ゴーダ、カマンベール、モッツァレラなど、高品質なチーズの産地として有名なヨーロッパは、パンデミックやロシアのウクライナ侵攻による世界経済の混乱で乳製品の価格高騰に直面している。その結果、米国産の安価なプロセスチーズの購入が増加している。
米
『エポックタイムズ』によると、2月の欧州の米国からのチーズ輸入量は306トンと、例年の数倍であった。この傾向は特にオランダで顕著で、40万ドル(約5千万円)分以上のチーズと凝乳を米国から購入した。この市場力学の変化の直接的なきっかけは、ここ数カ月で特に深刻化している欧州での乳製品のコスト上昇である。ロシアのウクライナ侵攻により、ヨーロッパでは乳牛の飼料となるトウモロコシが不足し、制裁とサプライチェーンの混乱により、ヨーロッパの2つの穀倉地帯からの穀物の流れが止まってしまった。このため、同地域の乳製品生産コストが上昇している。
一方、世界最大のトウモロコシ生産国である米国は、飼料をほぼ自給しているため、自国の乳製品産業に同様の被害は及んでいない。さらに、安価なプロセスチーズは、製造に必要な乳製品が少ないため、チーズに不自由しているヨーロッパに低コストで容易に輸出することができるのである。
プロセスチーズは比較的新しい発明で、1910年代に溶かしたチーズに乳化剤を加え、冷却して固形化したのが始まりである。安価で保存期間が長く、熱に触れても分離しにくいという利点があり、好まれた。しかし、このような製品は、伝統的な産地特有の味を好むヨーロッパの人々の美的感覚から、これまで敬遠されがちであった。
カナダ『ファイナンシャル・ポスト』によると、乳製品市場に関するニュースを配信している「Dairy Market Analyst」の編集者であるマット・グールド氏は、「米国での輸出販売が好調であるとの報告が続いています。オセアニアやヨーロッパでの生乳供給が逼迫しているため、海外の顧客が米国のチーズやバターメーカーに初めて連絡を取ったという話をまだ聞きます。」と述べている。
しかし、金融サービス機関「StoneX Group」の乳製品市場分析担当ディレクター、ネイト・ドネー氏は、特に主要な買い手として台頭してきたオランダの大きな商社は、世界中に再輸出するために輸入しているかもしれないと述べており、ヨーロッパのバイヤーがチーズを食べている保証はないと指摘している。
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