ウラジーミル・プーチン大統領は今年7月、ドナルド・トランプ大統領とヘルシンキ(フィンランド)で会談した際、サイバー犯罪の対応策について米ロ共同で当っていくことを提案した。個人的友好関係を築きたいトランプ大統領は、この考えに興味を示した模様だが、専門家は、これまでのロシアの矛盾した行動より、“自宅の財産を守るのに盗人を起用”するのと同様の愚行であると手厳しい。
9月4日付
『ワシントン・ポスト』紙オピニオン欄:「サイバー犯罪取り締り対策についてロシアと共同で当たるのは、自宅の財産を守るのに盗人を雇うようなもの」
モスクワ国際関係大学(1944年設立の公立大学)の筆頭コンピューター科学者アナトリィ・スミルノフ氏は先月、ロシアの『ニェザビーシマヤ・ガゼータ』紙のインタビューに答えて、ロシアが国連にはたらきかけて、サイバー犯罪に対応する“行動規範(COC)”を策定しようとしていることを明かした。
更に同氏は、2001年にブダペスト(ルーマニア)で締結された「サイバー犯罪条約」(注後記)に代えて、もう少し緩いロシア流COCの採用に向けて関係各国に提案してきているとも言及した。
欧州の中で唯一ロシアだけが、同サイバー犯罪条約を締結していない。その理由は、同条約が、サイバー犯罪捜査のため他国の警察官が、疑いのある国のインターネット接続業者を直接取り調べることを認めているためとみられる。
国連の政府専門家会合(GGE)がこれまで、サイバー犯罪に関わる規制事項-サイバー紛争、サイバー空間に関わる国際法-の適用について検討し、特に“重要なインフラ”をサイバー攻撃から守る方策について検討・発表してきた。
ただ、ここで問題なのは、米国土安全保障省の調査によると、ロシア側は、GGEがインフラへのサイバー攻撃防御策について規制した2015年レポートを支持すると表明したにも拘らず、今年になって米国や欧州の原子力発電所や水供給・送電システムへサイバー攻撃を仕掛けたことである。
ウラジーミル・プーチン大統領は今年7月、ドナルド・トランプ大統領とヘルシンキで首脳会談を持った際、サイバー犯罪対応策を協議するため米ロ“共同検討チーム”の立ち上げを提案したとされる。
しかし、ロシア側のこれまでの陰の動きを見る限り、サイバー犯罪対応策をロシア側と共同して検討するなど、自宅の財産を守るために盗人を雇うようなものだと言わざるを得ない。
(注)サイバー犯罪条約:欧州評議会(加盟47ヵ国)が2001年に発案した、個人情報保護とオンラインでの児童ポルノや著作権侵害を含むサイバー犯罪に関する対応を取り決める国際条約。 日本・米・欧州などの主要国48ヵ国が署名・採択。2004年7月に、批准国数の条件を満たして効力が発生。2018年4月現在の条約の締約国は57ヵ国。
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