アメリカ、中小企業が深刻な人材不足に直面(2021/04/26)
新型コロナウイルスの影響で何百万人もの人が失業したアメリカ。ワクチン接種がすすみ、通常の生活に戻ろうとする人が増えている一方で、中小企業が雇用に苦戦している。思うように採用できない事態に直面している企業は、製品やサービスの需要に追いつくことができなくなっている。
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『AP通信』 によると、アメリカでは今、中小企業の求人が増えているにもかかわらず、人材確保に困っているという。人々の新型コロナウイルスへの感染の不安や、パンデミックの影響で増額された失業手当への依存、または休校で自宅での育児が必要になるなど、さまざまな要因が重なり、仕事を探す人が減っていることが原因だと見られている。
サウスカロライナ州でレストランを営むスティーブ・クラットとブランドン・ラップは、レストランと屋台ビジネスを営んでいる。...
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『AP通信』 によると、アメリカでは今、中小企業の求人が増えているにもかかわらず、人材確保に困っているという。人々の新型コロナウイルスへの感染の不安や、パンデミックの影響で増額された失業手当への依存、または休校で自宅での育児が必要になるなど、さまざまな要因が重なり、仕事を探す人が減っていることが原因だと見られている。
サウスカロライナ州でレストランを営むスティーブ・クラットとブランドン・ラップは、レストランと屋台ビジネスを営んでいる。ビジネスをうまくまわすためには20人のスタッフを必要としているが、現在5人しか採用できていないという。面接を行っても、応募者15人のうち1人でも面接を受けに来てもらえたらラッキーだという。クラットさんは、面接を受けに来てくれる人はみな、失業手当がもうなくなるという人ばかりだと述べている。
サウスカロライナ州の失業手当は、連邦政府のコロナウイルス救済金300ドル(約3万2千円)を含めると週に最大626ドル(約6万7千円)になる。他の州では、最大失業額が週700ドル(約7万5千円)を超えるところもある。
また、3月下旬に行われた国勢調査によると、630万人が子供の世話をしなければならないという理由で、410万人はウイルスに感染したり、ウイルスを広めたりする恐れがあるという理由で仕事を探していないと回答している。
全米独立企業連盟(National Federation of Independent Business)が3月に会員企業へのアンケートを行ったところ、42%の企業が採用の困難な求人を抱えていることが判明した。その要因のひとつとして、失業手当の増加が挙げられている。全米経済研究所が先月発表した調査によると、パンデミックの際に失業手当を10%増額したところ、求職者数が3.6%減少したという。調査を共同執筆したペンシルバニア大学のマリネスク教授は、「失業手当は、労働者が再び仕事を求めるまでの期間を延ばすことを可能にするため、雇用を困難にさせる可能性がある」と述べている。
コンサルティング会社RSMのチーフエコノミストであるジョー・ブルスエラス氏は、育児も採用の壁の1つとしてあげている。「学校が再開し、保育園などが正常に戻るまでは、一般的な中小企業、特に食品、飲料、レジャー、サービス業は、早くても今年の秋の終わりまでは人材確保の問題に直面するだろう」と述べている。
また、人々が家で過ごす時間が増え、家やアパートの消耗が激しくなっているため、住宅関連のサービスに対する需要が高まっている一方で、配管工、建設請負業者、害虫駆除業者など、室内の仕事を請け負う企業では、仕事中にコロナに感染することへの恐れから雇用が困難となっているという。
米ニュースサイト『ビジネスインサイダー』 によると、フロリダ州タンパで60のマクドナルド店舗を経営しているブレイク・キャスパー氏は、応募者が面接に現れるだけで50ドル(約5千円)を支払うようにしているという。それでも応募者を見つけるのに苦労している。キャスパー氏によると、全米で雇用が再開したことに加え、連邦失業手当が充実したことで、応募者の数が減ったという。これほど労働者の雇用が難しくなったのは、90年代後半以来だという。
人手不足のため、キャスパー氏のようなフランチャイズ加盟者は、賃金の引き上げを余儀なくされている。キャスパー氏は、より多くの従業員を獲得するために、初任給をフロリダ州の最低賃金を3ドル(約300円)上回る12ドル(約1300円)から13ドル(約1400円)に引き上げることを検討しているという。キャスパー氏は、「最大の課題は、連邦政府と州政府がこの失業状態を続けていくことだ。失業者であることのほうが儲かるのだから、(採用するためには)少なくともその上をいかなければならない」と語った。
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輸送用コンテナ船不足で、トイレットペーパーが世界的に品薄になる可能性(2021/03/28)
世界最大の紙パルプメーカーであるブラジルのスザノは、今後トイレットペーパーが不足する可能性があると警告している。経済の回復に伴い、世界各地への輸送に欠かせないコンテナや貨物船が不足していることが原因だ。
フランスメディアの
『BFMTV』 は、今後トイレットペーパーが品薄になる可能性が再度懸念されていると報じている。原因は、コロナ禍による人々のパニック買いでなく、コンテナ船不足で、トイレットペーパーの製造に欠かせない原材料のパルプの輸送が滞ってしまっているためだという。
中国の経済活動と生産が予想を上回る速さで回復したことで、欧米の中国製品に対する需要が大きく伸びた。しかし、中国は、これらの貨物を世界に運ぶための十分なコンテナ持っていない。...
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フランスメディアの
『BFMTV』 は、今後トイレットペーパーが品薄になる可能性が再度懸念されていると報じている。原因は、コロナ禍による人々のパニック買いでなく、コンテナ船不足で、トイレットペーパーの製造に欠かせない原材料のパルプの輸送が滞ってしまっているためだという。
中国の経済活動と生産が予想を上回る速さで回復したことで、欧米の中国製品に対する需要が大きく伸びた。しかし、中国は、これらの貨物を世界に運ぶための十分なコンテナ持っていない。また、新型コロナウイルスの流行を抑えるための規制により、多くのコンテナ船が港を離れることが出来ない状況も相まって、輸送の遅れが起こっている。
フランスメディア『RTL』 は、こうした海運の問題により、十分な在庫がないメーカーは生産を制限せざるを得ない状況に陥り、トイレットペーパーの供給が世界的に滞る可能性が懸念されていると報じている。パルプ生産最大手のスザノのシャルカ社長は、「大量に輸出している南米の全ての企業が、このリスクに直面している」と指摘し、コンテナ船不足と「スエズ運河の座礁事故とが相まって、トイレットペーパーの供給量の減少を引き起こす可能性がある」と述べている。
米『ビジネスインサイダー』 は、スエズ運河の事故により、トイレットペーパーだけではなく、コーヒーや家具などの輸入品も不足する可能性があると報じている。コンテナ船専門家のラース・ジェンセンさんは、「基本的に店頭で目にするものすべてが影響を受ける」と述べている。
例えば、パンデミックの影響で在宅勤務が広まったことで、家具業界が潤っている。しかし、家具の納品日に数ヶ月の遅れを伝えている家具メーカーが既に出始めているという。手づくりの家具は、多くのパーツを使用するため、一つでも欠けると生産そのものが止まってしまうためだ。
海運問題の解決の兆しがまだ見えない中、様々な品物の不足の可能性だけでなく、輸送運賃の上昇も懸念材料となっている。露メディア『ロシアトゥデイ』 によると、経済コンサルティングの「キャピタル・エコノミックス」シニアグローバルアナリストのマクアダム氏は、コンテナ輸送コストは、2020年1月から2021年3月までの間にすでに250%も高騰しており、今後もさらに上昇することが予想されていると述べている。
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