多様性を擁護する必要があるとも訴えた。
同臨時議長の表明の後、元老院は、今年11月に同海域での警戒に赴いたフィリピン海軍に対して、侵入していた中国船が“脅した”ことについて厳重に抗議するとの決議を採択した。
中国海警艇(CCG)が11月、南シナ海のパグアサ島(編注;1971年からフィリピンが実効支配)近海に突然侵入してきて、同海域に落下してきた中国のスペースデブリ(編注;打ち上げロケットから分離された物体等有益な目的に使用できない、地球軌道を周回する人工物)を強制的に回収していった。
フィリピン側が当該デブリの落下を察知し、現地に赴いて回収作業をしていたところ、CCGが曳航索を故意に切断して力ずくでデブリを奪っていったものである。
なお、本決議は、1982年国連採択の「国連海洋法条約(UNCLOS、注後記)」に基づくのみならず、2016年に常設仲裁裁判所(1899年設立)が、中国の領有権主張は根拠がないとした歴史的な判断をも踏まえたものである。
(注)UNCLOS:海洋法に関する包括的・一般的な秩序の確立を目指して1982年4月の第3次国連海洋法会議にて採択され、同年12月に署名開放、1994年11月に発効した条約。国際海洋法において、最も普遍的・包括的な基本条約であるため、別名「海の憲法」とも呼ばれる。
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トランプ政権;大統領選までは対中強硬路線-ASEANにも中国包囲網参加を呼びかけ【米・フィリピン・インドネシアメディア】
既報どおり、南シナ海をめぐる領有権問題では、米中が一歩も引かず、軍事演習を遣り合って相手方に圧力をかけている。トランプ政権としては、大統領選勝利のためには、引き続き対中強硬路線を突っ走る他なく、かつて中国が強行した同海域の人工島建設に関わった関係企業・高官らを制裁対象として締め付けを強めている。そして今度は、同海域領有権問題の直接の当事国である東南アジア諸国連合(ASEAN)にも、米国による制裁に賛同し加わるよう直接訴えた。
9月10日付米
『AP通信』:「米国、ASEANに対して米国が制裁対象とした中国企業との取引見直しを要請」
マイク・ポンペオ国務長官は9月10日、ASEAN加盟国に対して、中国が南シナ海における領有権問題の当事国を“いじめる”ために強行した、同海域の人工島建設に関わった中国企業を対象とした米国制裁に賛同し、加わるよう要請した。
これは、米国・ASEAN間年次外相会議において発せられたもので、新型コロナウィルス感染流行問題のためテレビ会議形式で行われた。...
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9月10日付米
『AP通信』:「米国、ASEANに対して米国が制裁対象とした中国企業との取引見直しを要請」
マイク・ポンペオ国務長官は9月10日、ASEAN加盟国に対して、中国が南シナ海における領有権問題の当事国を“いじめる”ために強行した、同海域の人工島建設に関わった中国企業を対象とした米国制裁に賛同し、加わるよう要請した。
これは、米国・ASEAN間年次外相会議において発せられたもので、新型コロナウィルス感染流行問題のためテレビ会議形式で行われた。
同長官は、中国はASEAN組織内で尊重されてきた民主主義の価値や、主権や領土に関わる相互信頼を全く無視する行動を取っていると非難した。
そして同長官は、中国による一方的な人工島建設強行について問題視して、米政府は、その建設工事に関わった中国企業数十社を制裁対象とすることを決めた、と付言した。
更に同長官は、“ASEAN各国に対しても、かかる横暴を許さないため、制裁対象とした中国国営企業との取引を再考して欲しい”とし、“中国共産党にこれ以上勝手な真似をさせてはならないし、米国は常にASEANメンバーの傍にいて支援していく”と強調した。
これに対して、今年のASEAN議長国ベトナムのファム・ビン・ミン外相は、“ASEAN・米国間の良好な関係によって相互利益が高まる”と、ポンペオ長官の発言を歓迎した。
同外相は、“米国が、南シナ海の平和、安定、安全保障の維持に貢献してくれることはとても心強い”とも付言した。
一方、マレーシアのヒシャムディン・フセイン外相は、“ASEANがこの問題をどう対応していくかによって、悲惨な結果にもなるし、また、新たに平和と安定を確保できる場合もある”とし、“あくまでもASEANが中心になって、全ての事態に対応していくことが肝要”だと、米・中どちらにも偏らない慎重な態度を求める発言をしている。
同日付フィリピン『フィリピン・タイムズ』紙、インドネシア『インドネシアニュース・ネット』(『ラジオ・フリー・アジア』配信):「米国、ASEANに対して制裁対象の中国企業との取引見直しを要求」
ポンペオ長官は9月10日、米国・ASEAN外相オンライン会議の席上、米国が人工島建設に関わった24社の中国企業を制裁対象にしていることから、ASEAN各国もこれに同調して、これらの企業との取引を再考するよう求めた。
同長官は、これらの企業は、中国が強行した南シナ海内岩礁上の人工島建設に加担し、中国による同海域への一方的進出を後押しすることになったとして非難した。
米政府は8月26日、これら24社の中国国営企業及び個人を、制裁対象とすることを決定している。
しかし、かかる動きに対して、親中派の政権であるフィリピン政府は、これら中国企業との関係は断てないと表明した。
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領付きのハリー・ローク報道官は、これら企業と進めている大インフラ建設プロジェクトはフィリピンの“国益”に叶うものなので、継続すると宣言した。
同報道官は、“フィリピンは独立した国であり、また、中国投資を必要としていることから、米国の言いなりにはなれない、というのがドゥテルテ大統領の明確な見解”だと付言している。
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