世界の指導者が”国際ホロコースト・フォーラム”で反ユダヤ主義根絶をアピール【米・イスラエルメディア】(2020/01/25)
忌まわしいホロコースト(注1後記)の代名詞であるアウシュビッツ強制収容所解放75周年を記念して、エルサレム(イスラエル)で第5回「国際ホロコースト・フォーラム(WHF、注2後記)」が開催された。世界50ヵ国の指導者が一堂に会し、ナチス・ドイツが行った反ユダヤ主義に基づくユダヤ人大虐殺を非難するだけでなく、現在も取り沙汰される反ユダヤ主義の復活の懸念に対して、一致団結して対抗していくことをアピールした。
1月24日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「世界の指導者がエルサレムに集まり、ホロコーストを忘れず反ユダヤ主義反対をアピール」
世界50ヵ国の指導者が1月23日、アウシュビッツ強制収容所解放75周年を記念してエルサレムで開かれたWHFに出席し、過去のみならず現在もはびこり始めた反ユダヤ主義に徹底して対抗していくとアピールした。
米国からは、マイク・ペンス副大統領に加えて、ナンシー・ペロシ下院議長も出席した。...
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1月24日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「世界の指導者がエルサレムに集まり、ホロコーストを忘れず反ユダヤ主義反対をアピール」
世界50ヵ国の指導者が1月23日、アウシュビッツ強制収容所解放75周年を記念してエルサレムで開かれたWHFに出席し、過去のみならず現在もはびこり始めた反ユダヤ主義に徹底して対抗していくとアピールした。
米国からは、マイク・ペンス副大統領に加えて、ナンシー・ペロシ下院議長も出席した。
演説に立った同副大統領は、過去だけでなく現在も表れ始めた忌むべき反ユダヤ主義に立ち向かう必要があるとした上で、“例えばイランは、ホロコーストそのものを否定し、イスラエルを世界地図から消し去る”と標榜していると非難した。
ドナルド・トランプ大統領は出席していないが、例えば2017年白人至上主義デモ問題発生の際、反ユダヤ主義をはっきり批評しなかったと一部の支持者から非難されているものの、“ホロコーストのような悲惨な事態は決して再び起こしてはならない”とのメッセージを寄せている。
一方、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、“Never Againという言葉を絵空事にしてはならない”と強調した。
また、ロシア人慈善活動家でWHF財団のモッシェ・カントール理事長は記者会見で、“約80年前の世界の指導者による会議の失敗”を肝に銘じて、反ユダヤ主義に代表される排他的活動を牽制しなければならないと語った。
1938年にエビアン(フランス)で開催された、ユダヤ人難民の処遇について協議する国際会議では、何も合意されなかったことから、当時のナチス・ドイツに反ユダヤ主義に基づくユダヤ人大虐殺を許す結果となってしまっていた。
なお、今回のWHFには、英国のチャールズ皇太子、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、ドイツのフランク・ウォルター=シュタインマイヤー大統領、イスラエルのルーベン・リブリン大統領がそれぞれ出席し、演説している。
また、世界の要人擁護のため、1万1千人以上のイスラエル警護官が配備され、更に、約500人のジャーナリストがWHF会場に参集した。
同日付イスラエル『ハアレツ(直訳は“その土地”で故国イスラエルを指す)』紙:「世界の指導者がWHFで新たな反ユダヤ主義根絶をアピール」
WHFで演説したネタニヤフ首相とリブリン大統領は、関係国が、新たに反ユダヤ主義を掲げるイランに対して明確な反対を表明していないことを“懸念している”と表明した。
その上で、反ユダヤ主義に対抗していくためにイスラエルを支援してほしいと訴えた。
なお、WHFには、米国、英国、ドイツ、フランス、ロシア、ブルガリア、ルーマニア、フィンランド、ジョージア、キプロス、ボスニア・ヘルツェゴビナ等、約50ヵ国の指導者が出席したが、ほとんどが今週ダボス(スイス)で開かれた世界経済フォーラムから流れてきている。
(注1)ホロコースト:ギリシャ語で「全てを焼きつくす」という意味。現在ではナチス・ドイツ(1933-1945)によってなされた、約600万人にも及ぶユダヤ人大虐殺を指す。なお、ホロコーストの犠牲者には、ユダヤ人だけでなく、共産主義者らの政治犯、シンティ・ロマ人、エホバの証人、同性愛者なども含まれる。
(注2)WHF:再び起こらないよう、ホロコーストの忌まわしい記憶等を留めておくための国際フォーラムで、第1回は、アウシュビッツ解放60周年を記念して2005年にクラクフ(ポーランド)で開催。以降、第2回が2006年にキエフ(ウクライナ)、第3回が2010年にクラクフ、第4回が2015年にプラハ(チェコ)で開催された。
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トランプ米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相、「2国家共存」にこだわらず(2017/02/16)
2月15日の
『USA TODAY』(東部時間11:15版)は同日ホワイトハウスで行われたトランプ米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相の首脳会談を紹介している。この中でトランプ大統領はこれまで両国間で摩擦の元となっていたパレスチナとの2国家共存にこだわらないと明言した。両国間にはイスラエルの米国大使館の所在地の移転、イラン核合意、ヨルダン川西岸へのイスラエルの入植といった問題が存在している。両首脳は中東でのテロ対策についても協議した。イスラエルとの交渉をリードしてきたフリン国家安全保障担当顧問は駐米ロシア大使との電話会談の問題で2月13日辞任している。ネタニヤフ以首相はトランプ米大統領を訪問した4人目の首脳となる。
ワシントン : トランプ米大統領はホワイトハウスで15日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と首脳会談を行い、一連の問題について両首脳の間に相違点は無いと述べた。これには、中東における米国の政策の特徴であり、ネタニヤフ政権とバラク・オバマ前米大統領との間の摩擦の元となっていたいわゆる「2国家共存」が含まれる。トランプ米大統領は2国家共存政策に懐疑的であると明言し、2国家または1国家を考えているが、私はしばらくの間、2国家共存は両国にとってより容易なように見えていたと語った。...
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ワシントン : トランプ米大統領はホワイトハウスで15日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と首脳会談を行い、一連の問題について両首脳の間に相違点は無いと述べた。これには、中東における米国の政策の特徴であり、ネタニヤフ政権とバラク・オバマ前米大統領との間の摩擦の元となっていたいわゆる「2国家共存」が含まれる。トランプ米大統領は2国家共存政策に懐疑的であると明言し、2国家または1国家を考えているが、私はしばらくの間、2国家共存は両国にとってより容易なように見えていたと語った。トランプ米大統領は、この問題はイスラエルとパレスチナの間で解決されるべきであるとし、両国が最も良いと考えたもので良いと語った。
2国家共存は、イスラエルの隣にパレスチナ国家を置くという交渉による解決が必要で、ブッシュ政権とオバマ政権下の米国の政策だった。しかし、トランプ米大統領がこれにこだわらないとしたことで、ネタニヤフ以首相は、2国家共存は以下の2つの条件のもと成立するとの立場を再確認した。1つは新たなパレスチナ国家はイスラエルの正統性を認識しなければならない、2つ目は、イスラエルはヨルダン川西岸地区の安全保障を確保しなければならない。そして「2国家共存」という原則が進捗の妨げになっていたとし、原則ではなく実体に取り組みたいとネタニヤフ以首相は語った。
両首脳が連帯を公に示したとしてもトランプ政権は、下記のいくつかの点で前任者の政策から遅れている。
●米国大使館の所在地: 1995年の法律では、イスラエルの米国大使館をテルアビブからエルサレムへ移すことを米大統領に求めているが、以後どの米大統領も国家安全保障上の適用除外を発動して移転を阻止している。トランプ米大統領はその政策を終わらせたいとしていたが、大統領就任後最初の週は慎重に対応した。 「私たちは非常にゆっくりとそれを見ています。私たちは非常に注意してそれを見ています」、 「大事に。私を信じてください。何が起こるかを見ています」とトランプ米大統領は語った。
●イラン核合意:大統領選挙期間中トランプ米大統領は、イランとオバマ政権、主要5ケ国間との核問題の縮小に関する合意を「撤回する」と主張してきた。しかし、トランプ政権がイランのミサイル実験について新たな制裁を発動しても、トランプ米大統領はオバマ政権時代に合意されたいわゆる「包括的共同行動計画」を破る動きはなかった。2月15日にトランプ米大統領はこの計画を「私が今まで見た中で最悪の合意の一つ」と呼んだ。「イランがこれまで以上に核兵器の開発を行うことを阻止するためにもっと努力する」とトランプ米大統領は述べた。
●イスラエルの入植地:今月に入ってからの予想外の対応の変化の中でトランプ政権はヨルダン川西岸のイスラエルの入植地について、イスラエルとパレスチナの紛争を解決するうえで「役に立たないかもしれない」と声明を出した。ネタニヤフ以首相はこの問題を重要と考えなかったが、トランプ米大統領と協力することを約束し、「私たちはいつもお互いにうまくやっている」と語った。
両首脳はまた、中東での対テロ対策についても協議した。トランプ米大統領は、極力 古くからの対立と同盟の役割を考え直しており、シリアとイラクのテロリスト団体を打ちのめすことが外交政策の最も重要な目標 であるとした。「最も親密な同盟国として、イスラエルとの間で反テロ戦略を調整するつもりだ」、「両国の特別な関係と中東の安定を進め強化する方法について協議する」と、ホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官は2月14日に述べた。
中東和平協定の問題は数代の米国大統領の間、避けられてきた。外交経験はないが不動産帝国を築いたトランプ米大統領は、「最終的な取引」を仲介できると考えていると述べた。この問題が外交政策の優先事項となるまでほとんど待っていた前任者のオバマ大統領よりも早いスタートを切ろうとしていると、2月15日にトランプ米大統領は語った。
「トランプ米大統領が明らかにしたように、トランプ政権はイスラエルとパレスチナの紛争を終結させ、イスラエル人とパレスチナ人が平和で安全に暮らすことができるよう、包括的合意を達成するために努力する」とスパイサー報道官は語った。
他の大統領はこの問題に挑戦したが障害にぶつかった。その中には特にパレスチナ人と争っている土地でのイスラエルの入植を進めたネタニヤフ以首相を障害と見なしたオバマ政権も含まれる。この問題でオバマ大統領はユダヤ人の指導者に、パレスチナ人との平和的交渉をうまく進めようとすれば、米国とイスラエルの間に「理解」が必要だと伝えた。
ネタニヤフ以首相のホワイトハウス訪問は、混乱の最中に行われた。駐米ロシア大使との電話会談の件で、トランプ米大統領らをミスリードしたマイケル・フリン国家安全保障担当顧問は2月13日辞任した。フリンはネタニヤフ政権にとってトランプ政権との交渉における最初の重要人物だった。イスラエルの新聞ハアレツは、フリンがイスラエルの交渉相手であると今月報じた。そしてモサド(イスラエルの情報部)のトップがワシントンを極秘に訪問した際、フリンと会談したと伝えている。しかし、フリンの辞任は、トランプ米大統領とその側近とロシア人の関係についての問題を再燃させ、FBIと議会委員会による調査の対象となった。
トランプ米大統領とネタニヤフ以首相は、首脳会談と昼食の前に記者会見を開く予定だ。ネタニヤフ以首相の訪問はテリーザ・メイ英国首相、日本の安倍晋三首相、カナダのジャスティン・トルドー首相に続きホワイトハウスを訪問する4人目の首脳となる。トランプ米大統領は、パレスチナ自治政府とは会談していない。
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